世界興行収入389億円を突破した話題の映画『WEAPONS/ウェポンズ』。深夜2時17分に子供たち17人が突如姿を消すという謎の事件から物語は始まる。子供たち、いや物語はどこへ向かっているのかまったく分からない謎解きミステリー作品の見どころを解説する。
ワーナー大成功の一年
小寺暁洋のステムグラスとmitosaya薬草園蒸留所の「199 SMOKED HUE」──連載:酒器と銘酒
2025年の世界興行収入ランキングを眺めていると、ワーナー・ブラザースの圧倒的な強さに驚かされる。『マインクラフト/ザ・ムービー』の大ヒットを皮切りに、公開する新作がことごとくヒット。同スタジオとしては、COVID-19以前の2019年以来、6年ぶりとなる世界興収40億ドル超えを達成した。とりわけ、7作品連続(注)で全米オープニング興収4000万ドル超えを記録したのは、史上初の快挙。注目すべきは、その7作のうち4本がホラー作品だったことだ。『死霊館 最後の儀式』や『ファイナル・デッドブラッド』といった人気IPの新作から、『罪人たち』やここで紹介する『WEAPONS/ウェポンズ』のようなオリジナル作品まで、今年、アメリカの映画館を支えていたのはホラーだった。
日本国内でのハリウッド映画の劇場公開をめぐる状況が一段と厳しさを増している中、これら4本のホラー作品がストリーミングサービスでの配信ではなく、なんとか劇場公開にこぎつけた事実は忘れずにいたい。来年も同じ状況が続く保証はどこにもないのだから。ひとまず、今年のホラー映画の締めくくりにふさわしい『WEAPONS/ウェポンズ』の公開を祝し、劇場の暗闇で恐怖に身をゆだねよう。
暗闇を飛ぶ子どもたち
本レビューでは『WEAPONS/ウェポンズ』の具体的な物語展開には触れないが、冒頭3分ほどのシークエンスの素晴らしさについては特筆しておきたい。「これは本当の物語」と、本作の発端となる「不可解な事件」のあらましを淡々と語る少女のナレーションに耳を傾けていると、その穏やかな語り口とは対象的に、カメラは妙に速いスピードで学校に寄っていく。まるで銃弾のような速さで対象に接近するショットが、観客を物語の世界へと一気に引き込む。そこから、子どもが夢中で絵本をめくるような手つきでカットが繋がれ、事件当日の様子が明かされていく。
「深夜2時17分、子どもたちがいなくなった」
なぜ?という疑問よりも先に驚かされるのは、子どもたちがいなくなるシーンだ。これはホラー映画のはずだ。いや、紛れもなくホラー映画なのだが、なぜか、このシーンには奇妙な高揚感が漂っている。両腕を不自然に広げたまま、家の玄関から飛び出し、暗闇を駆け抜けていく子どもたち。その姿をスローモーションで追いかける視線は、まるで親鳥の元から大空へと巣立つ雛鳥の様子を観察しているかのようだ。これは一体どんな映画なのか? 困惑を残したまま、カメラは暗闇に消えた雛鳥ではなく、残された親鳥の方へと降りていく。
大人たちの童話
少女のナレーションによって冒頭で示されるのは、この事件をニュースが報じなかったということ。つまり、これは口頭伝承の物語なのだ。本作は明確に童話の構造を意識しており、いわば、グリム童話『ハーメルンの笛吹き男』において、子どもたちが連れ去られた「その後」を描いた作品と言えるかもしれない。あの童話の世界で、残された大人たちはどうなったのか。なぜ親たちは事件を隠蔽したのか。そして、なぜ語り手は少女なのか。謎は尽きない。
監督ザック・クレッガーの単独長編デビュー作『バーバリアン』(2022)もまた、童話に近い形式だった。「あるところにおじいさんとおばあさんがいて、桃が流れてくる」というように、背景の見えない登場人物と状況だけが提示されていく。しかし、それでも『バーバリアン』には、男性による性加害や、時代を超えた女性たちの連帯といった、2020年代的なイシューを読み解く導線が残されていた。
その点、今回の『WEAPONS/ウェポンズ』は、より童話に接近したといえる。怖い挿絵とともに無造作に置かれた物語は、ただ、世界は恐ろしい場所であると告げ、読者を置き去りにしていく。ここには、子どもの頃に初めて童話に触れるような不気味な感覚がある。「R18」というレーティング設定は、童話が日常に溶け込んでいる子どもたちにとって、この映画は必要ないからなのかもしれない。
空っぽのモチーフ
本作は、劇場版『呪怨』(2002)のように、名前のテロップが挿入され、様々な人物の視点に切り替わりながら、事件を多角的に見ていくオムニバス形式の映画となっている。登場人物には先生や親、警察など、わかりやすい肩書きが付与されているが、肩書き以外の内面はどこか「空っぽ」な存在として描かれている。物語は教室が「空っぽ」になるところから始まるが、途方に暮れる大人たちもまた、自身の内にある「空っぽ」を埋めるかのように、アルコールやドラッグに依存し、事件の謎に執着していく。ザック・クレッガーの次回作が『バイオハザード』シリーズの新作であることを踏まえると、ゾンビのような「空っぽの人間」というモチーフは、彼の作家性を考える上で重要な要素と言えるだろう。
コメディ作家のホラー映画
そして、もうひとつ彼の作品を特徴づけているのが、コメディ作品でデビューしたという出自だ。『NOPE/ノープ』(2022)のジョーダン・ピールや、『ジョーカー』(2019)のトッド・フィリップスなど、コメディ作品を得意としていた作家が、映画業界のトレンドに合わせて、低予算でヒットが狙えるホラーやスリラーのジャンルに転向し、成功を収める例は多い。緊張と緩和、予期せぬ裏切り、配分をわずかに変えるだけでコメディとホラーは簡単に行き来ができる。『WEAPONS/ウェポンズ』でも、あまりの恐怖に、もはや笑うしかない瞬間がいくつもあり、本当はコメディ映画を撮りたかったのではないかと邪推してしまうほどだ。
かつてザック・クレッガーとともにコメディ映画『お願い! プレイメイト』(2009)を共同監督したトレヴァー・ムーアは、2021年に逝去している。もしかすると本作は、突然いなくなった友人へ贈る、監督からの最大限のブラックジョークなのかもしれない。あまりに使い古されたクリシェだが、チャップリンが言うように「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇」であり、本作はカメラワークの使い分けによって、悲惨な現状をロングショットで対象化し、ギリギリのところで笑い飛ばそうとしてみせる。その視点の切り替えにも、ぜひ注目してもらいたい。
さて、最後に触れておきたいのは『WEAPONS/ウェポンズ』がワーナー ブラザース ジャパンによる最後の洋画配給作品となることだ。今後、ワーナーの海外作品の劇場配給は、東宝東和の子会社、東和ピクチャーズが引き継ぐことになる。そしていま、本社ワーナーブラザーズも買収の噂で揺れている。ワーナーの映画たちは、これからどこへ飛んでいくのか。その行方は予想もつかないが、その先に待っているのが恐ろしい結末でないことを祈るばかりだ。
『WEAPONS/ウェポンズ』文・島崎ひろき
編集・遠藤加奈(GQ)
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