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オーナーのお望み通りに ベントレー・バトゥールへ試乗 W12の最後を飾る18台 後編

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オーナーのお望み通りに ベントレー・バトゥールへ試乗 W12の最後を飾る18台 後編

過去に例がないほど能力の幅が拡張

ベントレー・バトゥールは、同社の歴代の量産モデルでは最も強力。新しいコンプレッサーを得たターボチャージャーが2基組まれ、インテークパイプの太さは33%、インタークーラーの容量は35%も増やされている。

【画像】オーナーの望み通りに ベントレー・バトゥール 2021年のバカラル 他銘柄の限定車も 全138枚

その結果、最高出力は750ps/5500rpmへ上昇。最大トルクは101.8kg-m/1750rpm-5000rpmに達する。

トランスミッションは、コンチネンタルGT スピードと同じ8速デュアルクラッチ・オートマティック。アクティブ後輪操舵システムと、電子制御のリミテッドスリップ・デフも受け継がれている。

同社として最もダイナミックなクーペとするべく、サスペンションにも僅かに手が加えられた。リアのトレッドは8mm広げられ、安定性を引き上げただけでなく、より凛々しい雰囲気を生んでいる。

美しく希少なボディはカーボンファイバー製。車重はベース車両から40kg軽くなり、2233kgとなっている。増強されたエンジンと相まって、0-100km/h加速は3.4秒、最高速度は336km/hが主張される。

ドライブモードは複数用意されるが、ドラマチックさを高めるべく、デフォルトがスポーツ・モードへ設定されている。多くの変更が加えられ、出色の洗練性が犠牲になってしまわないか不安になるが、そこはベントレー。まったく心配はいらない。

強みはそのまま、過去にないほど能力の幅が広げられたと考えていい。上質でありながら、今まで以上に運転を堪能できる。求めれば、330km/hで飛ばすことも許容する。

マリナー部門の職人が手仕事で仕上げる

ベントレーで最高技術責任者を務めるポール・ウィリアムズ氏は、マリナー部門の職人が手仕事で仕上げることが、洗練性で有利に働くと説明する。例えば、時間をかけて防音材を丁寧に組み付けることで、通常のコンチネンタルGTより静寂性は高まるという。

インテリアを観察すると、ダッシュボードや、その中央に吸えられる回転式モニター、細かなスイッチ類などが、ベースのコンチネンタルGT スピードから引き継がれているのがわかる。運転席へ座ると、過去に出会った人のように、すぐに馴染める。

それでも、モニターにレンダリングされるメーターのグラフィックや、ドアパネル、シートなどはバトゥールの専用品となり、雰囲気はだいぶ異なる。主要なスイッチ類は、希望に応じて3Dプリンターで成形可能だという。

リアシートは省かれ、荷物を置ける空間が作られている。開口部が小さめで、奥に広い荷室は従来どおり。お望みなら、専用の旅行カバンなども依頼可能だ。

どこまで自由が効くのか興味を抱かれるもしれないが、バトゥールはホームページ上のコンフィギュレーターには含まれていない。ベントレーのディーラーで直接相談するか、専任デザイナーを派遣してもらうことになる。

ちなみに、3Dプリンターで成形された金色のエアコン用スイッチが、プロトタイプの1台に装備されていた。他方はチタンで試作されていたが、もう少し表面は磨き込んだ方が良さそうだ。

コンチネンタルGTへ近い走行時の印象

内装を包む素材も、従来以上に多様な選択肢が用意されている。希少な木材を取り扱う業者へ担当者が出向き、手配することも可能だとか。

バトゥールの金額の多くは、このような特装へ費やされるように思えるが、それだけではない。チューニングを受けたW12気筒エンジンは、様々な気候条件で稼働テストにかけられる。特別なレザーも、日光でどのように経年劣化するのか実験される。

今回ステアリングホイールを握らせてもらったプロトタイプも、そんな実験台になっている。走行距離は3万kmを超えていた。それでも、使い込まれた印象は殆どない。カップホルダー部分には、非常時に電気を遮断するキルスイッチが隠れていたが。

走行時のフィーリングは、コンチネンタルGT スピードへ非常に似ている。そのオーナーなら、目隠しをして乗っても、関係性が近いことへ気付けるだろう。

ステアリングホイールのデザインは、バトゥール独自のもの。直径はちょうどよく、リムは握りやすい太さ。重み付けも適正で、とてもスムーズに反応し、高性能グランドツアラーとして望ましいレスポンスが得られる。

素晴らしいW12エンジンも、従来どおり。アイドリング時は静かに威圧するようなサウンドを放ち、アクセルペダルを踏み込むと一層唸りを強める。そこから一気に緩めると、アフターファイヤーの破裂音やゴロゴロとグズるノイズが交じる。

レッドゾーンは6000rpmだが、極めてパワフル。その高揚感には中毒性がある。

限定モデルでありながら高度に洗練され豪華

現世代のコンチネンタルGTは、重いW12エンジンが載っていても、先代より遥かに軽い身のこなしと、リアタイヤの仕事ぶりが特徴といえる。それは見事に保たれている。削減された車重は40kgと小さくても、バトゥールは従来以上に軽快に感じられた。

アクティブ後輪操舵システムが、想像以上の速度域での鋭い回頭性を叶えている。日常的な走り方でも、コーナーの出口でリアタイヤが向きを整えようとする仕草を感取できる。

このサイズのグランドツアラーとして、ドライバーへの訴求力は相当に高い。意欲的に運転したいと思わせてくれる。

そして、熟成されたコンチネンタルGTと同じくらい磨き込まれている。厳しいテストに挑んでいるプロトタイプでも。マクラーレンやフェラーリ、ポルシェといったブランドの限定モデルで、ここまで洗練され豪華に感じられた例を、筆者は知らない。

特別にスポーティさを強めれば、快適性が酷く犠牲になることが殆ど。バトゥールは、それらと同じくらいモナコやモントレーで唯一の存在になれつつ、往復の道ではシルキーな快適さへ浸れる。ベントレーならではといえる。

この事実を、目の肥えた裕福なクルマ好きは知っているのだろう。18台のバトゥールは、既にすべて納入先が決まっているらしい。

ベントレー・バトゥール(欧州仕様)のスペック

英国価格:198万ポンド(約3億4650万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:336km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:320g/km
車両重量:2233kg
パワートレイン:W型12気筒5998ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:750ps/5500rpm
最大トルク:101.8kg-m/1750-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック/四輪駆動

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