6.5L NA V12 駆動系はGTC4ルッソの進化版
フェラーリは、プロサングエがSUVではないと主張する。同社CEOは、マラネロからSUVが生まれることはないと断言していた。表現へ慎重な姿勢には、理解できる。
【画像】ブランドDNAをSUVへ継承 フェラーリ・プロサングエ 競合する超高性能SUVたち 全138枚
V12エンジンをフロントへ搭載し、存在感はスーパーカー級。四輪駆動だが、全高はさほど高くない。ウエストラインより下側が、力強く見えるよう造形されている。
それでも、ポルシェやアストン マーティン、ランボルギーニのSUVと伍することは明らか。ただし、売上の半分をプロサングエが占めることはない。全体の生産数の20%以上を、割り当てる計画がないためだ。
先進的な技術は満載。例えばアクティブダンパーは、電気モーターとギアで制御される。従来のSUVでは叶えられなかった、精緻な操縦性と高度な安定性を実現したという。2028mmの全幅へ慣れれば、実用性も悪くないだろう。
同社初の4ドアで、主にアルミニウムを用いたモノコック構造は専用開発。フロントアクスルの後方へ載るのは、自然吸気6.5L V型12気筒エンジン。最高出力725ps、最大トルク72.8kg-mを発揮し、燃費は5.8km/Lがうたわれる。
駆動系はフェラーリGTC4ルッソの進化版で、リアアクスル側にツインクラッチの8速ATを配置。エンジンのクランクシャフト前方からもパワーは引き出され、2速ATとクラッチを介して、前輪も駆動する。
前後の重量配分は、49:51。重量物は、3018mmのホイールベース間に集中している。トランスミッションはリアシートの間に収まるため、定員は4名だ。
運転へ集中できる車内環境 荷室容量は473L
全高は1589mmと、SUVとしては高くない。ランボルギーニ・ウルスより30mm、アストン マーティンDBX707より90mmほど低い。リアドアはリアヒンジで開く。
ヒーター内臓のフロントシートへ座ると、居心地の良さに惹かれる。彫刻的なダッシュボードとセンターコンソールが、左右の席を適度に孤立させる。
運転姿勢は望ましく、前方視界に優れる。フェンダーの峰が視界にかかるが、ボンネットはほぼ見えない。リアウインドウは小さい。
メーター用モニターは、1部がスクロール表示可能。ステアリングホイール上のスイッチ類には、触れてわかる彫りが施され、覚えれば手元を見る必要がない。
ステアリングホイールの奥には、量産車最大級のシフトパドル。ステアリングコラムに、レバーはない。走りを重視するフェラーリは、ウインカーの操作よりパドルの弾きやすさを重視している。
「マネッティーノ」ダイヤルを回せば、アイス、ウェット、コンフォート、スポーツ、スタビリティオフからドライブモードを選べる。運転へ集中できる環境といえる。
ダッシュボード中央には、エアコン用のダイヤル。それをタッチしてスワイプすると、シートヒーターや送風位置なども調整できる。カーナビはなく、利用する場合はスマートフォンと連携させる必要がある。
荷室容量は473Lで、背もたれを倒すことも可能。テールゲートへ固定できるラックが、オプションで用意される。映画007へ出てきそうな、エキゾチックなスキー・エクスプレスになるはず。
2033kgを意に介さないV12 突出の落ち着き
静かな早朝のドイツでアウトバーンへ繰り出せば、0-100km/h加速3.3秒、最高速度310km/hという主張へ、まったく疑問は湧かない。プロサングエの車重は2033kgに達するが、6.5L V12エンジンはまったく意に介さない。
周囲を制圧するような追い越しには、ギアを1・2段下げる必要はあるものの、余程な場面のみ。見事なアクセルレスポンスを披露し、厚みのあるエンジンサウンドを放ちながら、疾走を続けられる。
8速デュアルクラッチATの仕上がりも素晴らしい。シリアスなミドシップ・フェラーリほど鋭敏ではないものの、まったく不満なし。巨大なパドルを弾きながら、自然吸気エンジンを味わい尽くせる。
乗り心地は、低速域でも穏やか。ステアリングレシオは、フェラーリGTC4ルッソと同じ14:1で、かなりクイック。かといって、神経質さはない。ロックトゥロックは2回転で、反応はダイレクト。標準の後輪操舵システムは、制御が至って自然だ。
キャビンは後方寄りだが、さほどノーズは遠く感じない。リアアクスルの上で、軽快に反応するフロントアクスルを操るのではなく、ボディ中央で運転している感覚がある。
