元F1ドライバーの佐藤琢磨は5月のインディ500に、ホンダエンジンを搭載したレイホール・レターマン・レーシングのマシンでスポット参戦を果たし、51周をリード。ピットレーンでの僅かなブレーキングミスで、3勝目を逃した。
今年のインディでの走りがいかに印象的だったとしても、48歳になった佐藤のレーサーキャリアが黄昏に差し掛かっているという事実に変わりはない。
■太田格之進がインディ500で目撃した佐藤琢磨の“偉大なる背中”。後継者として期待の声も「SFでチャンピオンを獲らないと何も生まれない」
2002年以降、エンジンサプライヤーであるホンダの努力もあり、インディ500のグリッドには常に少なくとも日本人ドライバーがひとりいた。しかし2010年からインディカーに参戦する佐藤からバトンを受け継ぐ明確な候補者は、何年もいなかった。
それがここ半年ほどの間に、スーパーフォーミュラに参戦する太田格之進が、いつの日かインディカーで日の丸を掲げ続けることができる存在として頭角を現してきた。
太田はDOCOMO TEAM DANDELION RACINGからスーパーフォーミュラに参戦し、ここ1年半で5勝をマーク。2025年シーズンのタイトル候補のひとりだ。
こうした活躍とスーパーGTでの好調を背景に、太田は今年、ホンダのサポートを受けてIMSAスポーツカー選手権のデイトナ24時間レースを皮切りに、メイヤー・シャンク・レーシングのアキュラARX-06 LMDhを駆り3戦を戦うこととなった。
しかしホンダが太田のアメリカ進出をサポートすると決めたのは、コース上での成績だけではない。
ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長がmotorsport.comの独占インタビューで語ったように、太田が普遍的なスーパーフォーミュラドライバーだとは言い難く、日本国外へ羽ばたいていきたいと強く望んでいること、近年は香港のクラフト・バンブー・レーシングのメルセデスGT3をドライブし、磨きをかけてきた英語力も重要な要素だった。
「特に若く、海外でのレースを強く望んでいるドライバーには、そのためのサポートをしたいと思っています」と渡辺は語った。
「太田選手は、実力と伸びしろの大きさを特に示してくれており、我々は彼に大きな期待を寄せています。英語も堪能で、技術面でもプライベートな会話でも、チームとのコミュニケーションが非常に上手です」
「彼は以前から海外でレースをしたいという強い意思を示しており、我々はそれをサポートしたいと思っていました。太田選手を選んだ大きな理由はそこにあります」
これまでのところ太田のIMSAでの戦いは、目立つようなモノではない。初参戦のデイトナではサスペンショントラブルによって周回遅れとなり、セブリングではLMP2マシンでさらにマイレージを稼ぐ予定だったものの、エラ・モータースポーツのチームメイトが序盤にアクシデントに見舞われ、太田はドライブすることすらできなかった。
しかし太田は今後、アキュラからIMSAのGTPクラスに2戦出場予定。今週末のワトキンス・グレン戦ではポールポジションからスタートを迎える。またアメリカでのレースに慣れるためエラ・モータースポーツからロード・アメリカ戦のLMP2クラスに再び参戦する予定だ。その傍らでスーパーフォーミュラのタイトルをかけて、日本との間を行き来する。
「かなり厳しい環境の中で、太田選手は素晴らしい仕事をしてきました」と渡辺社長は言う。
「デイトナでは、彼のドライビングとチームとのコミュニケーションを自分の目で見ることができました。そして彼は私が望んだ通りに、チームとコミュニケーションを取っていました」
「残念ながら、マシンに問題があって結果を残すことができませんでしたが、次のワトキンス・グレンで彼がどのような走りを見せるのかが楽しみです。彼には大いに期待しています」
太田は以前、メイヤー・シャンク・レーシングとの新たな関係性を利用して、インディカー・マシンのテストを望んでいることを明らかにしていた。実際、“カク”の愛称で呼ばれる25歳は、ワトキンス・グレンでのテスト後すぐにインディ500を訪れ、渡辺社長と共に現地の興奮を味わった。
しかし渡辺社長は、太田がインディカーでの将来について真剣に話し合う前に、まずIMSAで自身の価値を証明する必要があると強調した。
「トップアスリートが持つべき、様々な目標や野心があることは知っています」と渡辺社長は言う。
「私が彼に言ったのは、目の前のことに集中して、IMSAで良い結果を出して良いパフォーマンスを見せて、我々が次のステップを考えることができるのはそれからだ、ということです」
「今年のIMSAのレースでは、残されたチャンスは多くありませんが、表彰台など良い結果を出してほしいです。我々はそれを期待しています」
「彼の今後の可能性については、彼自身がどのような願望を持っているのか聞いてみたいですし、その上でHRCの状況がどうなっているのかも考える必要があります」
IMSAにフル参戦することが、太田にとって論理的な次なるステップなのか? と尋ねられた渡辺社長は次のように答えた。
「それもひとつの可能性です。適切なタイミングで、彼の結果を観て決めたいと思います」
太田がインディカーに参戦する場合、もちろん金銭的な問題も関係してくる。佐藤の場合、近年は知名度とコネクションを用いて、インディに参戦するために必要なスポンサー資金を自力で集めてきた。
「琢磨選手のインディ500プログラムは、ホンダのワークスプログラムというよりも、彼のインディへの愛と参戦への強い願望が、ホンダを含む様々なソースからのサポートを集めることを可能にした結果なんです」と渡辺社長は語り、佐藤が来年もグリッドにいると「個人的に信じています」と付け加えた。
「将来的には、琢磨選手のようにインディに出たいという強い意思を持ち、必要なレベルの才能を持ったドライバーがいるかどうかを検討します」
「これらの条件を満たすドライバーが見つければ、サポートするかどうかを判断することになります」
渡辺社長が強調するように、現段階で保証はないが、太田にIMSA参戦のチャンスが与えられたことは、F1とは異なるルートへと進むホンダドライバーにとって、ここ数年で最大のチャンスになる。
仮に太田がスーパーフォーミュラからインディカーに転向することとなれば、今年のインディ500を制したアレックス・パロウが5年前に辿った道を通ることになる。多くのドライバーにとっては、上手くいかなかったことだが……。
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みんなのコメント
佐藤琢磨がインディ500にしか参戦していないと日本人としてインディを見ていても寂しいから日本人ドライバーにはまずは参戦してもらって、頑張って欲しい。