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マクラーレンF1 GTR(1) 老舗百貨店がスポンサーのル・マン・マシン 史上最大級の番狂わせ

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マクラーレンF1 GTR(1) 老舗百貨店がスポンサーのル・マン・マシン 史上最大級の番狂わせ

ロンドンの老舗百貨店、ハロッズがスポンサーに

ハロッズといえば、英国ロンドンの老舗百貨店。そんな上流階級の御用達が、ル・マン・マシンのスポンサーになった時があった。イエローに塗られた51号車のマクラーレンF1 GTRは、1995年の耐久レースで、史上最大級の番狂わせを披露した。

【画像】老舗百貨店がスポンサー マクラーレンF1 GTR P1とセナのGTR 1995年の優勝車59番も 全102枚

伝説的ドライバー、デレック・ベル氏を招聘したハロッズのF1 GTRは、10時間に渡ってレースをリードした。しかし、ゴールを目前にクラッチが故障。最終的には3位で完走となったが、初参戦としては見事な結果だったことは間違いない。

ハロッズは、どんな経緯で世界屈指の耐久レースへ参入したのか。初挑戦のマクラーレンが、レースをリードできた要因は何だったのか。優勝車の逸話も含めて、今回は振り返ってみたいと思う。

低調な販売を上向かせるためのレース出場

この物語りの始まりは、ゴードン・マレー氏の傑作スーパーカーを売るため、ロンドン・ハイドパークに面した通りに、マクラーレンがショールームを開いたことにある。1994年当時、世界的に景気は停滞し、F1といえども販売は低調だった。

レースに参戦する計画はないと、マレーは当初主張していた。しかし、同社で複合素材部門の責任者を務めていたジェフ・ハゼル氏は、必然の結果だったと振り返る。「販売は完全に停滞していました」

「1994年に執行部での会議が開かれ、販売向上の方策を話し合いました。提案されたアイデアは少なかったのですが、レースに出場してはどうかと、自分は発言したんです」

これは、レーシングドライバーのレイ・ベルム氏とトーマス・ブッシャー氏が、マクラーレンを率いたロン・デニス氏へ、レーシングカー仕様の製作を願い出ていた時期と重なった。だが、後にGTRが付記されるF1を仕上げるには、5台の注文が必要だった。

経営者が住む建物にあったショールーム

そこで登場するのが、老舗百貨店。マクラーレンのハイドパーク・ショールームは、ハロッズを経営するアルファイド家が所有する建物に置かれていたのだ。故モハメド・アルファイド氏は、1980年代にその建物を購入し、家族と暮らしていた。

その頃、マクラーレンの営業部長だったデビッド・クラーク氏が回想する。「ほぼ毎日、彼ら(アルファイド家)をお見かけしていました。息子のムーディさんは、取り組むべき目標を探していた時期でもあったようです」

「ある時、モハメドさんたちと夕食をした夜に、マシンを走らせて欲しいと突然頼まれたんです」。かくして、急速に人気が高まっていた、BPR GT耐久シリーズへ向けたマシン開発が進み始めた。

マクラーレンと顧客との競争を避けるため、参戦部隊はデビッド・プライス・レーシング(DPR)へ託された。モハメドは、設立者のデビッド・プライス氏と意気投合。ドライバーには、ブッシャーに加えてジョン・ニールセン氏も指名された。

24時間に耐えるF1 GTRは不可能だった予算

アルファイド家は、シャシー番号06RのF1 GTRを購入。マッハ・ワン・レーシングが結成され、マシンはイエローに塗装された。そのデビュー戦となったのは、1995年4月にスペインのハラマ・サーキットで開かれた、BPR GTシリーズ第4戦だ。

マクラーレンはF1 GTRの発表時、24時間ではなく4時間の耐久シリーズ・レースを想定したマシンだと説明。ル・マンへの参戦は、完全に否定していた。

「当時の予算では、24時間を走破できると信じられる、F1 GTRを生み出すことは不可能でした。しかしレースで開発を重ね、性能を確信できたんです。もちろんチームのメンバーは、ル・マンへ挑戦したいと口にしていました」。ハゼルが説明する。

マクラーレンは、ル・マンに向けてアップグレード部品を開発。ブレーキはカーボン製になり、Hパターンの6速マニュアルにも改良が加えられた。22時間に及ぶシミュレーションの結果を受けて、クラッチも強化された。

GT1のライバルはプロトタイプマシン

BPR GTシリーズには6台のF1 GTRが提供されたが、ル・マンの予選までに7台目が加わった。日本で美容整形外科の上野クリニックを経営する、佐山元一氏がスポンサーについた、国際開発レーシング・チームをマクラーレンが結成させて。

とはいえ、翌日の朝を迎えることは困難だと予想された。「トランスミッションは問題だらけでしたから」。2023年にこの世を去ったプライス氏が、かつて説明している。

エントリーしたのは、最上階級のGT1。相手はプロトタイプマシンで、ロードカーが土台のF1 GTRは性能的に及ばなかった。予選でポールポジションを取ったのは、耐久性に疑問があったWRプジョー LM95。タイムは最速のF1 GTRより、11秒速かった。

優勝候補と目されたのは、クラージュ・ポルシェC34。ドライバーはマリオ・アンドレッティ氏で、8秒上回っていた。F1 GTRのグリッドトップは、国際開発レーシングで9位。その前には、フェラーリF40 GTEが3台立ちはだかっていた。

執筆:ゲイリー・ワトキンス(Gary Watkins)
画像提供:マクラーレン

この続きは、マクラーレンF1 GTR(2)にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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