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ロータス・エリーゼの生みの親 ジュリアン・トムソンxリチャード・ラックハム 前編

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ロータス・エリーゼの生みの親 ジュリアン・トムソンxリチャード・ラックハム 前編

25年の歴史に幕を閉じるエリーゼ

1995年のドイツ・フランクフルト。ロータス・カーズは財政難に苦しむなかで、親会社のブガッティを率いるロマーノ・アルティオーリ氏のアイデアを元に、新しいスポーツカーを創造した。そのクルマには、孫娘のエリーサにちなんだ名前が与えられた。

<span>【画像】傑作スポーツ ロータス・エリーゼ シリーズ1とシリーズ3を比較 全73枚</span>

自動車ファンの欲求を満たすモデルとして、当初は限定的な生産台数が想定されていた。しかしエリーゼは、ロータス・カーズ史上最も多売のモデルへと、またたく間に成長した。多様なモデルバリエーションを生み出しながら。

寂しいかな、何事にも終わりは来る。エリーゼは2021年をもって、3万5000台という生産台数で、25年の歴史に幕を閉じる。

そこで英国編集部は、ジュリアン・トムソン氏とリチャード・ラックハム氏を招聘し、誕生秘話を伺うことにした。ロータス・カーズが買い戻した、フランクフルト・モーターショーへ出展されたグリーンの初代エリーゼとともに。

クリエイティブなビジョンを持ち、最大の友人でもある2人は、公私ともに交流が深い。エリーゼのモデルライフに、誰より深く関わってきた。傑作プラットフォームを生み出すことで。

ラックハムは、1987年に技術者としてロータスへ入社。急速に拡大するへセルの開発現場で車両コンセプトのチーフへ就任し、確固たる地位を築いてきた。

他方のトムソンは、当時はロータスでデザイナーとして既に手腕を奮っていた。その後ジャガーに移籍するが、今はこれまでの経歴を活かしジュリアン・トムソン・デザイン社を立ち上げている。

忙しいお2人にご参集いただいた。早速エリーゼ誕生当時を振り返っていただこう。

VWのヘッドライトと同じ開発予算

リチャード・ラックハム氏(以降:RR)「当初の事業計画では、公道用モデルで年間750台を4年間製造する予定でした。ですが、その限られた数字では我慢を強いられる人が大勢いたんですね」

「主要なシャシー構造が設計された後に、ドアと屋根を追加する変更が加えられました。乗降性に制限が出た理由です。最初からドアとルーフが想定されていれば、だいぶ違っていたでしょう。当時のわれわれができる、最もシンプルなクルマでした」

「複雑さを増すことは、大きな問題になります。ボディはクラムシェル構造として一体化されており、実際とてもシンプルです。インテリアも同じ。何かを追加するほど、コストも増えます。パネルの数を減らすことが、重要な課題でした」

ジュリアン・トムソン氏(以降:JT)「準備できる専用の製造用機械の数は、極めて限定的でした。そのため、ウインカーとテールライトのレンズは、同じ成形型を用いています。それでも、大きな投資といえるものでした」

「いかに全体の予算が限られていたのかわかりますよね。わたしは1998年にロータスを離れ、フォルクスワーゲンへ移っています。そこで最初に関わったのが、ヘッドライトのデザイン。その部品1つで、エリーゼ全体の開発予算より多かったんですよ!」

グループCカーやバイクに影響

RR「開発の早い段階で、ドニントン・コレクション(英国のレーシングカー博物館)を訪ねています。グループCカーに乗ると、ドライバー両脇の燃料タンクが安心感を生み出していると思いました。それが、シャシー設計に影響を与えています」

「側面衝突に関する開発上の規定はありませんでした。でも、ベンチマークとしたケータハムが脆弱に感じられたことは確かです」

JT「(エリーゼは)レーシングカーに乗るような体験。すべての人に向けられたクルマではありませんが、魅力の1つです」

「デザイナーとして、ドアの追加には落胆していません。ボディのサイドラインが大きくえぐられており、ビーチバギーのようにも見えます。そのラインは、与えたいと思っていましたが」

「ビバリーヒルズ高校白書というドラマに、ポルシェ356スピードスターが登場します。そのサイドラインと低いプロポーションが、以前からとても好きでもありました」

「それと、バイクにも影響を受けています。ホンダCBRのエンジンカバーや、ヤマハのヘッドライト、燃料キャップなど。リチャードも、サンビームのバイクに影響を受けたようです」

「開発チームは驚くほど若かった。クルマに対する考え方や実用性には、深く考えが及んでいなかったといえます。でも、それが開発プロジェクトには良かったのだと思います」

RR「わたしはドゥカティ916を、彼はドゥカティ748というバイクを持っていました。能力が限られるなら、916並みにチャレンジングなことが必要になります」

プロジェクトのために生活をともにした

JT「デザインからエンジニアリングへ、切り替わった境界線はありませんでした。すべてが美しく、狙ったとおり。通常、車内の構造は殆どが覆われますが、エリーゼではほぼすべてが露出しています」

RR「ブガッティは、いつもそうでした。すべての部品は美しく丁寧に仕上げられます。それでいて、すべてが機能的な必要もある。考えが異なるメーカーもあります」

「交友関係は助けにもなりました。当時は2人とも独身で、プロジェクトのために生活をともにした感じ。いつもエリーゼのことを話し合っていましたが、楽しい時間でした。おかげで、創造的な部分の決断もスムーズでした」

「2人が仕事をしていたのは、それぞれのプレハブ事務所。小さなチームでしたが、同じ使命を持って働いていたと思います」

JT「当時のロータスは、いつ経営者が変わっても不思議ではない状態でした。ロータスは技術力に定評がありましたから、ロータス・デザインでも同様の信頼を構築したいと考えていました」

「ある時、大きな荷物が届いたんです。イタリアのデザイン事務所が手掛けた、エリーゼと新しい2+2モデルの、別のデザイン案だと聞きました。その時、われわれのアイデアはスケールモデルの段階に入っていました」

「スタジオの壁一面にデザイン・スケッチをピンで留め、どちらが良いか選出したんです。とても緊張する苦痛の時間でしたね。新しいロータスのスポーツカーを作りたいと、何年も働いてきたんです」

「選ばれるのは自分たちの案だと、強く望みましたよ。良く練られており、見た目も最高。幸運にもすべてが一体になっていましたから」

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

1件
  • この車ムチャ運転してて楽しい、MG製エンジンだったけどそれでも4000RPM以上の吹き上がりが凄かった
    ただ当時のパートナーは「うるさい、寒い、乗り降りの時スカートだとサービスショットのバーゲンセールになる」と不満タラタラでしたけど(苦笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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