Lamborghini Huracan STO
ランボルギーニ ウラカン STO
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トラックとストリートの狭間
常に進化を続けるランボルギーニ ウラカンに新たなラインナップが登場した。スーパートロフェオ・オモロガータの名前が表す通り、STOはモータースポーツ部門のスクアドラ・コルセが仕上げた入魂のモデル。その実態は公道も走れるサーキットマシンと呼ぶべき1台だ。
「スクアドラ・コルセの哲学が余すところなく導入されている」
ランボルギーニは、2020年11月に究極のウラカンともいうべき「ウラカン STO」を発表し、すでにデリバリーを開始している。日本市場での価格は、消費税込みで4125万円。ウラカンのラインナップ中、最もベーシックな「EVO RWD」が2653万9635万円という設定であるから、その価格差がどこに反映されているのかは、誰しもが興味深いところだろう。
イタリア・サンタアガタ・ボロネーゼの本社で行われたワールドプレミア・イベントからおよそ半年後、日本に本格的な上陸を果たしたウラカン STOは、やはり独特なアピアランスに満ち溢れていた。新たに日本支社代表に就任したダビデ・スフレコラ氏は、ビデオレターでウラカン STOを、「ランボルギーニのスクアドラ・コルセ(カスタマー・レース)部門が得たレースでのノウハウ、そして技術的な進歩、またその伝統をロードカーに活かしたいと考えていた」とコメント。つまりSTOはワンメイクレース仕様のトロフェオや、3年連続でデイトナ24時間レースを制したGT3 EVOから、さまざまなテクニックを導入した、公道走行可能なサーキットモデルと説明することができるわけだ。
「空力デバイスなどにサーキットに投じられているウラカンからの技術を数多く採用」
たとえばエアロダイナミクスの進化などは、その代表的な例といえるだろう。スフレコラ氏のコメントにあったスクアドラ・コルセとは直訳すれば顧客レース部門の意であり、彼ら自身がオーガナイズするワンメイクレースのスーパートロフェオ、あるいはウラカン GT3 EVOへのサポートなど、いわゆる社外の顧客に対して、その車両製作やメンテナンス、サーキットでのサービスを受け持つセクションだ。ウラカンのGT3マシンが誕生した時には、あのダラーラと共同でシャシーやエアロダイナミクスの設計が行われたことで、その名前は広く知られた。
そのスクアドラ・コルセが製作したウラカン スーパートロフェオにインスパイアされ、ロードモデルとしてのホモロゲーションを取得したのがSTOといってもよいだろう。ただしこれはSTOの成り立ちの半分。もう半分は2018年にスクアドラ・コルセがワンメイクで製作した、「SC18 アルストン」の存在だ。このモデルはアヴェンタドールがベースではあるが、空力デバイスなどにはサーキットに投じられているウラカンからの技術が数多く採用されていた。同様のコンセプトを持つ究極のウラカンを造ってみたいとスクアドラ・コルセが考えたのも、自然な成り行きだったに違いない。
「象徴的な“コファンゴ”はミウラをも彷彿とさせる」
ウラカン STOのボディには、さまざまな技術的特徴があるが、その最も象徴的なものは「コファンゴ」と呼ばれるフロントボンネット、フェンダー、そしてフロントバンパーを一体化したコンポーネントだ。セストエレメントがそうであったように前方に向かって大きく開くそれは、軽量化のみならず、モータースポーツの現場ではメンテナンスの時間を短縮することができるというメリットを持つ。またランボルギーニのファンにとっては、あのミウラの姿を思い出すだろうか。
このコファンゴにはエアダクト、フロントスプリッター、ルーバーが備えられ、それらによって空力効率の最適化、すなわちダウンフォースの増大とドラッグの減少を実現する。さらにリヤボンネットにはエンジンルーム内部の空冷効率を高めるエアスクープ、動的性能を高めるためのセントラルシャークフィンが設けられ、3ポジションに調節可能なリヤウイングとともに最適なエアロダイナミクスが実現される。参考までにウラカン STOの空力効率はウラカン EVOと比較して37%の向上を果たしているということだ。
「STOはあくまでも公道走行を許された、サーキットスペシャルにほかならない」
リヤミッドに搭載されるエンジンは、640psの最高出力と565Nmの最大トルクを発揮する5.2リッターのV型10気筒自然吸気。GT3のような吸気制限などによる性能調整から解放されたことや、ウラカン ペルフォルマンテ比で43kgの軽量化を果たしたため、0-100km/hで3秒、0-200km/hで9秒、最高速では310km/hという究極的な運動性能が得られている。
シャシーの備えももちろん万全だ。走りのフィーリングは、これまでのウラカンよりさらにダイレクトなレスポンスが得られているというが、これはもちろんステアリングとサスペンションのセッティングによるもの。ブレーキはCCC-Rシステムと、こちらもレース用のセッティングを再現したものとなる。
ブレンボ製のCCM-Rも、F1マシンからフィードバックされたもの。従来のCCBと比較して最大制動力は25%、減速性能は7%の向上を実現している。タイヤはこのSTOではブリヂストン製となり、ステアリング上からドライブモードを選択できるANIMAも、デフォルトとなる「STO」、サーキット用の「トロフェオ」、ウェット路面用の「ピオッジオ」が備わるなど、ここにもSTOならではのクルマ造りの哲学が感じられる。STOはあくまでも公道走行を許された、サーキットスペシャルにほかならないのだ。
「日常使いにも応えてくれるだろう。すべてが可能なサーキットモデルだ」
インテリアも、実にレーシーな雰囲気だ。カーボンファイバーが多用されたコクピットは、シートフレームまで同素材。フロアカーペットやドアパネルもカーボンファイバー仕上げで、ドアの開閉には簡素なベルトを用いる。一方インターフェイスは一新され、タッチスクリーンを操作することで、サーキット走行の分析を行うこともできるという。
サーキット走行とともに、オンロードでの日常使いにも十分に使えそうなウラカン STO。カスタマーははたしてこのマシンをどのように使いこなすのだろうか。インターフェイスにはスマートフォンアプリとの連携も可能。事実上すべてのことができるサーキット走行モデル。これからスーパーカー、ハイパーカーの世界では、流行りそうな気配を見せそうなプロダクトだ。そのためにはまず、レースでの勝利が必要になるが。
REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 8月号
【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ ウラカンSTO
ボディサイズ:全長4549 全幅1945 全高1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジン:V型10気筒DOHC
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:310km/h
車両本体価格:4125万円
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーサービスセンター
TEL 0120-988-889
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