WEBIKE SRC KAWASAKI FRANCE TRICKSTARが2位に
フランスのル・マンで2021年6月12日から13日にかけて開催された「2021 FIM世界耐久選手権(EWC)」の第1戦「ル・マン24時間耐久レース」において、昨シーズンのチャンピオンチームにヨシムラが合流した最強チーム「ヨシムラSERT Motul」が、2位に8周差をつける855周で完勝した。
TSRが2度目のルマン24時間優勝! ホンダCBR1000RR-Rに初栄冠|Webike×トリックスターが2位
最終戦鈴鹿8耐(11月7日)を目指し、「2021 FIM世界耐久選手権」開幕戦で躍動
バイクの耐久ロードレースの最高峰であり、国際モーターサイクリズム連盟(以下FIM)が主催する「2021 FIM世界耐久選手権(EWC)」は、年間に4~5戦のスケジュールで開催され、市販車をベースに耐久レースしように改造されたマシンで戦うシリーズ戦。2016年後半からは「2016-2017」のように秋から翌年の夏までというシーズンが組まれており、2017-2018および2018-2019は日本の鈴鹿サーキットで開催されるビッグイベント「鈴鹿8時間耐久ロードレース(通称:8耐)」が最終戦になっていた。
2017-2018シーズンには、「F.C.C.TSR Honda France」が日本国籍のチームとして初の世界チャンピオンに輝いている(翌シーズンは最終ランキング2位)。マシンはブリヂストンタイヤを装着するホンダCBR1000RRだった。
―― 2017-2018シーズン最終戦でチャンピオンを決めた時のF.C.C. TSR Honda France。この時のマシンはCBR1000RRで、昨シーズン途中からはCBR1000RR-Rに。
2019-2020シーズンはコロナ禍の影響から、開幕戦ボルドール24時間(フランス)、第2戦セパン8時間(マレーシア)、ル・マン24時間(フランス)、エストリル12時間(ポルトガル)のみが開催され、オッシャースレーベン8時間(ドイツ)および鈴鹿8時間(日本)はキャンセルされた。その中でチャンピオンを獲得したのは、フランスを母国とする名門チーム・SERT(Suzuki Endurance Racing Team)だった。
―― 2019-2020年の最終戦エストリル12時間で4位に入り、4年ぶり、16回目の年間チャンピオンを獲得したSERT。マシンはGSX-R1000Rだ。
チャンピオンチームのSERT(サートと読む)が2021年シーズンを戦うにあたって手を組んだのが、日本の名門ヨシムラである。
日本とフランスからなる合同の新チームは、スズキのファクトリーチームででもある。タイヤは昨年までのSERTが履いたダンロップから心機一転でブリヂストンにスイッチ。チームマネージャーは2019-2020シーズンから指揮を執るダミアン・ソルニエ、そしてチームディレクターにはヨシムラの実力者・加藤陽平が就任した。
ヨシムラにとって欧州開催の世界耐久選手権に直接参戦するのは、1978年の第1回鈴鹿8耐優勝後に行われたボルドール24時間依頼となり、シリーズフル参戦は初のチャレンジとなる。そしてチームの本拠地は、2021シーズン開幕戦の地であるル・マンになった。
今シーズンは、昨年来のコロナ禍の影響でレーススケジュールが大幅に変更されたことから、以前のように単年でのシーズン開催とされ、開幕戦ル・マン24時間も本来の開催予定日だった4月17-18日から6月12-13日に変更。5月23日に予定されていた第2戦オシャースレーベン8時間は中止が発表され、7月18日に開催予定だった鈴鹿8耐は11月7日に延期というスケジュールに。結果的に鈴鹿8耐が最終戦という扱いになり、2021シーズンは全4戦で行われことになる。
―― ヨシムラ・スズキカラーのマシンがル・マン24時間を疾走する。
Yoshimura SERT Motulがブガッティ・サーキットで見せたパーフェクトゲーム
2021年のEWCの開幕戦となった第44回ル・マン24時間レースは、スタート直後の3チームを巻き込んだクラッシュからドラマが始まり、その後はYoshimura SERT MotulとTati Team Beringer Racingのトップ争いを経て、Yoshimura SERT MotulとYART–Yamaha Official EWC Teamとの間で、夜明け前まで壮絶なバトルが繰り広げられた。そしてこの対決は、ヤマハYZF-R1のバルブ破損で幕を閉じる。
