1台目 トヨタC+Pod(2人乗り)
執筆:Hajime Aida(会田肇)
<span>【画像】トヨタC+Pod、C+walk T【細部まで見る】 全36枚</span>
撮影:Keisuke Maeda(前田恵介)
編集:Tetsu Tokunaga(徳永徹)
トヨタが昨年12月より自治体などを対象に限定販売してきた超小型EV「C+Pod(シーポッド)」が、いよいよ2022年より個人向けにも販売開始される。
このクルマは、2021年9月の道路運送車両法の改正によって新設された「超小型モビリティ(型式指定車)」の適合第1号として誕生した。
超小型モビリティの型式指定車は、ボディサイズが全長2.5m以下、全幅1.3m以下と、これまでの原付ミニカーと同サイズと定められている。
型式指定車となることで衝突安全試験の破損試験が課せられたほか、エアバッグ、ABS、VSCなど軽自動車と同等の安全性能も義務付けられた。一方で最高速度は60km/hと制限され、高速道路は走行できない。
こうした枠内で開発されたC+podは、その特性を活かして“ご近所グルマ”として十分な性能を発揮できるように設計された。
車体寸法は全長2490×全幅1290×全高1550mm。この枠内で衝突安全性能を確保するために前方に余裕を持たせ、実用的なカーゴスペースを確保した結果、定員は2名となった。
C+Podを前にすると、全高は軽自動車に近いが、全長/全幅は見た目にもかなり小さく感じる。
しかし、運転席に座ると外観で見た印象よりも狭苦しさはない。シートは十分な前後移動調節ができる上に、ハンドルがチルト&テレスコピックに対応したことで幅広い人に適応可能となっている。
大柄な人が2人乗車すれば肩が触れる可能性はあるが、街乗りを中心とした走行ならとくに気になることはないだろう。
一方で、このサイズでの展開だけに割り切りは随所に見られる。
普通と違う? ないモノ/あるモノ
たとえばウインドウの開閉は手動で上下するタイプで、これは側面衝突の安全基準を満たすために採られた措置。
冷房はクーラーで対応するものの、暖房はシートヒーターで対応するのみ(※両装備ともGグレードのみ)となった。
ただ、近距離移動を重視したコンセプトを踏まえれば、この方が即冷/即暖のメリットがあるのかもしれない。
操作系は?
ダッシュボード中央部にスイッチ類が配置され、走るためのボタンはその右列に上から前進(D)、ニュートラル(N)、後退(R)の順に並ぶ。
EVの多くにあるパーキング(P)はなく、駐車ブレーキは機械式の足踏みタイプとなる。スタートはイグニッションをSTARTに入れて「D」に切り替え、アクセルを踏めばスルスルッと動き出す。
一般的なAT車にある「クリープ」はなく、アクセルペダルの踏み込み量に応じて前進していく。多くのEVのようなトルクフルな動きは見せず、走りは比較的ゆっくりだ。
強めに踏み込んでも40km/hあたりからは加速が緩やかになるので、誰が乗っても速度調整はしやすそう。パワーステアリングは装備されていないが、重くて回せないほどではなく、最小回転半径を3.9mとしたことで取り回しはかなり良い。
ただ、ブレーキによる回生システムは備えるものの、EVらしい回生効果はそれほど強くないため、アクセルを離しても特別な減速Gはほとんど感じなかった。
中国“45万円EV”の存在
個人的にはストップ&ゴーが多い市街地での利用がメインとなるなら、回生を利用した加減速をもっと積極的に活用した方が良かったのではないかと考える。
搭載したリチウムイオンバッテリーの容量は9.06kWhで、フル充電した航続距離は150km(WLTCモード)。
充電はAC200V/100Vに対応するが、普通充電のみの対応となり、所要時間はAC200Vで5時間、AC100Vでは16時間とされている。
加えてC+podは給電機能(合計1500W)を備えており、いざという時の電源としても役立つ。
私はこのC+podに試乗する前に、“45万円EV”で話題になった中国の「宏光ミニEV(以下、宏光))」に乗る機会を得た。
宏光はアクセルを踏み込むとスムーズに速度を上げていき、その加速力はC+podよりも明らかに上。走行ノイズもかなり抑えられていた。
最高速もスペック上で100km/hを謳っており、高速走行時の安定性まではわからなかったが、少なくとも市街地の走行では宏光に軍配が上がる印象だ。
一方で宏光はABSは装備されていたが、それ以外の安全性能はほぼゼロの状態。エアバッグも装備されないし、ボディの衝突性能も明らかにされていない。
だからこそ低価格を実現できたとも言えるが、一方でC+Podの価格は「X」が165万円、「G」が171.6万円で、補助金22万円があるとはいえ、それでも高めに感じるのは私だけではないだろう。
