見た目は日本車なのに何か違う・・・「あ、左ハンドル!」。
街中や運転中に対向車とすれ違った時、こんな経験はないだろうか。
よく見ると「あ、左ハンドル!」バブル期に上陸した逆輸入車5選
クルマに興味がない人にとっては間違い探しレベルで識別が難しい反面、なぜかクルマ好きはめざとく気がつく。
そんな、さりげなくも奇妙な存在感を放つのが逆輸入車の魅力かもしれない。
バブル期に、市場で大人気のモデルの納車が待ちきれずに、お金に余裕があってちょっと変わった目立ち方を模索していた人に刺さったのが「逆輸入車」だ。
今回はそんな懐かしくもレアな逆輸入車をご紹介したい。
文/松村透
写真/レクサス、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ
※この情報は2022年7月31日現在のものです
■初代セルシオやNSXは納車2年待ちだった!?
エントリーグレードですら455万円・・・。トップグレードは620万円。これにオプション代が加算される。それでも初代セルシオは売れに売れた
世界規模での新型コロナウイルス感染拡大、ロシアとウクライナ紛争による部品供給の遅れ・・・といった複数の要因が重なり、新車の納期が延びている。
即納車はゼロではないけれど、数年前のように各販売店が抱える在庫車を選べるような状況ではない。
どうしても欲しいクルマ(特に新車)を手に入れたい場合、ひとまず「購入予定者リスト」に名を連ねておく。順番がまわってきたところで改めて購入の意思を確認して、気持ちが揺らいでいなければそのまま商談・・・という流れだ。
そして、無事契約となり、納車されるまでまたさらに数ヶ月を要する。人気車であれば納車まで1年待ちというケースも珍しくない。
よほどそのクルマに想い入れがない限り「納車まで1年も待たされる」という感覚が一般的ではないだろうか。
かつて、バブル期にも注文が殺到して納車まで長期間待たされたモデルも存在した。
なかでも初代セルシオやNSXは納車2年待ちといわれていた(その後、バブル崩壊により、キャンセルが相次いだ結果、一気に納期が短縮されたというのは皮肉な話だ)。
いずれも日本を代表する高級車が売れまくったあたりが時代を感じさせる。
■待ちきれない人はプレミア価格で逆輸入車を手に入れた
街中でよく見かけるクルマほど、逆輸入車(左ハンドル仕様)のインパクトは絶大だ
「なに!! 納車まであと2年!? そんなに待てるか!!」。バブル期にそう思った人はどうしたのか? 諦めて他のモデルで手を打つか、プレミア価格を承知で逆輸入車を購入したのだ。
見た目は日本車であっても、メーカー保証はないし、ディーラーでも面倒を診てもらえないことが多かった。しかも、ディーラーで新車を買うよりもあきらかに高価だ。
そのリスクがあってでも購入した人がいたのだ。多少(・・・といっても数百万円レベルだが)高くても左ハンドル仕様だし、さりげなく差別化ができる。
さらに、信号待ちで並んだとき「コッチは左ハンドル(逆輸入車)だぜ!」という、奇妙な優越感も味わえた。見栄が張れたというわけだ。
■バブル期に上陸した逆輸入車5選
当時、逆輸入車として脚光をあびた5つのモデルを取り上げてみたい。いずれも1度は日本の路上あるいはイベント会場で見掛けたことがあるはずだ。
1.アキュラNSX/ホンダNSX(NA1)
・日本デビュー年:1990年9月
・エンジン:V型6気筒DOHC
・排気量:2977cc
・最高出力/最大トルク:265ps/30kgm(AT)、280ps/30kgm(MT)
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4430×1810×1170mm
・新車価格:800.3~860.3万円
・逆輸入車の参考販売価格(当時):1380万円
本来であれば「H」のエンブレムが鎮座する場所に「A」の文字。ホンダの高級車ブランドを示す「Acura」の頭文字が妙に格好よく映ったものだ。これだけでも印象が変わるから不思議である。そういえば、タミヤの1/24サイズのプラモデルでも「Acura NSX」が売られていた。
Hマークの代わりに各所に配された「A(Acura)」のエンブレム、サイドマーカー、そして左ハンドル・・・。タミヤのプラモデルでもAcura NSXが売られていた
2.日産フェアレディZ(Z32)
・日本デビュー年:1989年7月
・エンジン:V型6気筒DOHC/V型6気筒DOHCツインターボ
・排気量:2960cc
・最高出力/最大トルク:230ps/27.8kgm、280ps/39.6kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4310×1790×1245mm(2シーター)/4525x1800x1255mm(2by2)
・新車価格:330~440万円
・逆輸入車の参考販売価格(当時):598万円
