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派生型SUV全盛の今なら…? 10年早かったスカイラインクロスオーバーがやった「過ち」とは

掲載 更新 20
派生型SUV全盛の今なら…? 10年早かったスカイラインクロスオーバーがやった「過ち」とは

 「ヤリスクロス」や「カローラクロス」、そして「ノートAUTECHクロスオーバー」など、派生型SUVがいま続々と登場している。ベースとなるモデルの車高をあげ、SUVとしての機能をもたせた派生型SUVは、SUV全盛の現代において効率のいいモデルであるが、この派生型SUVをいち早く実現したものの、このブームをみる前に去ってしまったモデルがある。「スカイラインクロスオーバー」だ。

 期待されつつも、当時日本市場ではユーザーに受け入れられなかった、スカイラインクロスオーバー。もし派生型SUV全盛である現代に登場していたら、ヒットすることができたのだろうか。

2022年春発売「日産+三菱の新型軽EV」は日本のクルマ社会を変えるか

文:吉川賢一
写真:NISSAN、INFINITI

[gallink]

「インフィニティEX」の日本向けモデル

 1957年に初代が登場し、以来60年以上にわたって販売された、日産「スカイライン」。この間「スカイライン」と冠して登場したモデルのほとんどが、セダンタイプ、もしくはクーペタイプ(※3代目スカイラインにはバンタイプもあったが)で販売されてきた。そのなかで唯一、SUVタイプで販売されたのが、スカイラインクロスオーバー(2009~2016年)だ。

 スカイラインクロスオーバーはもともと、日産の北米向け高級車チャンネル「インフィニティ」のクロスオーバーSUV「EX35」として、2007年に誕生したモデル。プラットフォームなどのコンポーネントは、ほぼG35(日本名:V36型スカイライン)と共用しており、製造も日産栃木工場で、G35と同じラインの上を流れていた。

 3.7LのV6エンジンと7速AT、駆動方式はFRもしくは4WDを組み合わせ、「G35のハンドリングと乗り心地の良さを持つ小型プレミアムSUV」と位置づけられていた。

 EX35はその後、インフィニティブランドの呼称統一を受け、2014年モデルから「QX50」と名称変更し、販売は2017年まで継続された。2018年のフルモデルチェンジで2代目「QX50」となり、「FFベースのミドルサイズSUV」へと生まれ変わっている。2.0リットルVCRターボエンジンを積んだこの2代目QX50はいま、インフィニティの稼ぎ頭だ。

 そんなEX35を「スカイラインクロスオーバー」として、2009年に日本に導入。登場当時、スタイリングやスカイライン譲りの走行性能に関して、非常に評価が高かったスカイラインクロスオーバーだが、SUVという割には後席や荷室が狭く、日本には燃費の悪い3.5Lエンジン仕様しか導入されず、価格も2WDが420万~472.5万円、4WDが447.3万~499.8万円と非常に高額。

 せめて中国で出していた2.5リットルのVQ25HR型エンジン仕様(しかもホイールベースを80mm伸ばしたロングホイールベース仕様!!)でもあれば、違った結果となっていたかもしれないが、最後まで3.7Lエンジン一本で押し、2016年にひっそりと販売を終了した。

後輪駆動のクロスオーバーSUVとして登場したスカイラインクロスオーバー。スカイライン譲りのシャープなハンドリングと乗り心地の良さは、非常に好評であった

派生型SUVとして、やってはいけない過ちを犯した

 通常、ベースの車両をSUVタイプにすると、ベース車よりも価格はアップする。それは、SUVらしさを表現するためのアイテムが増えるためだ。力強さを表す大径タイヤや、SUVらしく見せる専用バンパー(スキッドプレート付など)、フェンダーモールの追加、ルーフモールの追加、アイポイントを上げるために前席シート高をかさ上げする、などだ。