注目すべき技術が、マルチマティック・スプールバルブ・ダンパー。ソフト、ミディアム、ハードの3段階で硬さを調整できるが、23インチで扁平率30のタイヤを履くとは思えない、衝撃吸収性を披露する。筆者が記憶するどのフェラーリより、落ち着きがある。
オールロード4ドアクーペ 際立つ操縦性のバランス
姿勢制御も素晴らしい。アンチロールバーの機能も兼ね、車重を踏まえると、旋回時や加減速時のロールやピッチは見事に抑えられている。SUVとして全高は低めとはいえ、予想以上にタイトだ。
大きなV12エンジンを搭載し、悪路へ備えた最低地上高を考えると、印象的なほど機敏。ビッグクーペを彷彿とさせるほど、滅法速い。アストン マーティン・ラピードをクロスカントリー仕様にした感じ、と表現したら伝わるだろうか。
ラピードも、アルミ製シャシーにV12エンジンを積み、トランスアクスルで4ドアの4シーター。SUVではなく、オールロード4ドア・フェラーリだと受け止めた方が正しいのかもしれない。
操縦性のバランスが、プロサングエで際立つ部分。乾燥したアスファルトで、ワイドなタイヤを圧倒するパワーを開放できるだけでなく、凍えたアイスバーンや湿ったグラベルでも、余分なパワーで楽しめる。
路面を問わず、ラリーカーのようにスライドを誘え、リカバリーしやすい。高価なカーボンファイバー製トリムを割ることを恐れなければ、雨でも雪でも、砂利道でも、多様なシーンでV12フェラーリに興じれる。
DBX707の方が、音響の聴き応えでは勝るかもしれない。だが、プロサングエと同等にワインディングを我が物にできるSUVは、ポルシェ・カイエン・ターボくらいだろう。
さて燃費は、高速道路の巡航なら平均で約7.0km/L。燃料タンクは100Lだから、航続距離に不満はないはず。
ブランドDNAをSUVへ継承した偉業
英国価格は31万3120ポンド(約6106万円)からで、オプションを盛らないと商談には応じてくれない可能性が高い。快適性と走行性能で優れる、ベントレー・ベンテイガとほぼ同等。操縦性で新領域を打ち立てたSUVは、お安くない。
フェラーリとして、極めて野心的なモデルといえるプロサングエ。マラネロ出身のモデルとして、アクティブダンパーなど高度な技術を積極的に取り込み、圧巻の動的能力へ到達している。
一部の自動車メーカーは、伝統のスポーツカーを維持する資金を稼ぐため、SUVを提供している。対してフェラーリは、他社に真似できない孤高のSUVを作り上げた。
より実用性に長けた例や、より操縦性に優れ高速なモデルが有ることは事実。しかし、秀抜なシャシーとエンジンを融合させ、ブランドDNAをSUVのパッケージングで継承することへ成功している。まさに偉業だ。
◯:強力で魅惑的なV12エンジン 高速で素晴らしいロードマナー クラス屈指の姿勢制御 大人4名が快適に移動できるパッケージング
△:後方視界が限定的 サイズ感を掴みにくい やや暗めのリアシート 競合を遥かに上回る価格
フェラーリ・プロサングエ(英国仕様)のスペック
英国価格:31万3120ポンド(約6106万円)
全長:4973mm
全幅:2028mm
全高:1589mm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:5.8km/L
CO2排出量:393g/km
車両重量:2033kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:725ps/7750rpm
最大トルク:72.8kg-m/6250rpm
ギアボックス:2速オートマティック(前)+8速デュアルクラッチ・オートマティック(後)(四輪駆動)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
自転車「幅寄せやめろ」クルマ「後ろ確認しろ」どっちが悪いのか 実は双方が相手を理解していない?
【あり得ない軽さ】500kg台を目指す次期「アルト」は26年秋登場。約110万円~の戦略価格の可能性
フェアレディZはずっと乗っていたい1台!! いつかマニュアル車もなくなる? Zが将来子供たちにオススメだった件
【最新】トヨタ「エスティマ」7年ぶり復活の可能性。BEV&PHEV採用で500万円後半の高級ミニバンに?
日産「新型エルグランド」まもなく登場! 小排気量エンジン×最新e-POWER搭載で“打倒アルファード”なるか!? 超進化する「元祖高級ミニバン」に販売店も期待!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
価格もすごい差だけど😍