2台目 C+walk T(1人用立ち乗り)
続いて、トヨタが歩行領域での新たなモビリティとして誕生させた「C+walk T(シーウォークティー)」についても、レポートしておきたい。
このモデルは、2017年に開催された東京モーターショーで「TOYOTA Concept-愛i WALK」として公開されたものをベースに開発。立ったままの姿勢で乗車するラスト・ワンマイルの3輪BEVとしている。
ボディサイズは全長700mm、全幅450mm、全高1210mmで、前1輪、後ろ2輪の3輪EVとなっており、走行時は前輪のインホイールモーターで駆動する。
モーターの最高出力は0.35kWで、ステップ内に総電力量0.27kWhの脱着可能なリチウムイオンバッテリーを搭載。
充電は100Vで行い、約2.5時間で満充電となる。航続距離は14km。
ただ、現時点では日本の公道を走行することはできず、限られたエリアで走行するしかないが、シニアカーと同等の扱いで公道を走れる関連法規の改正の動きも見られるという。
C+walk Tに乗ってみると、これがすごく楽しい。
電動キックボードのような不安定さはまったくなく、乗り始めてすぐスムーズに走ることができたのだ。
速度設定は2、3、4、5、6、10km/hの6段階から選べ、設定するとその速度以上には上がらず安心して走れる。
回生での減速もそこそこあって、アクセルレバーを離せば即座に減速するのもいい。さらに専用キーで最高速度10km/hが可能となる“熟練者モード”に設定すると、マラソン程度の速度で移動できるようになり、この速度は想像していた以上に爽快だった。
旋回/段差/操作 こんな配慮も
前輪のほぼ真上にステアリングバーがあることで、走行中の安定感は抜群。
設定速度にかかわらず、旋回中はその角度に応じて自動的に減速し、これによって躊躇なく曲がれる安心感もあった。
また、操作系が左右対称となっていてとても分かりやすい。これは誰でも迷わずに扱えることもあるが、ステアリングを切った際に身体に近い方の操作がしにくくなることを避けるための措置なのだ。
それにこれは、左右どちらかの腕/手に障害を持つ人にも配慮した設計ともなっているという。
試乗会場は平地なので試すことはできなかったが、上り坂では最大傾斜6°まで対応でき、下り坂では自動的に速度を抑えて走行する機能も備えていた。
また、25mmまでの段差の乗り越えも可能で、横断歩道から歩道への乗り入れも十分対応できるそうだ。
また、オプションのセーフティサポートを装着すると、前方にある障害物を検知したときは、警告音とメーター表示で警告。同時に2km/hまで減速する。
自動車とは違って停止までしないのは転倒の危険を未然に防止するためなのだという。
では、座った形でのスタイルはできなかったのか。
どんな所にニーズ? 課題は?
着座タイプについてトヨタZEVファクトリーZEV B&D Lab主幹の山田雅司氏は、「すでに歩行困難者向けに座って歩道を走行するシニアカーは存在するが、C+walk Tは立って健康を維持しながら移動することを目的に開発された」と話す。
加えて、「立ち乗りなら乗り物として混雑時でも邪魔になりにくいというメリットもある」(山田氏)。
とはいえ、東京モーターショーで公開された通り、着座するタイプも開発中で、こちらは「シニアカーのカテゴリーも視野に入れている」(山田氏)とのことだった。
気になるC+walk Tの価格は、34万1000円(セーフティサポート付:35万4200円)。
現時点での需要はイベント会社や大規模施設などが対象で、個人向けにはシニアカー並みの移動が許可され、価格も大幅に下がらないと厳しそうではある。
とはいえ、これをステップに新たな乗り物として裾野が広がっていくことを期待したい。
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みんなのコメント
来年発売の日産の軽EVの前には商品的な魅力はみじんも無い。狭苦しくても4シータ-指向の国民性。
どうしても150万が出せない人はエンジン車の軽か中古コンパクトカーを買うだろうし、出せる人は50万円差を看過して軽EVにするだろう。
災害時の非常用電源として使うなら、チャデモ装備でV2Hに接続できないと200V機器が動かせないし、一般家庭は1-2㎾h程度を使うから20㎾hあっても一昼夜程度。
せいぜい8㎾h程度がどの程度ではスマホか湯沸かし程度。
この車を市場が求めていると何故思ったのか、経営の量産許可が何故出たのがそこに興味がある。
この程度のスペックで普及させるなら100万を切らないと。補助金使って60万くらいなら、複数事務所を持つ企業の連絡用や新聞配達用には使えるだろう。