夜間走行終了後にYoshimura SERT Motulは7周のリードを保ち、首位を独走。レース開始16時間経過時点でのトップに与えられる10ポイントのおかげで、スズキファクトリーチームはすでにランキングで大きく他をリードする状態に。
―― バトルを繰り広げたYoshimura SERT MotulとYART(ともにブリヂストンタイヤ勢)だったが、ヤマハのマシントラブルで決着。
太陽が昇り始める頃には、2位獲得は間違いないと思われていたF.C.C. TSR Honda Franceが、電気系統のマイナートラブルで30分のピット作業を余儀なくされ6位へと順位を落としてしまう。さらにジョシュ・フック選手のクラッシュがあり、10位まで後退。さらにトラブルが続き、最大で13位まで落ちてしまった。
―― YARTのリタイアにより2位に上がっていたF.C.C. TSR Honda Franceも、トラブルやクラッシュで後退。
これに乗じて、夜間走行の早い段階から3位にポジションアップしてきたWebike SRC Kawasaki France Trickstarと、序盤のクラッシュから上位に戻ってきたBMW Motorrad World Endurance Teamが順位を上げる。
そして24時間が経過し、全855周のうち819周をトップで走行したYoshimura SERT Motulが優勝。レース序盤でブレーキトラブルを抱え、復活してきたWebike SRC Kawasaki France Trickstarに8周差をつけてゴールした。
―― 粘り強く順位を上げていったWebike SRC Kawasaki France Trickstarは2位でゴール。
BMW Motorrad World Endurance Teamはトップから13周差の3位でフィニッシュ。F.C.C.TSR Honda Franceは10位でチェッカーフラッグを受け、のちに4位ゴールのチームが燃料タンク容量違反で失格になったことにより9位へのリザルトが変更された。
―― 巨大なウイングが異彩を放つBMW・M1000RRを走らせるBMW Motorrad World Endurance Teamは、序盤のクラッシュもあったが3位でゴール。24時間の長丁場になると少々のミスなら取り返せるという点は、鈴鹿8耐との大きな違いかもしれない。
総合5位~7位は改造範囲の狭いスーパーストッククラス勢が占めたこともあり、FIM EWCのチームランキング上位は下記にようになった。
1位(64pts.) YOSHIMURA SERT MOTUL(GSX-R1000R/BS)
2位(48pts.) WEBIKE SRC KAWASAKI FRANCE TRICKSTAR(Ninja ZX-10R/DL)
3位(44pts.) BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(M1000RR/DL)
4位(36pts.) F.C.C. TSR Honda France(CBR1000RR-R/BS)
5位(32pts.) VRD IGOL EXPÉRIENCES(YZF-R1/DL)
ゴール順位とランキング順位が異なるのは、特定の経過時間に走っていた順位により付与されるポイントの違いによるものだ。また、メーカーランキングは下記のようになった。
1位(41pts.) Yamaha
2位(40pts.) Suzuki
3位(33pts.) Kawasaki
4位(28pts.) BMW
5位(21pts.) Ducati
6位(19pts.) Honda
最初から最後までミスなく走り切ったYoshimura SERT Motulは、ポイントリーダーとして2021年7月17日に開催される第2戦エストリル12時間(ポルトガル)に臨む。
―― 優勝したディフェンディングチャンピオンのYoshimura SERT Motul。
―― トロフィーを掲げるのは加藤陽平チームディレクターだ。
―― 2位でゴールしたWebike SRC Kawasaki France Trickstarは、2018-2019シーズンのチャンピオン。マシンが新型ZX-10Rじゃないのは、信頼性を大切にするEWCでは新型マシンへの切り替えに時間をかけるケースが多いためだ。
―― クラッシュから挽回、3位に入ったBMW Motorrad World Endurance Team。
―― 残る3戦で2017-2018シーズン以来のタイトル奪還を目指すF.C.C. TSR Honda France。10位ゴールも他チームの失格で9位に繰り上げ。
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