30歳目前の坪井翔、既に国内最高峰タイトル4冠「苦しい時間が長かったが、良い20代を過ごせた」——SFは今季初勝利で王座戦線名乗り

　オートポリスで行なわれたスーパーフォーミュラ第5戦は、坪井翔（VANTELIN TEAM TOM’S）が優勝。昨年のシリーズチャンピオンが、ついに今季1勝目を挙げてタイトル争いに向けギヤを上げ始めた。

　5番グリッドからスタートで2番手にジャンプアップした坪井は、トップの野尻智紀、そして3番手の岩佐歩夢のTEAM MUGEN勢に挟まれる格好となり、優勝争いもその3台で展開された。坪井は野尻と同じ18周にピットイン。アウトラップで野尻の前に出るが、逆に14周目と早めのタイヤ交換でアンダーカットを狙っていた岩佐に抜かれてしまった。

　結局、岩佐がトラブルでストップしたことにより労せずトップに立った坪井は、野尻からの追撃も振り切り優勝。開幕から連勝を記録していたDOCOMO TEAM DANDELION RACING勢がやや不調に終わった（牧野任祐6位、太田格之進13位）ということも相まって、タイトル争いでも彼らを射程圏に入れることができた（牧野65点、太田61点、坪井51点）。

「トヨタ陣営としては開幕からやられっぱなしだったので、正直ホッとしているところもあります。早めに勝たないとシリーズ途中で（王座の）権利がなくなっちゃう……そんな勢いがダンディライアンにありましたから」

　記者会見の中でそう語った坪井。昨年は富士戦での3戦3勝がタイトルの決め手となったが、今季はまだ富士での2大会4レースを全て残している。そのため坪井としても、これを機に流れが自分のもとにやってきたかもしれないと述べた。

「けっこう流れが変わったかな、とも思っています。富士戦に関しては、去年のようにうまくいくかは分かりませんが、去年良かったということはポジティブだと思うので、ここからしっかり巻き返していけるようにチームと一緒に頑張りたいと思います」

　また1995年5月21日生まれの坪井にとっては、これが20代最後のレースということになった。坪井は30代突入が「全然嬉しくないです（笑）」としつつ、「もっともっと頑張らないとこの場にはいられないと日々感じているので、若手に負けないようしっかり頑張ります」と述べた。

　坪井はここまで、国内トップカテゴリーで合計4つのタイトルを手にしている。スーパーGT・GT500で3回（2021年、2023年、2024年）、スーパーフォーミュラで1回（2024年）だ。これだけ多くの実績を残せた20代の総括を求めると、坪井は「完璧です！（笑）」と冗談めかして返し、さらにこう続けた。

「本当に色々ありました。でもドライバーは誰しも良い時期がずっと続くわけではありません。苦しい時間の方が長かったような感じがしますが、苦しいことも耐えて耐えて頑張ったところ、結果を見ると良かったところもたくさんありますし、非常に良い20代を過ごせたと思います」