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未来への大いなる可能性と課題──新型スバル トレイルシーカーET-HS試乗記

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未来への大いなる可能性と課題──新型スバル トレイルシーカーET-HS試乗記

スバルの新型「トレイルシーカーET-HS」が、ついに発売された! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが公道での印象をリポートする。

新型スバル トレイルシーカーET-HSの特徴

レガシィアウトバックユーザーも納得か──新型スバル トレイルシーカーET-HS試乗記

1.ナチュラルな加速フィール2.乗員を疲れさせない乗り心地3.総評1.ナチュラルな加速フィール

(前のページから続く)静粛性に関しては、BEVの恩恵を享受している。

クロスオーバーSUVは車高が高く、空気抵抗を受けやすいパッケージングであるものの、吸音材や遮音材が効果的に配置されているため、街乗りから高速巡航にいたるまで車内は静かだ。

駆動用バッテリーは総電圧391V、容量74.7kWのリチウムイオン電池を搭載し、20インチホイール装着車の一充電走行距離はWLTCモードで627kmと公表されている。今回の試乗開始時、メーターのバッテリー残量は100%の満充電状態で航続可能距離510kmを表示していた。実質的にはカタログスペックの約8割程度が実用的な目安となるが、これだけの距離を担保していれば、ロングドライブにおける電欠の不安は軽減されるはず。低温時の急速充電速度を最適化するバッテリープレコンディショニング機能の採用も含め、実用BEVとしての完成度は高い。

走行を開始して真っ先に良いなぁと思ったのは、ナチュラルな加速フィールである。BEVにありがちな、アクセルを踏んだ瞬間に唐突にトルクが立ち上がるような不自然さは注意深く抑え込まれており、アクセル開度が20~30%程度の日常域においては、まるでマルチシリンダーの内燃機関を運転しているかのような滑らかさを見せる。床面に配置されたアクセルペダルがオルガン式であることも、ドライバーが微細なコントロールをしやすい環境作りに寄与しており、コストを惜しまず走りの質感を追求しようとする設計思想が伝わってきた。

一方で、高速道路の合流や追い越し時にドライブモードを「パワー」へと切り替えると、ツインモーターの本領が発揮。フロントとリヤにそれぞれ最高出力167kW、最大トルク268Nmを発揮する高出力モーターを組み合わせたAWDシステムは、システム最大出力280kWに達し、アクセルを深く踏み込めば巨体が一瞬で弾け飛ぶような加速を披露する。

この有り余るパワーを支えるのが、スバルが長年培ってきた常時全輪駆動の技術と、緻密なトルクベクタリング制御。高めの速度域でコーナリングを試みても、車高のあるSUVであることを忘れさせるほどに、姿勢を乱すことなく狙ったラインを綺麗にトレースしていく。ステアリングに対する挙動の遅れがなく、常に4輪が路面を捉え続けている安心感は高い。

もっとも日常の都市部での移動であれば、基本的には「ノーマル」モード、あるいは「エコ」モードを選択しておけば過不足はなく、むしろパワーモードは日本の公道においては過剰とも思えるほどのスペックである。さらに、今回は試す機会がなかったものの、悪路走破性を高める「X-MODE」も標準装備されており、いざという時の安心感は競合する他のBEVに対するアドバンテージとなるだろう。

2.乗員を疲れさせない乗り心地

乗り心地の評価については、わずかに足回りの硬さが硬質に感じられる場面もある。もっとも、欧州の高級セダンなどが採用するエアサスペンションがもたらす浮遊感と比較すればの話で、コンベンショナルなスプリングによる接地感の強さが、人によっては引き締まった硬さと捉えられるかもしれない。

とはいえ、不快な突き上げやロードノイズの侵入は抑え込まれており、適度な路面情報を伝えつつも乗員を疲れさせない、現代的なグランドツーリング性能を有している。

高速道路での渋滞に遭遇した際、予防安全パッケージに組み込まれている運転支援機能「アドバンスドドライブ」を試すことができた。これはトヨタの高度な技術をベースにしたハンズオフ機能であり、40km/h以下の渋滞時においてステアリングから手を離した状態での走行が可能となる。

前走車に対する追従や車線維持の挙動は極めて緻密かつスムーズであり、ギクシャクした動きは皆無。こうした最先端の知能化技術が違和感なく溶け込んでいる様は、スバルとトヨタの2大メーカーがタッグを組んで開発に挑んだことの成果と言える。

3.総評

新型トレイルシーカーは高い完成度を誇る次世代のプレミアムクロスオーバーとして仕上がっているものの、試乗後に考えてしまったのは、このクルマにおける「スバルらしさ」だ。

かつてのスバル車といえば、独自の水平対向エンジンがもたらす低重心な感覚や、機械式AWDが誇る泥臭いまでの骨太な走りの味が象徴であった。

しかし、完全に電動化されたトレイルシーカーにおいては、エンジン音が消え去った静寂の中で、すべてが緻密な電子制御によって洗練されている。その走りは非の打ち所がなく優等生的であり、良くも悪くも、かつてのスバル車が持っていた独特の「癖」や熱量が薄れているように感じられる。スムーズな加減速や緻密な先進運転支援の挙動からは、どちらかといえばトヨタ的な洗練されたクオリティが色濃く漂ってくる。

では、トレイルシーカーにおけるスバルらしさは消失してしまったのだろうか? 決してそうではないと思う。

スバルらしさとは、単に特定のエンジン形式や駆動方式を指すのではなく、どのような環境であってもドライバーが「意のままに操れること」と、乗員全員が「安心して移動できること」といった、愚直なまでの安全思想と走りの哲学にこそ本質がある。

トレイルシーカーの高い直進安定性や、悪路走破性を担保するAWD制御、そしてオルガン式ペダルや無駄を削ぎ落とした液晶メーターに見られるドライバー第一の設計思想は、まさにその哲学の具現化だ。

水平対向エンジン搭載車ではないBEVにおいて、走りの質感と絶対的な安心感の目に見えない価値をどのように表現し、競合他社との個性の違いをどう演出していくか……これこそが、スバルが今後BEVを展開していく上での重要な模索であり、トレイルシーカーはその実力をもって、未来への大いなる可能性と課題の双方を提示した1台だった。

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文:GQ JAPAN 稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント

2件
  • やま
    トレイルシーカーという車名は何かイマイチに
    感じるけど英語圏では格好良く聞こえるのかな?
  • とっつぁん
    フォレスタープレミアムが欲しかったけど、人気すぎて納期遅いのと、トレイルシーカーの補助金129+40万のコスパ、ランニングコスト、ホルムズ海峡問題を鑑みトレシーにしました。決め手は試乗でした。4/17注文で6月末納車。現在ディーラー入庫済み、スリーラスター行い、日のいい日に納車です。名前が〜とかアイサイトガ〜とか意見見る度に微笑しています。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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