高齢者による暴走事故が相次ぎ大きな社会問題となっているが、こうした事故の報道でプリウスが頻繁に登場したため、ネット上では“プリウスミサイル”という呼び名で、まるでプリウスだけが悪いとさえ言われている。
たしかに2019年4月、87歳の元通産官僚による東京都池袋の暴走事故もプリウス、2019年5月に千葉県市原市の公園に65歳男性が突っ込んだ事故もプリウス、2019年6月に大阪市で80歳男性が歩道に突っ込んだ事故もプリウスαだった。過去にさかのぼってもプリウスに乗るドライバーがいくつかの重大事故を起こしている。
そこで、本当にプリウスミサイルという呼び名は正しいのか? 急発進や暴走事故を誘発させる原因がプリウスにあるのか? 自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説する。
【楽しくて安全で長く乗れる!!】「高齢者に優しいクルマ」とは
文/高根英幸(自動車テクノロジーライター)
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
(画像ギャラリー)【急発進・暴走防止が急務】「プリウスミサイル」という呼び名は正しいのか? 歴代プリウスのシフトレバーほか
なぜプリウスミサイルと呼ばれたのか?
現行4代目50型プリウス
3代目30型プリウス
2019年に入って、ネット上でプリウスミサイルというキーワードが見受けられるようになった。言うまでもなくこれは、トヨタプリウスに付けられた別称で、プリウスオーナーが頻繁に交通事故を起こすとSNS上でこんなタグを付けて拡散されている。
プリウスが危険なクルマというイメージが、この別称だけで伝わってくるが、こんな不名誉な別称が本当に相応しいクルマなのか、さまざまな角度から考えてみたい
プリウスというクルマが、ペダル踏み間違い事故などの高齢者ドライバーによる暴走事故で最も多く報道されている車種だからというだけでなく、ある特有の現象からこうした別称が付けられてしまったようだ。
しかし単一車種としての事故率の高さで見れば、特にプリウスだから事故が多いというわけではない。
その証拠に自動車保険の型式別料率クラスは、高い部類ではないのだ。交通事故による保険金の支払いが多ければ型式別料率クラスは上昇し、保険料は全体的に高額になってしまう。
「プリウスは事故率が高い危険なクルマ」は本当か?【任意保険で検証】
歴代プリウスの型式及び料率クラスの一覧。4代目プリウスは3つの型式がある。各型式の色の違いは保険の開始時期で、色の薄い部分が2018年1月1日~12月31日、濃い部分が2019年1月1日~12月31日となっている。つまり濃い部分のほうが数字が高ければ保険料率クラスが上がっている。プリウスの場合大きな変動がなくある意味安定しているといえる
しかし、別の見方をすると、事故件数は多いが登録台数が多いために事故率はそれほど高くないため料率への影響が少ないことも考えられる。
さらにオーナー層を考えると、やや危険な側面も見えてくる。それはプリウスオーナーの年齢層だ。特に先代30型プリウスまでは50代以上のドライバーが多い傾向にあったことは、プリウスの開発エンジニアも認めている話だ。
それは、エコカー減税により乗り換えが促進された際、以前ならマークXやクラウンを選んでいたオーナーが、もう子育ては終わったからボディの小さなクルマとしてプリウスを選ぶケースや、以前はカローラを乗り継いでいたオーナーが燃費でプリウスを選ぶというケースが多かったからだろう。
その50代以上のドライバーがそのまま2代目20型/3代目30型プリウスに乗り続けていれば、高齢者ドライバーのプリウス比率は高くなる。メカに詳しくないドライバーは、複雑なハイブリッド車の構造など理解できないから、5、6年も使用すればディーラーの営業マンに進められるまま新型プリウスに乗り換えるケースもあるだろう。
2代目20型/3代目30型プリウスに乗り続けるオーナーも、現行50型がプリウスのオーナーも高齢化が進む(もっともドライバー全体で高齢化が進んでいることも大きいが)ことになる。
高齢者にとって誤操作を誘発するシステムになっていないか?
プリウスの独特のシフト配置に問題があるのだろうか?
さまざまなところで指摘されているのは、プリウスのシフト配置や操作方法に問題があるのではないかということ。まとめてみたので見てほしい。
●ネットで指摘されているプリウスのシフト操作方法
■独特のシフト配置/PからR、N、Dにシフトする際にはブレーキ踏まないと変わらないが、NからR、Dにシフトする時はブレーキ踏まなくても変わる。駐車場の料金支払い時などで運転者の意志に反してNレンジ(エンジンの空ぶかしはない)に入り、アクセルを吹かし、その時メーター内のN表示を見て咄嗟にDレンジに入れると誤って急発進してしまうことになる
■見た目のレバー位置は同じ/どのレンジに入っているかはメーター内の表示で確認できるが、どのレンジに入っていてもレバーの位置は見た目は同じ。常に元の位置(ニュートラルポジション)に勝手に戻るので区別がつきにくい。しかもエンジンが停止しても無音だから気づかない
■紛らわしいBレンジの存在/山道などを走行する際にエンジンブレーキを効かせたい時に使用するBレンジ。一般的なAT車はDレンジから1段階シフトチェンジするだけで簡単に2レンジに入れることができるが、プリウスの場合は一度Pを経由しなければエンジンブレーキを効かせるBレンジに切り替えることができない。高齢者(RがHパターンの右下のMTに慣れた人は特に)であればバックと勘違いして後退をしたい時にRではなくてBレンジに入れてしまう可能性がある
プリウスミサイルと呼ばれる理由の一つが、シフトレバーの操作方法だ。これは、さまざまサイトやYOUTUBEで危険性が指摘されている。
こうした指摘は本当に正しいのだろうか?
