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ライフル銃からスポーツカーまで 業界の巨人「マグナ」知られざる物語 歴史アーカイブ

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ライフル銃からスポーツカーまで 業界の巨人「マグナ」知られざる物語 歴史アーカイブ

業界の巨人はいかにして生まれたか

先週、AUTOCARは間もなく生産終了となるジャガーIペイスを称賛した。その生産地は英国ではなくオーストリアである。なぜなら、Iペイスはジャガー向けにマグナ・シュタイア社によって生産されているためだ。

【画像】実は「身近」にあったマグナ・シュタイアの自動車【トヨタGRスープラを写真で見る】 全18枚

同社は業界以外ではあまり知られていないものの、世界中の自動車メーカーから信頼を得ている数十億ドル規模の巨大企業である。しかし、どのような経緯でそうなったのだろうか? それを紐解くには3本の物語の「糸」をたどる必要がある。

1本目の糸は、1830年にまで遡る。その年、実業家レオポルト・ヴェルンドル(Leopold Werndl)氏がオーストリアのシュタイアでライフル銃の部品製造を始めた。第一次世界大戦で大きく成長した同社は、事業の多角化を図り、型破りなことで有名な自動車技術者ハンス・レドヴィンカ(Hans Ledwinka)氏をタトラから引き抜き、1920年には独自の設計による低価格の乗用車を発売した。

AUTOCARは1925年に初めてシュタイアのクルマに触れ、直列6気筒セダン「タイプVII」について次のように評した。

「シャシーは非常にモダンな設計であることは明らかであり、工場の性質は期待される仕上がりのレベルを十分に示している。性能は極めて良好で、特に排気量と重量(1880kg)を考慮すると顕著である。サスペンション・システムについては、賞賛以外に言葉がない」

2本目の糸は、ヨハン・プフ(Johann Puch)氏がグラーツに自転車工場を開いた1890年に遡る。経営はすぐに軌道に乗り、1904年には自動車にまで事業を拡大。オーストリアのハプスブルク家のリムジンまで手がけるようになった。

3本目の糸は1899年、ドイツのダイムラー社がウィーンに子会社を設立したときのこと。オーストリア・ダイムラー社は、フェルディナンド・ポルシェ氏の指揮の下、初期の四輪駆動車、軍用車両、さらには鉄道車両など、さまざまな車両を生産した。中でも高級車が非常に優れており、王室の紋章を付けることが許され、レーシングカーも世界トップクラスの性能を誇った。

AUTOCARは1925年に初めて “AD” (オーストリア・ダイムラー)に試乗し、スポーツツアラー「19/70hp」について、次のように評している。

「ホイールベース3.4mのシャシーに搭載されたエンジンは、排気量2.5L強(重量は1500kg)であることを考えると、その性能はどんなドライバーも失望させることはないだろう。クラッチストップが装備されているため、坂道でのシフトチェンジも楽にこなせる。さらに、操作系も適切に配置されており、初めて運転する人でも安心できる、快適なハンドリングを実現している」

欧州が大恐慌に陥ると、それぞれの糸は複雑に絡み合っていった。

四輪駆動車やスポーツカー製造に長ける

まず、1928年に、創業者の急逝により意気消沈していたプフが、ポルシェ博士をシュタイアに奪われたばかりのオーストリア・ダイムラーと合併した。1930年にはシュタイアも自動車販売台数が5000台からわずか13台に落ち込むなど急速に業績悪化し、1935年に合併が決定。こうして、シュタイア・ダイムラー・プフという複合企業が誕生した。

第二次世界大戦により方針転換を余儀なくされ、オーストリアの工場ではナチス・ドイツのために銃やポルシェ設計のV8トラックを生産した。

戦後もトラック、バス、トラクターなどが事業の中心的な存在であり続けたが、同社は乗用車を放棄することなく、1948年からフィアットの設計を変更したモデルの生産契約を結んだ。

中でも最も重要なのは、戦後のイタリアを動かした小型で超低価格の500であり、シュタイア・ダイムラー・プフはクールなスポーツバージョンも開発した。AUTOCARは1967年、欧州ラリー選手権でタイトルを獲得したばかりのシュタイア・プフ650 TRIIに触れ、その実力の高さを垣間見た。

「その驚くべき650cc空冷水平対向2気筒エンジンは、36馬力を発生し、音は心地よく、非常にパワフルで、酷使されても挫ける気配がない」

軍用車両に関しては、軽量4×4のハフリンガーは「悪路であればあるほど、その性能が発揮される」ことが分かり、また、大型6×6のピンツガウアーについては「これを超えるものはない。苗木やその他の障害物をものともせず、力強く上っていく姿は、本当に畏敬の念を抱かせる」と評した。

ダイムラーがシュタイア・プフ社にゲレンデヴァーゲン用の4×4システムの開発を依頼したことも、フィアットがパンダ用に同じ依頼をしたことも頷ける。

複合企業体は1980年代に徐々に解体され、自動車部門は1998年にダイムラーに買収された。2001年にはカナダの部品メーカー、マグナが買収し、今日に至る。ジャガーだけでなく、BMWやトヨタにも自動車を生産している。

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