第75回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「ある視点」部門に正式出品され、早川千絵監督がカメラドール特別表彰を授与された日本映画『PLAN 75』が、カンヌの興奮も冷めやらぬ絶好のタイミングで公開中です。
『PLAN 75』の舞台となるのは、少子高齢化がさらに進んだ日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行され、様々な物議を醸すも超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなっている……、そんな、誰もが想像できてしまうであろう近い将来の日本です。もし、この制度が現実となったとき、当事者である高齢者はどう受けとめるのでしょうか? そして若い世代は何を思い、どう動くのでしょうか?
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脚本も手がけた早川監督は「2000年代半ば以降、日本では自己責任という言葉が幅をきかせるようになり、社会的に弱い立場の人を叩く社会の空気が徐々に広がっていったように思います。そして2016年、障害者施設殺傷事件が起こりました。人の命を生産性で語り、社会の役に立たない人間は生きている価値がないとする考え方は、すでに社会に蔓延しており、この事件の犯人特有のものではないと感じました。政治家や著名人による差別的な発言も相次いで問題になっていましたし、人々の不寛容がこのまま加速していけば、<プラン75>のような制度が生まれ得るのではないかという危機感がありました」と振り返り、「そんな未来は迎えたくないという想いが、この映画を作る原動力となりました」と制作意図を明かしています。
物語の中心となる角谷ミチを演じるのは、9年ぶりの主演作となる倍賞千恵子。「最初はひどい話だと思ったが、ある選択をするミチに心惹かれ、出演を即決した」という倍賞さんは、セリフで多くを語るのではなく、目や手の動きだけで哀しみや恐れなどの感情を繊細に表現しています。そして若い世代の岡部ヒロムを『ヤクザと家族 The Family』(2021年)の磯村勇斗、成宮瑶子を『由宇子の天秤』(2021年)の河合優実が演じ、国民に<死>を推奨する職員たちの揺れ動く心を表現しています。
ヒロム役の磯村勇斗は『仮面ライダーゴースト』(2015年)への出演で注目を集めた若手実力派の筆頭。残念ながら『ゴースト』で演じた仮面ライダーネクロムは専用バイクに乗ることはなかったのですが、ドラマ『なぜ、東堂院聖也16歳は彼女が出来ないのか?』(2014年:名古屋テレビ)でヤンキー役を演じた際には、族車仕様のホンダCBX400Fが用意されたことをブログで報告していました。
現在30~50歳の方々の中には、老後への漠然とした不安を抱えている人も少なくないでしょう。2025年には国民の5人に1人が75歳以上になると言われる日本では、この映画に映し出される状況も絵空事と言い切れません。架空の制度を媒介に、「生きる」という究極のテーマを全世代に問いかける衝撃作『PLAN 75』は、2022年6月17日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開中です。
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みんなのコメント
健康寿命は平均寿命より低いし、75以上で連れ合い・兄弟姉妹・友人の状況は大きく変わる。そんな時期に「あと何年」と区切って人生を送るのは終活面からもプラスではないのか(もちろん気が変われば選択を伸ばせば良い)。
先輩友人諸氏の話を聞くと「親の自宅介護負担」は相当なもの。特に「認知は地獄」とも聞く。
還暦を過ぎ「自分が自分で無くなる不安」は一層付きまとう。意識も無く「機械に生かされる」のも嫌だ。
個人的には「自分が自分である間」に親族知人にお別れをして安らかに逝きたい。
様々な問題をクリアして「権利としての尊厳死制度」を望む。