日本でも人気を博したZ32型フェアレディZ。見た目は日本仕様とほとんど変わらないはずなのに、これが左ハンドル仕様になると3割増しに格好よく映った。大学生のボンボン(死語)が、金持ちのお父さんにおねだりして買ってもらったZ32、いまはどこへ・・・。
見た目は日本仕様とほとんど変わらないのに、3割増しに格好よく映ったZ32の左ハンドル仕様
3.レクサスLS460/トヨタセルシオ(UCF11)
・日本デビュー年:1989年10月
・エンジン:V型8気筒DOHC
・排気量:3968cc
・最高出力/最大トルク:260ps/36kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4995×1820×1400mm
・新車価格:455~620万円
・逆輸入車の参考販売価格(当時):798万円
このクルマから日本車の高級車の歴史が変わったといっていい初代セルシオ。シーマ現象を上書きするほどの勢いで人気を博し、納車2年待ち状態に。そこで左ハンドル仕様のレクサスLS460が逆輸入された。これに自動車電話をインストール。電話片手に夜の繁華街をソロソロと走っていた時代が懐かしい。
LS460の実車に遭遇して、はじめてレクサスの「L(Lexus)」のエンブレムを見たという人も多かったはずだ
4.ミアータMX-5/ユーノスロードスター(NA6CE)
・日本デビュー年:1989年9月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1597cc
・最高出力/最大トルク:120ps/14kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3970x1675x1235mm
・新車価格:170~216.2万円
・逆輸入車の参考販売価格(当時):350万円
こちらもデビュー当時は納車ま半年待ち!!というほど爆発的ヒットとなったユーノスロードスター。若者からエンスージアストなお父さんまで・・・。多くのクルマ好きの心を鷲づかみに。それだけに改造車も多かったが、そこへ左ハンドル仕様のミアータが現れるだけで「人目をかっさらう」ほどのインパクトだった。
見た目はユーノスロードスター、でも左ハンドル。「ガイシャ気分」も味わえる一粒で二度美味しい仕様だった
5.トヨタスープラ(A70型)
・日本デビュー年:1986年2月
・エンジン:直列6気筒OHC/直列6気筒DOHC/直列6気筒DOHCターボ
・排気量:1988cc/2954cc
・最高出力/最大トルク:105ps/16kgm、140ps/16.5kgm、185ps/24.5kgm、230ps/33.0kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4620×1690×1310mm
・新車価格:201.4~353.7万円
・逆輸入車の参考販売価格(当時):498万円
アラフィフ世代以上なら「左ハンドル仕様のスープラ」といえば江口洋介だろう。そう、東京ラブストーリーの主人公・カンチの親友である三上健一の愛車だ。薄いブルーメタリックのエアロトップ仕様だった。劇中ではこれでスキーにも行っていたし、鈴木保奈美が夜の都内を運転するシーンもあったような・・・。
東京ラブストーリーで江口洋介が運転していたスープラ(逆輸入)はマイナーチェンジ後の3リッター/エアロトップ仕様だった
■逆輸入車を買うメリットとは?
クルマ好きのオーナーさんを取材すると「人と同じクルマには乗りたくないんです」とおっしゃる方が少なくない。
人と被らないクルマ、内外装の色や仕様、エアロパーツ、ホイール・・・。本気になればなるほど手元から福沢諭吉が羽ばたいていく。そして、ノーマルから手を加えれば加えるほどリセールバリューも下がっていく・・・。
それならばいっそ、同じくらいのエクストラコストが掛かるであろう逆輸入車を手に入れてしまった方が「手っ取り早い」かもしれない。
ハンドルの位置が右から左になっただけかもしれないが、同様のクルマが全国から集まるイベントに参加しても「被る」確率はかなり低いだろう。見た目はノーマルでも、左ハンドルというだけで注目度は抜群だ。
ネオクラシックカーの人気が高まっている昨今、逆輸入車を所有していたらさらに注目度アップだろう
街中を走っているだけで「激レア車に遭遇しました!」とSNSにアップされ、いつの間にか有名人になってしまう可能性もある。
何らかの理由で手放すことになったとしても「希少車」として高く買い取り・・・または個人売買で売れる確率が高い。考えようにとよってはコスパがいいといえる。
逆輸入車を買うメリットとは? 単に「見栄を張れる」という思考は昭和や平成1ケタ前半の話し。
現代であれば「さりげなくスマートに差別化できて、しかも他の人とも被らない。それでいて手放すときのコスパもいい(はず)」といった、ある種の「したたかさ」を持ち合わせていいのかもしれない。
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