SUBARUの高出力タイプの水平対向4気筒エンジン「EJ20型」が、ついに2020年春、生産を終了する。EJ20型エンジンを搭載する「WRX STI EJ20 ファイナルエディション」(限定555台)は2019年末に受注が締め切られ、2020年春までに生産を終了する。そのため、もはやEJ20型エンジンを搭載した車両は存在しなくなった。
EJ20型エンジンは1989年に初代レガシィ(BC/BF型)に搭載されてデビューし、以後31年間もの間、高性能・高出力エンジンとして存在感を示してきたが、ついにその長い歴史の幕が下りた。そこでEJ20型エンジンの歴史をたどりながら、改めてどんなエンジンなのかを検証してみた。
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世界速度記録への挑戦
全くゼロから新規開発されたEJ型エンジン・シリーズは1989年に初代レガシィ(BC/BF型)に搭載されてデビューを飾った。初代レガシィの登場の背景には、経営的に危機を迎えていた当時の富士重工にとって、今後生き残りができるかどうかを賭けた戦略的なニューモデルだった。これまでのレオーネ・シリーズの遺産を捨て、ボディ、シャシー、エンジンなど、すべてをゼロから開発したモデルだった。
また、ゼロから開発するからには世界で通用し、競合する同一クラスでナンバーワンの性能を実現する必要があり「Best in Class」という高い目標が掲げられた。そして、その性能を達成するために、世界各地の道路で熟成テストを行ない、総仕上げとして発売直前に19日間をかけてアメリカ・アリゾナ州フェニックスで、レガシィ・セダンRSが、10万km耐久走行で平均速度223.345km/hという世界速度記録を達成している。
この初代レガシィ用のEJ型は、従来の水平対向4気筒EA型シリーズとは決別し、構想段階では直列4気筒、V型4気筒なども検討されていたという。最終的に縦置きのエンジン・レイアウトでのパワートレーンのパッケージングに優位性がある、ということで水平対向4気筒エンジンに絞り込まれ、新規開発されることになった経緯がある。
それまでのEA型とは
従来型の水平対向4気筒・EA型シリーズは、当初はスバル1000用のエンジンとして1000cc(EA52型)からスタートし、最終的にボアを拡大しながらレオーネ1800(EA82型)まで28年間使用されていた。
EA型は、水平対向エンジンのあるべき姿を極限まで追求したユニットと言えるだろう。オール・アルミ製、クランクシャフトは3ベアリング、そしてクランクシャフトと並行する中央配置のカムシャフト駆動によるOHV(後期にはSOHCも登場)/2バルブにバスタブ型燃焼室とオーソドックスな形式ながら、等長吸気マニホールドを採用し、超軽量・コンパクトで、7000rpmまで軽々と吹け上がるエンジンになっていた。
このEA型エンジンの登場当時、他社のエンジンはすべて鋳鉄ブロックであり、オール・アルミのEA52型はそれらのエンジンの2/3以下の重量と軽量だった。さらに3ベアリング構造により前後長も極限まで短縮され、縦置きFF駆動用として理想的なエンジンであったのだ。
この傑出したエンジンが偉大だっただけに、その後継エンジンの開発が遅れたともいえるかもしれない。
水平対向4気筒エンジンの優位性
なぜSUBARUは水平対向というレイアウトのエンジンを選択したのか。その第一の理由は、スバル1000で、エンジン/トランスミッションを縦置きにしたFF駆動方式を採用したことだ。直列4気筒エンジンを縦置きにしたFF駆動方式もかつては存在しているが、縦置きエンジン/トランスミッションのFF駆動では水平対向エンジンが圧倒的に有利になる。
なぜなら水平対向エンジンの前後長は直4に比べ2.5気筒分の長さで、圧倒的に短くでき、レイアウト的にも慣性モーメントの点でも有利となる。車両の前後荷重配分、つまりコーナリング中の慣性モーメントは、現在普及している横置き直4エンジン/横置きトランスミッションが前輪車軸の前方に配置されるのに対し、水平対向エンジンの縦置きレイアウトではトランスミッションは前車軸より後方のキャビン内にレイアウトされ、前後荷重配分が適正化され、慣性モーメントもより小さくなるからだ。
さらに縦置きエンジンレイアウトのFF駆動では、ドライブシャフトが左右等長にできることもメリットだ。直4エンジンの横置きレイアウトの場合は不等長になるので、トルクステア対策が必要になってくる。
このようにクルマの本質的な要素であるコンポーネンツレイアウトの点で、FFにおける水平対向エンジンの縦置きレイアウトが有利なのだ。この基本レイアウトを前提にしてスバルのシンメトリカルAWDが生み出され、3代目レガシィ以降は全モデルがフルタイムAWDというレイアウトが定着している。
また、水平対向エンジンの縦置きレイアウトは衝突安全性でも有利な点がある。直4エンジンは縦置きでも横置きでも、衝突時に大きく重いブロックとなるが、水平対向エンジンの場合は、後輪駆動用プロペラシャフトを衝突の衝撃で切断し、トランスミッションの位置を下げることでエンジン後部からクルマのフロア下に潜り込ませることができる。これにより全面衝突、オフセット衝突で衝撃のエネルギー吸収性を高めることができるのだ。
構造上でも有利な水平対向4気筒
水平対向4気筒エンジンは、こうした車両レイアウトにおける優位点だけではなく、エンジン本体が持つ特長にもある。それはクランクシャフト位相角が180度で、左右の気筒のピストンとコネクティングロッドが左右対称で運動するため、レシプロ運動で発生する振動を打ち消し合い、1次振動はもちろん、直列4気筒エンジンで問題となる2次振動が発生しないのだ。だから水平対向6気筒エンジンは完全バランスとなるが、水平対向4気筒ではわずかな偶力(回転方向の)振動が発生するものの、これはエンジンマウントやクランクシャフト・ダンパーで解決することができるレベルなのだ。
さらに水平対向エンジンは左右に分割されたシリンダーが、クランクシャフトを挟み込む形で締結され、クランクシャフトの保持剛性が高いことも特長となる。直列エンジンの場合は、クランクシャフトは気筒別のベアリングキャップ、またはベアリングキャップを連結した、はしご型フレームで抑え込む必要があり、剛性では不利なのだ。
この他に、水平対向エンジンは直4エンジンより低重心であり、吸気マニホールドの等長化も実現している。なお排気マニホールドは、点火順序が右1-3-左2-4のため排気マニホールドを等長化するためには前方・左右2気筒、後方・左右2気筒を集合させる必要がある。初代スバル1000で等長排気が採用されていたが、それ以後は右気筒、左気筒を集合させる不等長排気マニホールドとしていた。しかし2002年以降は排気脈動効果が利用できる等長・等爆マニホールドへと変更されている。
SUBARUはこうした水平対向4気筒の優位性を活用し、この後WRC3連覇など数々の偉業を達成するEJ20型の開発に着手する。そして現在も国内スーバーGT300クラスのBRZにも、ニュルブルクリンクチャレンジのWRXにも、改良に改良を重ねたEJ20型は現役レースエンジンとして活躍している。<編集部:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
<第2章へつづく>
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フロントはストラットのみの採用となるということか。