確かにメーター内にシフトポジションの表示があるとはいえ、Dレンジにシフトしてもニュートラルポジションにレバーだけ戻ってしまうのは高齢者には違和感があるかもしれない。視覚的な確認がし難く、自分ではDレンジにシフトしたつもりでも操作が曖昧でNレンジのままになってしまうケースもあり得る。
NレンジからDレンジにブレーキを踏まなくても変わる指摘だが、 そもそも国産車のATでNからD、Rにシフトする際にブレーキを踏む必要があるタイプはほぼなく、この指摘はプリウスに限った話ではないのだ。
プリウスはエンジンを掛けると、まずPレンジになり、Dレンジにダイレクトに入れる。ここからNレンジに入れるためには、レバーを右へ約1秒間、長倒ししないと入らない。日常的にはNレンジに入ってしまうことはない。ちなみにBレンジは、一段手前に引くだけでDからBに切り替わる。
Nレンジでアクセルを踏むと先代30型ではピーという警告音+インパネが「Nレンジです」という画面に切り替わる。
現行50型ではNレンジには入った状態でアクセルを踏むとピーという警告音と「Nレンジに入っています。ブレーキを緩めて任意のレンジに入れてください」と表示される。
つまり、誤ってNレンジに入った→Nレンジに入ったと気づかないままアクセルを踏むが進まない(エンジン車だと唸るため気づくがプリウスはほぼ無音のため気づかない)→Nレンジの表示と警告音が鳴る→警告音に驚いて慌ててアクセルを離さないままDレンジに入れる→急に動き出してパニックになる→パニック状態でアクセルを離す判断ができなくて事故を起こす。 要するに判断力に乏しい人が乗って事故が起きている、ということではないだろうか?
プリウス独特の発進の仕方にも問題あり?
プリウス独特の発進加速に問題があるのだろうか?
Nレンジから慌ててDレンジに入れて急発進し、暴走するケースが指摘されているが、そもそもプリウスは通常のスタート時、モーターのパワーのみ使う。
現行50型プリウスは、98ps/14.5kgmの1.8L、直4エンジン+72ps/16.6kgmの電気モーターを組み合わせている。
先代30型プリウスは99ps/14.5kgmの1.8L、直4エンジン+82ps/21.1kgmの電気モーターだ。システム出力は30型が136ps、50型が122ps。
プリウスはNレンジだとエンジンがかからないので、NからDレンジに入れた直後の状態では72ps/16.6kgmのモーター出力のみ。 出足から太いトルクが発生するプリウスだが、同排気量のエンジン車(150ps/20kgmくらい)がNレンジのアクセル全開状態からDレンジに入れた場合はプリウスより速い。
ちなみに通常、プリウスはDレンジで発進すると、モーター起動時のトルクが最大となるため、約40km~50km/hまで太いトルクで加速する。その後エンジンが始動して60km/hを超えてからの加速は鈍くなる。
エンジン車に比べると静かでいつのまにかスピードが出ていることに気づきにくく、踏み間違えた場合に気がつくのが遅れてしまうことも指摘されている。
こうしてみていくと、そうした警告に気付かない、あるいは警告によって驚いてパニックに陥ってしまうことを考慮してクルマ作りをしなければいけないということだ。
もし誤操作しても警告が表示されるから気付くだろう、ブザーによって気付くだろうという常識が、高齢者ドライバーには通用しないこともあることをクルマを供給する側は意識しなければならないといえる。
つまり、問題はプリウスというクルマ単体にあるのではなく、高齢者の運転事情と、それに安全技術が追いついていないクルマ社会全体にある、ということだ。
プリウスミサイルという呼び名は妥当か?
