WEC世界耐久選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racingのリザーブ兼開発ドライバーを務めながら、6月の第2戦ル・マン24時間後にはLMP2クラスを戦うドラゴンスピードに加わるアンソニー・デビッドソンは、トヨタでの職務に全力を尽くしていると語った。
5月3~5日の第1戦スパを皮切りに2019年6月15~16日の最終戦ル・マン24時間まで、1年以上に渡って争われる2018/19年のWEC“スーパーシーズン”。トヨタは最上位のLMP1クラス唯一のワークスチームとして参戦する。
WEC:アンソニー・デビッドソン、ル・マン後にLMP2参戦へ
そのトヨタはドライバーラインアップに2度のF1ワールドチャンピオンであるフェルナンド・アロンソを起用することを発表。代わりに2014年からWECでトヨタの一角を占めてきたデビッドソンがレギュラーシートを失っている。
レギュラーの座を失ったデビッドソンはWECスーパーシーズンではリザーブドライバーとしてトヨタに残留。ウインターテストではトヨタTS050ハイブリッドの開発を担当したほか、4月上旬のプレシーズンテスト“プロローグ”でもアロンソの代役としてトヨタTS050ハイブリッドのステアリングを握った。
その一方、デビッドソンは第3戦以降はLMP2クラスを戦うドラゴンスピードに加わることを明かしており、トヨタのレギュラーシートに空きができた場合どちらを優先するか注目が集まっていた。
「僕が必要とされるときは、トヨタが優先される。それが両方のチームと僕が歩み寄り、合意したことのひとつなんだ」とデビッドソン。
「今年のル・マン24時間に向けてリスクをなくして安全策を取るためで、僕もその考えに同意している」
「僕は準備を整えなければならないし、チームもそう望んでいる。ル・マンでの試練の直前までトヨタは勝利を掴むために最善を尽くすし、それまでの間、僕もチームとともに職務をこなすという計画なんだ」
「(LMP1クラスのレースシートを失ったことについて)僕にできることは何もない。だから次善の策としてレースに身を投じる必要があった。そこでドラゴンスピードとの契約が持ち上がってきたんだよ」
8月のシルバーストン6時間から、デビッドソンはエルトン・ジュリアン率いるドラゴンスピードの31号車オレカ07・ギブソンを、ロベルト・ゴンザレスと元F1ドライバーのパストール・マルドナドとシェアすることになる。
■かつて活躍したIMSAへの復帰も視野に
デビッドソンはトヨタとの契約を有しており、クラスは異なるもののドラゴンスピードから参戦すると同じコースで戦うことになる。また、同チームはBRエンジニアリングが開発したBR1ギブソンを使い、LMP1にも参戦するため、ここではトヨタとライバル関係となる。
そのためデビッドソンはドラゴンスピードとの契約をスタートさせる前に、トヨタとドラゴンスピードが“協定”を交わす必要があったという。
デビッドソンは「ル・マンの後は、僕は他のところへ行ってレースに出る自由がある」と語った。
「僕がトヨタとの契約下にあることは、僕自身もドラゴンスピードも尊重している。トヨタとの契約が僕の優先事項で、僕がどこにいるべきかの最終決定権は彼らが握っている」
「関係者全員による話し合いが必要になった。彼らは僕のレースをしたいという願いを理解してくれたし、(ドラゴンスピードの)エルトンは明らかにル・マンの後も優れたドライバーを必要としていた。そして最後には全員が満足のいく合意に達することができた」
トヨタとドラゴンスピードは、昨年ニコラス・ラピエールを“シェア”しており、この関係がデビッドソンのLMP2クラス参戦を実現する助けになったという。
2017年、ラピエールはドラゴンスピードからELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦しながら、ル・マンではトヨタのTS050ハイブリッドをドライブした。
またスーパーGTでKeePer TOM'S LC500をドライブしている平川亮がELMSに参戦した際に所属したチームもドラゴンスピードだった。
「彼らは全員お互いのことを知っているから、とてもうまくいっているよ」とデビッドソン。
「他のチャンピオンシップへ出場して違う場所でレースをすることもできるし、トヨタの恩恵にあずかることも簡単にできるだろう。でも自分も契約しているLMP1チームと同じコースを走るとなると、状況はもっと複雑になる」
「相手がエルトンでなければ、WECでの契約を結ぶのはとても大変なことになっただろう。忍耐と理解を示してくれた彼と、契約することを許可してくれたトヨタに感謝しているよ」
またデビッドソンはWECだけでなく、ロレックス・デイトナ24時間やセブリング12時間など、北米で開催されているIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップへの参戦も視野に入れているという。
デビッドソンは2010年のセブリング12時間ではプジョーで優勝を飾っており、アメリカン・ル・マン・シリーズの一部だった2010年と2011年のプチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)では、ポールポジションを獲得している。
また2013年にはデイトナにも参戦。ステファン・サラザン、ペドロ・ラミー、ニコラ・ミナシアン、エンツォ・ポトリッキオとともに、8スター・モータースポーツのコルベットDPをドライブした。
デビッドソンは「IMSAのビッグレースにも戻りたいと思っているんだ」と語った。
「戻りたくなるんだ。ああいったアメリカでのビッグレースには引きつけられる。なにより楽しいからね」
「デイトナに1度出ただけだけど、もう1度参戦して優勝を目指したい。向こうにはレースの可能性が本当にたくさんある。適切な時間と場所を見つければいいだけなんだ」
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