エンジンは高回転域までしっかり回したほうがいいのか、それともあまり回さないほうがいいのか? はクルマを大切にするユーザーにとって長年のテーマでもある。「燃費」や「摩耗」ということだけを考えれば、「あまり回さない」ほうがいい。でも、「あまり回さないと回らないエンジンになる」とも聞くけど……ホント?
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/写真AC
チョイ乗りは危険!?!? 愛車のエンジン「回すvs回さない」どっちが正しいのよ
■なぜ「あまり回さないと回らないエンジンになる」といわれるのか?
急加速はカーボン発生の原因になるといわれているが、量産車の場合、マージンをとって設計されているためレースカーのような急加速を繰り返さない限りはエンジンに不具合が出るほどの量のカーボンは蓄積しないといわれているが……
エンジン内部にはピストンやシリンダー、カムシャフトにクランクシャフト、バルブ……など、擦れるパーツが多くある。エンジンを低回転で回すときと高回転で回すときでは、燃焼温度は異なり、擦れる部分も微妙に変わってくる。
常に低回転で稼働しているエンジンを高回転で回そうとしても、高回転時の摺動(しゅうどう)部にはアタリがついていないので、いきなり回そうとしても回転は重い感じになる。いつも使っているドアと、たまーにしか使わないドアのスムーズさの違い(?)のような感じだろうか。
■エンジンをあまり回さないとどうなる?
ピストンヘッドに煤(カーボン)が溜まると異常燃焼が発生してノッキングが生じる。ノッキングが頻繁に発生するとエンジンに負担がかかり、さまざまな不具合が起こる
エンジンをあまり回さないメリットは、エンジン音は静かで燃費は良くなり、エンジン内部のパーツは摩耗が抑えられる点。
燃料を燃やしてエンジンを回すと、エンジンオイルや燃料の未燃焼成分である生成物(カーボン)がエンジン内部に溜まっていく。
燃料を燃やすためには空気が必要だが、低回転域では空気の流入速度が遅く、エンジン内で燃料と空気が混ざりにくくなってカーボンが溜まりやすくなる。これがデメリットだ。
カーボンが燃焼室内に堆積すると、カーボンが高熱になってプラグが点火する前に燃焼が始まり、これが引き金となって異常燃焼を起こすこともある。
“摩耗”を考えるとエンジンは回さないほうがいいが、あまり回さないからといってエンジンが壊れるわけでもない。でも、カーボンが溜まるのはできるだけ避けたいところだ。
ちなみに、ガソリンエンジンだけではなくディーゼルエンジンにもカーボンは溜まるので要注意!
■エンジンを高回転まで回すとどうなる?
エンジンを頻繁に高回転まで回すと吹けが良くなったり、カーボン溜まりを減らすことはできるが、逆に、燃焼室のパーツ類の摩耗は進行するというデメリットがある
エンジンを高回転まで回すデメリットは「回さない場合」の逆。エンジン音はうるさくなって燃費は悪化。エンジン内部のパーツは摩耗していく。
「じゃ、回さないほうがいいじゃないか」と思うが、空気の流入速度が速くなり、燃料と空気の燃焼状態が良好となってカーボンは溜まりにくくなる。また、ある程度の量のカーボンなら焼き切ることもできるようになる。
とはいえ、少しだけ高回転でエンジンを回したからといって堆積したカーボンがすべて焼き切れるわけではないし、瞬間的にアクセルをグッと踏んでも負荷が増えて燃料は多めに噴射。未燃焼成分のカーボンが増える一因となる。
また、MT車ならいざ知らず、現在のAT車では高回転まで回すと速度も尋常ではない速度になってしまう。
そこでお薦めするのが高速道路での走行だ。
■高速道路での走行がお薦めなワケ
エンジンは高回転まで回すというより、中回転域といえる3000回転程度(車種や排気量によって異なるが)を維持して走るのがお薦め。そうなると、信号機のない高速道路はうってつけ
カーボンの堆積を考えると、低回転で稼働させるだけが良いわけではない。
そう考えると、高速道路の走行がいい。それも、燃料を無駄に噴射するアクセルをガバガバ開けるような高負荷運転ではなく、あまり負荷をかけない高速巡行がお薦め。
負荷をあまりかけないので余分な燃料を使わず、結果的に未燃焼成分のカーボンも溜まりにくい。しかも、ある程度の燃焼温度を維持するので、多くはないがカーボンの除去にもつながるからだ。
■堆積したカーボンを除去する他の方法は?
一般的にはレギュラーガソリンはハイオクよりも異常燃焼が発生しやすく燃えカスが出やすいといわれている
ハイオクガソリンには、洗浄効果のある成分が含まれていることもあり、「レギュラーガソリン車にハイオクガソリンを入れるとカーボンを除去してエンジン内部をキレイにしてくれる」という人もいる。
ハイオクガソリンはレギュラーガソリンに比べて洗浄効果が高いことは事実だが、堆積したカーボンをできるだけ除去したいのであれば、お金はかかるがエンジンのオーバーホールを行うか、コストパフォーマンスを考えて市販の燃料添加剤を使うほうが効果的だ。
■愛車の軽自動車で高速巡行した後はエンジンが軽く回る!
「軽自動車で高速巡行するとエンジンが壊れる」という人もいる。
筆者は20年以上前の軽トラック(MT)を持っており、1人での移動なら大きさや燃料の無駄の少ないこのクルマを使い、大きくて重い荷物を積んで移動しないといけないときにもたびたび活躍している。
東京~熊本間や東京~広島間を何度か往復したこともあるが、そのときの愛車のエンジン回転数は5000~6000回転ほど。
普通車であれば“高回転域”と呼ばれる回転数である。けっこうな上り坂になると愛車はシフトダウンを余儀なくされ、回転数は6000回転以上に……。
長距離でなくとも、私はこの愛車とともに月に1~2度は100km程度の高速道路走行を行っているが、高速道路を降りた後のエンジンはヒュンヒュン回って絶好調(プラシーボ効果かもしれないが)。
ちなみにエンジン関係では、エンジンオイルを5000kmごとにメーカー指定のものに交換し、年に1度はエアクリーナー交換、2年ごとにプラグを交換している程度。
気をつけていることは、エンジンが温まっていないうちは高回転まで回さないようにしていることくらい。
つまり、軽自動車であっても、エンジンは定期的に面倒さえみてあげれば「高速道路で壊れる」ようなヤワなものではないし、ある程度の高速道路での走行は愛車の健康状態を維持するのに欠かせないと思っているのだ。
ただし、車体が軽いので風にあおられて少し動揺したり、高回転でエンジンを回し続けることで燃費が悪化するなどのデメリットはある。
でも、街乗りばかりの運動不足な愛車をお持ちの方には、月に1度程度の高速道路での走行をぜひお薦めしたい。
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