 ただ、インテリアの変更は最小限に抑え(コストアップしない)、ベース車のアイテムを極力利用。もちろん化粧直しはなされているが、別世界のモノをつくろうとはしない。

 しかしながら、スカイラインクロスオーバーの場合、インテリアの素材にもこだわって、プレミアムを強調した路線へと色気を出してしまった。レッドレザーのステッチ多めのインテリアなどがそうだ。またプロポーションを修正するために、ホイールベースを短縮化したりもした(セダンは2850mmのところ2800mmに修正)。

 そこまでしたのには、当時好調であった北米インフィニティの「イケイケラグジュアリー路線」が影響していたと考えられる。その結果、スカイラインクロスオーバーは、ベース車のスカイラインとの価格差が、約50万円(セダン370タイプS 369万円)にもなってしまった。

 ちなみに、いま絶賛大ヒット中のトヨタ「ヤリスクロス」は24万円差(ガソリンZ-2WD 税込221万円、ヤリスガソリンZ-2WDは税込197万円)、先日日本に登場し話題沸騰中のトヨタ「カローラクロス」は、約20万円差(カローラツーリングガソリンS-2WD 221万円、カローラクロスS-2WD 240万円)。

 「派生型SUV」としては、購入する顧客のターゲット層が変わらない価格差に抑えなければ、ヒットさせることは難しい。スカイラインクロスオーバーは、高額であったことに加えて、スカイラインクラスを購入検討する顧客のターゲット層が、ちょっと頑張れば手が届く価格差におさまっていなかったことも、人気が振るわなかった要因であろう。

9月に登場したカローラクロスは、カローラツーリング(4495×1745×1460)と全長はほぼ同じで、全幅が80mm広く、背が160mm高い

ぜひ「GT-RのSUV」を!!

 SUVが全盛のいま、ぜひ日産に実現してほしい派生SUVがある。それは「GT-R」のSUVだ。

 かつて、インフィニティの「FX45(S50型:2003年~)」が、「GT-RのSUV版」と呼ばれていたことを覚えている方もいるだろう。当時の高級SUV、BMW X5やポルシェカイエン、メルセデスMLなどは、どれも背が高く、オフロード走行にも対応したボディスタイルであったのに対し、FXはオンロード走行を主体とし、「バイオニックチーター」というキャッチコピーの通り、ダイナミックで存在感のあるエクステリアで登場した。

インフィニティのクロスオーバーSUV「FX45」は2003年に登場。2009年には、2代目FXへと交代した

 特に、ライバルSUVを唸らせたのが、そのハンドリング性能だ。FX45のエンジンは324ps/454Nmを発揮する4.5LのV8 NAエンジン、FR-LプラットフォームはV35型スカイラインと共用で、後輪駆動ベースの4WD。スモールキャビンに大径19インチタイヤを装着し、4WDシステムはR34スカイラインGT-Rにも搭載された、ATESSA E-TSを搭載。乗り心地はガチガチであったが、「SUVのGT-R」と呼ばれるにふさわしいハンドリングであったそうだ。

 ランボルギーニがウルスを、マセラッティがレヴァンテを、ポルシェがカイエンを、アルファロメオがステルヴィオを、ジャガーがF-PACEを出している時代だ。イメージリーダーとして、初代FXをオマージュするスーパーSUVを、R35 GT-Rをベースにつくってみてはどうだろうか。

 かつては10車種以上もラインアップしていた北米インフィニティも、今では6車種のみと、寂しい限りだ。新車を次々と投入し、いま勢いのある日産だが、このようなファンを熱くさせる「遊び心」も見せてほしい、と思う。

[gallink]

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みんなのコメント

20件
  • 国内では今出したって売れない。
    排気量2.5Lでそこそこか?ぐらい。
    あの頃からのスカイラインのデザインは日本人好みではなく北米向け。
    ろくにリサーチせず国内投入した日産の経営陣がどうかしてる。
    だから日産はいつも的外れな車ばかり出す。
  • 日産の過ちって、言い出すとキリがないような?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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