11月4~5日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた2023スーパーGT第8戦。埼玉トヨペットGB GR Supra GTとmuta Racing GR86 GTの一騎打ちとなったGT300クラスのチャンピオン争いは、7位フィニッシュの埼玉トヨペットGB GR Supra GTに軍配が上がった。
一方のmuta Racing GR86 GTはポールポジションから9位に終わり、大逆転タイトル獲得はならなかった。「ペースが足りないまま、ずっと後ろを気にしてしまう展開になってしまいました」と語るのは、第1スティントを担当した平良響だ。
“1点”をもぎ取るべくポール獲得を果たしたmuta GR86。その布石は第7戦にあり【GT300予選あと読み】
「88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)がかなり速かったですし、予選日のようなパフォーマンスを出すことができませんでした」
変わりやすい天候のなかで行われた第8戦の決勝。平良はスタートからトップの座を守っていたものの、雨脚が強まりはじめた14周目の3コーナーで88号車に先行を許してしまう。振り返る平良の表情は重い。
「もちろんレース前からタイヤは無交換の予定だったので、タイヤをいじめない走りをしていたこともありますけど、88号車のほうが速くて抜かれてしまいました。抜かれた後も追いつける気配がなく、引き離されてしまったので申し訳ないなと思っています」
逆転タイトルのためにはポール・トゥ・“ウイン”が絶対条件のmuta Racing GR86 GTだったが、先頭の座を明け渡してしまった平良は24周を終えてピットイン。4日の予選で2戦連続ポールを獲得した堤優威にタイヤ無交換でステアリングを託す。
その堤は「僕たちは優勝するしかチャンピオンを獲る権利がなかったので(タイヤ無交換という)攻めた作戦を採りました。ただ、正直に言うとドライタイヤでのペースが他の上位勢よりも厳しかったです」とレースを振り返る。
muta Racing GR86 GTはピットストップを終えて3番手に後退。その後も順位を上げられないままフィニッシュが迫り、万事休すかと思われた。だがレース残り8周、一度は弱まった雨が再びコースに落ちてきたのだ。
雨はその後も徐々に強くなっていき、コースアウトやスピンするマシンも現れ始める。しかし、逆転チャンピオンには優勝するしかないmuta Racing GR86 GTにとって、この雨を利用しない手はなかった。チームは堤をピットに呼び戻し、ウエットタイヤに交換して最後の追い上げを目指した。
堤は「スリックタイヤで留まる選択肢もありましたけど、あの状況でトップを目指すには、他のチームとは違う作戦をしないといけませんでした。なので、ウエットタイヤに交換して一発逆転を狙いました」と語る。
また、加藤寛規監督は「最後の雨のコンディションでは“ギャンブル”に出ました。正直『これはいけるかも』と途中まで思っていましたけど、雨が止んだ瞬間ダメになってしまいました」と振り返る。
加藤監督の言葉どおり、ウエットタイヤに交換したmuta Racing GR86 GTのペースは速かった。しかし、無情にも雨が弱まったことに加え、追い上げ途中でのFCY導入によるタイムロス、さらに追い打ちをかけるように「タイヤが終わってしまった」ことで急激にペースダウン。最終的に9位フィニッシュでレースを終えた。
「本当に『勝ちたい』という想いでの判断でした。3番手で表彰台争いはしていましたけど、そうではなく、やっぱり僕たちはチャンピオンを獲りたい。結果的には獲れなかったですけど、そういった判断をすることができたことは、チーム全体として成長できたと思っています」と続ける加藤監督。
昨年はベテラン加藤をエースに、若手の堤をパートナーに起用していたmuta Racing GR86 GT。今年は若手の堤をエースに据え、パートナーには同じく若手の平良を起用し、チャンピオンこそ逃したもの、シーズン3回のポールポジションと表彰台、そしてランキング2位を獲得してみせた。
今年は監督に就任、450kmレースでは第3ドライバーとして堤と平良を支えたベテラン加藤は、ふたりについて「今年は毎戦のように新しいことを経験して、毎回次に繋がる成長をすることができたので、判断もだいぶ早くなりました」とシーズンを通しての進化を実感する。
「そういったところでのチームワークとしては、お互いのコメントで状況を判断してポールポジションを獲れるようになってきたので、かなり良いコンビになったのではないでしょうか」
そして堤と平良は揃って「今年はポールポジションは獲ることができていますし、チームとドライバーの速さも上がってきています」と言い、あとは「決勝でのレースペースと強さ」が必要と続ける。シーズン後半にみせた速さはGT300随一とも言える今季のmuta Racing GR86 GT。来季は今季達成することができなかった優勝と、チャンピオンへの「リベンジ」を誓った堤と平良の表情は、すでに次を見据えているように感じた。
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