■“侘び寂び”さえ感じさせる内外装は「シンプルの極み」!
バブル絶頂期の1989年。市販車のみならず東京モーターショーのコンセプトカーにも注目すべきクルマが多数展示されました。
【画像】超カッコいい! これが日産の「“4人乗り”超高級セダン」です! 画像で見る(30枚以上)
なかでも日産のコンセプトカー「NEO-X」は、近未来の大型高級セダン像を技術力で示すモデルとして記憶に残る1台です。
ユーノス(マツダ)「ロードスター」、日産「スカイラインGT-R」(BNR32型)、トヨタ「セルシオ」(北米名:レクサス「LS」)など、世界の自動車メーカーに多大な影響を与え、後世に名を残す名車が数多く誕生した1989年は、「ビンテージイヤー」とも呼ばれています。
そんな同年に開催された第28回「東京モーターショー」も百花繚乱。従来の晴海・東京国際見本市会場から千葉市美浜区の幕張メッセに移り、広くなった会場内には日産「フィガロ」、ホンダ「NSX」、スバル「アルシオーネSVX」、スズキ「カプチーノ」、マツダ「AZ550スポーツ」(のちのオートザム「AZ-1」)など、後年に市販化された参考出品車をはじめ、スバルの12気筒エンジンを積んだ国産スーパースポーツカーのジオット「キャスピタ」(こちらも市販を前提とした参考出品)など、注目車種が多数展示されました。
そして東京モーターショーの花形といえば、やはりコンセプトカーです。トヨタは「4500GT」、三菱は「HSR-II」など、各メーカーはハイテク装備の未来的なコンセプトカーを持ち込みました。
一方日産は、ハイテク満載の大型セダン「NEO-X」をブースのセンターに展示して、技術力の高さをアピールしました。
NEO-Xは、日産が考える未来に向けた大型高級セダンのプレゼンテーションモデルで、コンセプトは「人に優しい知的高性能セダン」でした。
全長4980mm×全幅1870mm×全高1350mm、ホイールベース2880mmのサイズは、当時の国産4ドアセダンとしては大柄。背の高い市販車が多い現在では、高級セダンで全高約1.3mという数値に驚く人も多いことでしょう。
高級車といえば、メッキを多用して派手なグリルを備えるのは一般的な手法ですが、NEO-Xではそれらを一切排除。スリット状のグリルと小ぶりな灯火類を置いています。
フォルムや全体のディティールも実にシンプルで、丸いフロントからリアに向かってなだらかに下がるボディは側面に一切の抑揚がなく、言うならば「ツルツル」。
その上には、後席頭上の空間を確保しつつ流麗なラインで形成されたキャビンがちょこんと載っています。
高さを抑えたノッチ部は長くフラットで、小さな縦型ウインカーと横一文字のテールライトを埋め込んだテールエンドも、驚くほどあっさりとしています。
シンプルさを徹底するために、ドアハンドルは電動格納式を採用。ワイパーアームの基部さえも上にせりあがる構造でした。
「単なる機能主義を超えた日本人の美意識と優しさを表現したデザイン」をテーマにしている通り、要素を削ぎ落としたような質素なデザインでありながら、上質感や高級感、侘び寂びさえも感じさせる気品を醸出。海外からも高い評価を受けました。
日産では、北米向け高級サブブランド「インフィニティ」で発売する最上級モデル「Q45」の日本版「日本名インフィニティQ45」をほぼ同時期に発表していますが、Q45ではフロントにグリルが一切なく、七宝焼のエンブレムを備えて話題となりました。
さらにこのQ45の元となった、1987年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「CUE-X」も、グリルレスでシンプルな外観を特徴としていました。
Q45は「ジャパンオリジナル」をうたっていましたが、NEO-Xからもそれを感じることができました。
■走りも楽しいハイテク高級セダンに来場者も大興奮
NEO-Xは、内装も見所がいっぱいでした。
エクステリア同様に要素を少なくしたデザインで、後席を左右独立タイプとしたため定員は4名。前後シートは同じような形状とされ、一体感を生み出しています。
インテリアは暖色系クリーム色基調のカラーリング。外装に応じたかのようにシンプルなダッシュボードも同じ色調です。
情報の表示・操作系も最小限で、ドライバー前のデジタルメーターと可動式のセンターディスプレイが見られるのみ。カーナビや各部設定・調整・確認の機能を持つセンターディスプレイはブラウン管(!)というのが時代を感じさせますが、当時では最先端のタッチ式操作を可能としていました。
オートマチックトランスミッションのシフトノブは、ステアリングポスト左側に小さく設置。液晶ガラスでできたルーフは、調光式で透過率制御することも可能でした。これらも、現在の市販車で見られる装備です。
NEO-Xのメカニズムは、「技術の日産」の最先端技術で構成されました。
エンジンはインフィニティQ45用のV8「VH45DE」型を選択。組み合わせるトランスミッションは5速オートマチックで、機械的な機構を用いないバイワイヤ式を採用していました。
最高出力280psのパワーは、後輪に電子制御LSDを組み込んだ電子制御式トルクスプリット4WDで路面に伝えられます。
サスペンションにはアクティブサスペンションを、操舵系には4WSであるアクティブステアリングを装備しており、これらパワートレーン、サスペンション、そしてステアリング・ブレーキなどをネットワーク化した「統合制御システム」を搭載したNEO-Xは、快適性・乗り心地と優れたハンドリングを実現したとうたわれていました。
ハイテク装備はこれだけにとどまりません。ドアミラーに接近するクルマが来ることを知らせる側後方警戒レーダー、電動パーキングブレーキ、ヘッドアップディスプレイなど、現代のクルマにも通じる装備が盛り込まれていました。
インフィニティQ45の進化版ともいえたNEO-Xですが、コンセプトカーの域を出ぬまま市販化はされませんでした。
しかし開発された技術はその後磨かれて現在に至っているほか、デザイン面では、後部に向かって優雅に落ちてゆくサイドビューが2代目「シーマ」に受け継がれているようにも思います。
※ ※ ※
日本の文化や価値が世界的に浸透し、「日本らしさ」が理解されつつある現代だからこそ、NEO-Xのように華美さを一切排除した、人々の心に訴えかけてくるような高級セダンを望んでいる人も多いのではないでしょうか。
消滅して久しい日産の大型高級車がもし復活する際には、NEO-Xが見せた新しい価値が盛り込まれるかもしれません。(遠藤イヅル)
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