そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも、何年経ってもみんなが覚えているクルマ……今回は「現代に蘇ったスバル360」ともいえる一台、スバル R1を取り上げる。今ではありえないほどの「凝縮感」を纏った最後のスバル軽だ!!
※本稿は2025年8月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2025年9月10日号
現代に蘇ったセクシーなスバル360!! 軽の「和製アルファロメオ」スバル R1を覚えてるかい?
【画像ギャラリー】スバル渾身の軽クーペ!! 攻めに攻めた姿勢が記憶に刻まれるスバル R1(20枚)
攻めに攻めた最後のスバル軽クーペ
スバル R1(2005~2010年)中古相場 5万~180万円。意外とイタリアンなデザインは軽のアルファロメオ!?
いまだかつてこんなに大胆かつセクシーな軽クーペがあっただろうか? ほぼ20年前の2000年代頭に生まれた、5ドアワゴンのスバル R2と、その凝縮3ドアクーペ版たるR1だ。
それはチャレンジの歴史だった。一見1960年代のスバル R-2や元祖360の再来かつ復刻版。だがそれ以上に、当時人気のスペース系に対するセクシー系の最後の挑戦でもあった。
すでにワゴンRをはじめ軽トールワゴン全盛期だったが、さらなる大容量N-BOXが出るまでには間があり、当時、自社開発の軽撤退も視野に入れていたスバルは最後の足掻きを試みた。
太った軽ばかりではつまらない。ボンキュッボンのセクシーな軽を提案して勝負しようと。恐らく当時の元アルファロメオのイタリア人デザイナー、アンドレアス・ザパティナスと提案したのがこのR2とR1。どちらも軽のアルファロメオで、R1は不便すぎて買えなかった小沢もR2を新古車で買ったほど。
特にR1は凄かった。ただでさえメリハリあるフェンダーや前後を絞ったR2をベースに、わざわざ全長を110mm、ホイールベースを165mm縮めてボディを凝縮。ドアミラーにアンテナ、バックドアオープナー以外はR1オリジナルでまさに軽のスーパーカー。
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独特ソリッド感はスバル R2以上!
お馴染み『バクヤスオート』で2006年式、距離2.1万kmの低走行モノがたったの50万円以下。ノンターボで遅いが程度は極上!
今回は2006年式の中古NAに乗ったが、その絶妙に短い3.2m台の全長や、傾きまくった前後ウィンドウは今アリエナイ。乗ると外の風景が歪むほどの圧迫感で窓は迫ってくるわ、リアシートはヒザがぶつかり頭は傾き、狭い狭い。当然ホールド性もない。
だが、その分超カッコよく、フロントの「六連星」エンブレムをあしらったスプレッドウィングスグリルは彫りが深くてガチにイタリアンだし、インパネデザインも全面シルバーパネルで囲われ、オマエはポルシェかと言いたくなるほど。
メーターはアナログ式だがスポーツカーのような3連系でカッコよく、全体にブラック&グレー系の2トーンで纏められた内装もセクシー&クールだ。
個人的には上級グレードにあった、レッドの本革と黒アルカンターラで纏められた2トーンシートがお気に入りだが贅沢は言うまい。樹脂類もソフトパッドこそ使われてないがマットな触感がいいし、座り心地も硬めでいいので、このままアルファロメオブランドで200万円で売ってほしいほど。
今回乗ったのは最低パワーの46ps、SOHCノンターボ車でクソ遅かったが、今はなき軽の直4でそれなりに滑らか。またステアリングフィールはR1&R2系らしく、ソリッドなタッチがキモチいい。
探せば64psのスーパーチャージャーも中古価格50万円ほどで見つかるのでいろいろ選べて楽しい。
もちろん最新の軽のようなビッグモニターやシートヒーター、先進安全装備は皆無。
でも、余ったスマホでも付けときゃ充分使えるし、リアに大人は無理でも孫は乗せられるし、ラゲッジスペースは普通に100L程度はあるし、リアを倒せば普通のワゴンぐらいはある。
多少の遅さやCVTのかったるさこそあれど、見れば見るほどカッコよく、作りも凝っている。確かに狭くて不便で売れなかったのもわかるけど、ホンダ S660を高い金出して買うなら、同等にカッコよくて同等以上に使えるR1も全然悪くない。オッサンの足グルマとしてどうだろうか?
●小沢コージ氏の評価
・タイムスリップ度:★★★
・レア度:★★
・お金かかりそう度:★
・乗って楽しい度:★★★★
まさにアルファロメオが作った軽クーペ……といいたい出来映え。確かに狭いけど凝縮感の塊のスタイルにソリッドな走りがたまらない!
スバル R1伝説1:R2後にあえてR1! 最後の純スバル軽クーペ
カタマリ感ハンパない。ガチな軽スーパーカーだ
2003年に大胆かつ使える5ドアのR2、2年後により攻めた3ドアのR1をリリース。スバルは2000年代頭になぜこんなスタイリッシュ戦略で攻めたのか?
当時同社は海外向けのSUV路線で成功、軽ではハイトワゴンのプレオを出したがイマイチ。そこで次はスバルらしい軽スペシャルティ路線としてR2&R1で攻めたが惨敗。きっと最後の勝負だったのだ。
スバル R1伝説2:R2と共通点ほぼナシ! 完成度は凄まじかった
5ドアのR2、3ドアのR1、どちらも骨格が共通のスバルの軽兄弟車だが、驚くことに外板共通パーツはほぼ皆無。
今や大型SUVのマツダCX-60とCX-80でもノーズとフロントドアまでは共通パーツを使って効率化を図るが、フロントノーズはもちろんドアパネルもフルオリジナル。結果R1の一体感や凝縮感は凄まじかったが……残念ながら売れず。
●スバル R1 懐かしスペック
・カテゴリー:FF軽3ドアクーペ
・全長×全幅×全高:3285×1475×1510mm
・ホイールベース:2195mm
・車両重量:810kg
・エンジン:660cc直列4気筒SOHC
・最高出力/最大トルク:46ps/5.9kgm
・トランスミッション:CVT
・駆動方式:FF
・サスペンション:前=ストラット式 後=ストラット式
・国内累計販売台数:1万5081台
・ベース車:スバル R2
・コンセプト:パーソナルカーの新基準
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みんなのコメント
R1もフロントデザインを初代スバル360に寄せていればもっと売れただろうに。