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軽く速く小さい世界クラス ホンダ・シビック 同期のルノー5 日仏で生まれた新たな魅力(2)

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軽く速く小さい世界クラス ホンダ・シビック 同期のルノー5 日仏で生まれた新たな魅力(2)

軽く速く小さい、世界クラスのクルマ

1969年にホンダが発売したサルーン、1300は充分な評価を得られなかった。空冷エンジンを積んでいたことが販売不振の一因となり、本田宗一郎氏が社長を辞任するきっかけを作ったともいわれている。

【画像】日仏で生まれた新たな魅力 ルノー5 ホンダ・シビック 最新シビックとクリオ N360にeも 全125枚

これを挽回するように、「軽く速く小さい、世界クラスのクルマ」の開発が1970年に始まる。N360やN600の後継モデルとして、シビックは世界市場での販売が目指された。

ホンダの技術者は、オーバーヘッドカムの1169ccエンジンをフロントに横置き。前後のサスペンションには、独立懸架式を採用した。小さなボディサイズは入り組んだ日本の都市部へ適合し、オートバイを販売するディーラーの店頭へ問題なく収まった。

日本での発売は1972年7月。当初はリアガラスが固定の2ドアのみだったが、9月に3ドアのハッチバックが追加されている。ホンダの上層部は、2ボックス・ボディは充分な人気を得られないのではないかと、当初は心配していたようだ。

それでも、シビックは1972年と1973年、1974年に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。北米でも販売され、モータートレンド誌は、1941年式リンカーン・コンチネンタルやジム・クラーク氏がドライブしたロータスのF1並みに重要なモデル、だと絶賛した。

驚くほど機敏に走る典型的なホンダ車

グレートブリテン島へのシビックの輸入が始まったのは、1973年。既にホンダN360やN600が導入され、ロンドン・モーターショーではS800が注目を集めたものの、まだ英国人にはバイクメーカーだという認識が強かった。

市民のクルマといえたシビックは、そんなイメージを塗り替えることになった。当時のAUTOCARは、「過去のホンダのデザインに、まったく影響を受けていません」。と紹介している。

1973年のシビックの価格は、2ドアで1029ポンドから。セミオートマティックのホンダマチックを搭載した、3ドアのデラックスは1239ポンドに設定された。

ところが英国では、モーリス・ミニ 1000が837ポンドで売られていた。ホンダも、価格が安くないことは認めた。だが、オクタン価の低いガソリンにも対応することが強みだった。ストラット式の独立懸架サスペンションのメリットも、前面にアピールされた。

今回のイエローのシビック・デラックスは、英国に現存する最古の初代だと考えられている。直近の25年間は、英国ホンダのヘリテージ部門が管理する特別な車両だ。

「典型的なホンダ車といえますね。驚くほど機敏に走ります。ステアリングにはパワーアシストがなく、若干重く感じられますが、とてもレスポンシブです」。メンテナンスを担当する、同社のジェイソン・ライダー氏が話す。

日本車を選ぶには勇気が求められた

「1975年のクルマなので、乗り心地は少々跳ね気味ですが、快適といえます。トランスミッションは、ショートレシオの4速のみ。エンジンを回す必要があり、5速目が欲しいと思わせます」

「それでも、1.2L 4気筒エンジンは活発です。ホンダらしく高回転域まで使えますよ」

MLA 993Pのナンバーで登録され、48年間に重ねた距離は12万kmほど。状態は素晴らしく、まるで過去からワープしてきたかのように真新しく見える。かつて、ホンダ・ディーラーへ飾られていた様子を想像できる。

初代シビックも、すっかり珍しいクルマになってしまった。一般道で撮影していると、通行人が驚いたように見つめてくる。

インテリアは、他にはない個性があり魅力的。グレーのクロスとブラックの合皮で仕立てられたシートが、実用主義的な雰囲気を漂わせる。

ダッシュボードの中央は、ファブロンと呼ばれたフェイクウッド・パネルで飾られている。これ以外にも、オプションでステアリングホイールをフェイク・ウォールナットで仕立てたり、天井にスポットライトを追加することも可能だった。

ボディはベーシックな2ドア。ハッチバックのないシビックは、保守的なモーリス・ミニのオーナーを誘惑したかもしれない。とはいえ、当時の英国人にとって、日本車を選ぶにはそれなりの勇気が求められた。優れた仕上がりだとしても。

市場の空白を埋める役割を果たした2台

シビックは、1979年に2代目へ進化。グローバルモデルとして世代を重ね、現行型は11代目に当たる。2021年には、世界での累計販売が2700万台を超えている。

オリジナルのシビックは、同時期のミニよりひと回り大きいが、軽快に見える。ホンダは5シーターだと主張したが、実際は2+2と呼んだ方が正しいだろう。ルノー5の方が小柄ながら、車内は若干広く、ファミリーカーという表現では適している。

5とシビックは、ルノーとホンダにとって重要な役割を果たしただけでなく、英国の自動車産業にも大きな影響を与えた。まだ輸入車へ充分に慣れていなかった人々の心の扉を、徐々に開いていった。

愛国心はあったとしても、自分のニーズへ適したクルマを選ぼうという志向が高まっていった。加えて、1970年代にBMCがミニを放置したという現実も、無視はできない。

「毎日の運転へ他に例のない満足感を与える」とホンダが主張したシビックと、「運転に係るすべての問題を解決できる1台」とルノーが主張した5は、市場へ生まれていた空白を見事に埋める役割を果たしたのだった。

協力:シルバーボール・カフェ、ナイジェル・ハラット氏、ホンダUKヘリテージ

1970年代のコンパクトカー 2台のスペック

ルノー5 GTL(1972~85年/英国仕様)

英国価格:2724ポンド(新車時)/8000ポンド(約144万円)以下(現在)
生産数:547万1709台(合計)
全長:3493mm
全幅:1524mm
全高:1410mm
最高速度:133km/h
0-97km/h加速:17.0秒
燃費:13.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:785kg
パワートレイン:直列4気筒1108cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:45ps/4400rpm
最大トルク:8.6kg-m/2000rpm
トランスミッション:4速マニュアル(前輪駆動)

ホンダ・シビック 1200(1972~79年/英国仕様)

英国価格:1199ポンド(新車時)/1万ポンド(約181万円)以下(現在)
生産数:−台
全長:3556mm
全幅:1499mm
全高:1346mm
最高速度:142km/h
0-97km/h加速:14.0秒
燃費:13.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:660kg
パワートレイン:直列4気筒1169cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/5500rpm
最大トルク:8.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(前輪駆動)

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みんなのコメント

2件
  • CVCCエンジンはクリーンな一方でパワー的には評判良くなかったけど車重が660kgなら十分活発に走れたのかな。
  • シビックは北米市場をひっくり返したクルマと称えられてるが、英国市場もひっくり返したとは…当時世界一厳しい規制とされたマスキー法をクリアしたCVCCシビックは世界中に衝撃を与えたのは『自国(アメリカ)のクルマもその規制に対応できる訳がない』と言われていただけに…(ちなみに昭和53年排ガス規制も当時のマスキー法なみに厳しかったそうだ)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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