筆者自身は現行50型プリウスは乗り心地、ハンドリングともに格段に向上していながら燃費も向上させるなど、開発陣の努力が伺える素晴らしいクルマだと思っている。
販売台数の20台に1台はプリウスであることと、プリウス購入者の47%が60歳以上であること。さらに、プリウス以外の事故では車種への注目が低いことなどが重なり、プリウスミサイルと呼ばれているのではないか。
個人的には、このプリウスミサイルという報道は、高齢者への免許制度改正だけでなく、これからのクルマは高齢者が運転することをもっと意識して仕様を考える必要があると、考えさせられた。
さらに若く運転を楽しみたいドライバーのためには性能抑制の解除キーの操作を教えるなどの対策も含め、デフォルトでは高齢者の特性を考えた仕様にすることが大事ではないだろうか。
ペダル踏み間違い装置の普及が急がれる
トヨタの後付け踏み間違い加速抑制装置は販売店装着の純正用品で発売。写真下段が超音波センサー(前・後)、写真右上が車内に取り付ける表示機 価格は工賃含めて約8万円(本体5万5080円)
最後に、暴走事故、急発進事故撲滅のカギとなる後付けのペダル踏み間違い装置にも触れておきたい。
高齢者は1台のクルマに長く所有し、金銭的に新車が買えないケースが多いからだ。
トヨタは2018年12月から後付けの「踏み間違い加速抑制システム」を発売。製品は異なるものの、ダイハツも同時期に軽自動車向けの後付け装置、つくつく防止を発売している。
ダイハツは後付けペダル踏み間違い加速抑制装置『つくつく防止』を発売。価格は3万4560円(標準取り付け費込み5万9508円)。 対象車種は2代目タント、4代目ムーヴ、7代目ミラなど
トヨタの後付けペダル踏み間違いシステムは、前後のバンパーに超音波センサーを2個ずつ取り付け、壁などの障害物をモニタリングし、クルマの前後3m以内の障害物を検知し、シフトレバーの入れ間違いをブザー音などで警告。
この時、ブレーキと間違えてアクセルを強く踏んでも加速は抑制され、車内に設置する表示装置に「アクセルを離してください」という警報が出る。
また、後進時に時速5km以上になると加速を抑制させ、ブザーと表示で警報するという機能も用意されている。踏み間違いはクルマをバックさせる時に起こりやすいためだが、いずれの場合もブレーキをかける機能は付いていない。
対象車種はプリウス(3代目30型)やアクアなど販売量の多いモデル、プレミオ/アリオンなど高齢者ユーザーが多いモデルを対象に5車種に取り付けできるようにした。そして2019年6月には3車種を追加し、2019年末までには全12モデルへと拡げていく。対象となる保有車両は458万台におよぶという。
さらにホンダと日産は2019年6月の株主総会で株主の質問に答えるかたちで、後付けペダル踏み間違い装置の販売を急ぐ方針を表明した。
国土交通省も国産乗用車8メーカーに、2019年8月初旬までに後付け装置の開発計画を作成するよう要請した。年内には装置の認定を制度化する方針とのこと。
東京都が2019年8月28日から後付けペダル踏み間違い装置の補助金受付開始
また、東京都では緊急対策として「東京都高齢者安全運転支援装置設置促進事業補助金」を開始することを発表、2019年7月31日から事業者での相談窓口が設置され、2019年8月28日から申し込みが始まった。
対象者は、都内在住の高齢運転者の(令和元年中に70歳で、ペダル踏み間違い急加速抑制装置を1割の負担で購入・設置できるよう、取扱い事業者に対し、都が費用の9割を補助(補助限度額は10万円/台)するとしている。
今後は、国産8メーカーすべてに後付けペダル踏み間違い装置の販売が急がれる。新車の標準装備化やオプション化はもちろん、過去に発売したモデルに対応したものも用意すべきだ。そして東京都のように、補助金を出す流れが全国に広がっていくことを願うばかりだ。
■事業者
イエローハット(23店舗)
オートバックスセブン(25店舗)
大勝オートサービス(1店舗)
ダイハツ東京販売(31店舗)
東京都自動車整備商工組合(336店舗)
トヨタ西東京カローラ(26店舗)
トヨタモビリティ東京(206店舗)
トヨタユーゼック(1店舗)
ネッツトヨタ多摩(37店舗)
ネッツトヨタ東都(9店舗)
■対象となる高齢運転者の要件
・都内在住で、令和元年度中に70歳以上となる方(昭和25年4月1日以前に生まれた方)
・都道府県公安委員会が交付する有効な運転免許証を有すること
・自動車が安全運転装置を設置することが可能なものであること
・装置を設置しようとする自動車が自動車検査証の「自家用・業務用の別」に自家用と記されたものであること
・安全運転支援装置を設置しようとする自動車の自動車検査証上の「所有者の氏名又は名称」又は「使用者の氏名又は名称」に記載されている氏名と、高齢者の運転免許証に記載されている氏名が同一であること。ただし、これらの氏名が同一でない場合は、当該自動車検査証に記載の「所有者の住所」又は「使用者の住所」と、当該高齢者の運転免許証に記載の住所が同一であること
■相談から設置・支払いまでの流れ
1/装置の購入・設置を希望する高齢運転者は取扱い事業者の店舗に相談
2/店舗で車の状態や要件について確認を受け、設置日を予約
3/予約日に本人が来店し申込書等を提出
4/店舗にて本人確認のうえ装置販売・設置、使用方法を説明
5/本人は個人負担分の金額を店舗で支払い
東京都都民安全推進本部 総合推進部 交通安全課のホームページ
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