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続発する車検違反……その裏で何が行なわれているのか? スーパーGT技術責任者が明かす“信念”「どの車両もルールを守ってほしい。それが一番の想い」

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続発する車検違反……その裏で何が行なわれているのか? スーパーGT技術責任者が明かす“信念”「どの車両もルールを守ってほしい。それが一番の想い」

 今季のスーパーGTは10月14日、15日のオートポリス戦で第7戦に突入し、タイトル争いも佳境を迎えているが、それ以上に話題となっていると言えるのが車検違反の多さだ。

 スーパーGTではこれまでにも、予選後やレース後の再車検に不合格となり、ポールポジションや優勝が幻になるケースが散見されるが、今年は特にそれが目立っている。第3戦鈴鹿では24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zがガスバック容量違反によりPPタイム取り消し、第5戦鈴鹿では23号車MOTUL AUTECH Zがスキッドブロック違反により決勝2位のリザルトを取り消された。

■ガス欠や車検違反は御法度。でも攻めないと勝てない……スーパーGTエンジニアが頭を悩ませる無数の計算

 そして極め付けは第6戦SUGO。GT500クラスでトップチェッカーの17号車Astemo NSX-GTがスキッドブロック違反で、GT300クラスでトップチェッカーの18号車UPGARAGE NSX GT3が最低地上高違反で共に失格となったのだ。両クラスのトップ車両が共に車検違反で失格となるのは、まさに前代未聞の事態と言えた。また、レースを見届けたファンにとっても、サーキットから帰路について気付けばレースの勝者が変わっているというのは、決して後味の良いものではなかっただろう。

 こういった事態を受けてSNS上では、「車検が終わってから表彰式をすることはできないのか」「再車検を全車実施すべきではないのか」などといった意見が散見された。そもそも、スーパーGTにおける車両検査はどのような流れで行なわれているのか? プロモーターであるGTアソシエイションの派遣役員であり、技術部門の代表者“テクニカルデリゲート”を務める小西教志氏に聞いた。

■スーパーGTにおける車検の流れ

 まずスーパーGTのレースウィークで最初に行なわれるのが、金曜日の公式車検。オートポリスのレースウィークでは、12時30分~18時にかけて5時間半実施された。ここでは参加車両の性能に関わる項目(車両重量、車高、空力パーツ等)、安全に関わる項目(シートベルト等)、さらにはレースの進行に関わる項目(トランスポンダー等)が規則に合致しているかを検査する。5時間半もあるからと侮ることなかれ。参加車両は計40台にものぼるため、1台あたり10分程度でこれらをチェックしている。

 なおスーパーGTでは、テクニカルデリゲートの小西氏以下、“テクニカル”と呼ばれる技術チームがおり、彼らが大会ごとの技術委員長や車検委員に細かいアドバイスをしながら車検を進めている。このことにより、大会ごとによる“ブレ”をなくし、一貫性のある検査に繋げている。

 そして予選と決勝の後には、特定の車両を対象とした再車検が実施される。これについては「クラス毎に競技会審査委員会が指定する少なくとも2台の競技車両」が対象となる。その選定については、技術面を統括するテクニカルデリゲートが車両の選定基準を審査委員会に提案し、協議した後、審査委員会によって車両が指定されるという流れとなる。

 再車検では車両重量や車高、空力パーツの寸法、過給圧など、性能に関するものが主にチェックされる。そこでの計測の結果、違反とみなされた場合は大会技術委員長を通して競技長に報告され、裁定を下す審査委員会に通達されることになる。なお、この間チームスタッフは車検場内に入ることができないが、車検で不合格数値が出た際はチームの技術代表者と監督を呼んで説明が行なわれる。

 レギュレーション上、車検の指定場所や、GTAまたはオーガナイザーによって用意された機材、器具、および計測方法に対する抗議は認められないが、その一方で下された裁定に対しての抗議はできるようになっており、その流れはFIA国際競技規則に則ったものとなる。抗議ができるのは「競技順位の公式発表の遅くとも30分後まで」となっており、スーパーGTで暫定結果が公示された後、正式結果が公示されるまでに最低30分のタイムラグがあるのはそのためだ。

 こういった一連の手続きを経るため、正式結果の確定までには一定の時間がかかってしまうというわけだ。仮に表彰式を“暫定表彰式”ではなく、正式結果公示後の実施とした場合、上記のことを加味するとチェッカー後1~2時間経ってからの実施となってしまうだろう。また、金曜日のお昼から夜まで実施している全車車検をレース後に実施するというのも現実的とは言えないだろう。

■テクニカルデリゲートの想い

 テクニカルデリゲートの小西氏にとっても、ここ最近のように車検違反が続いている現状は本意ではない。しかしシリーズとしての公正性を保つためにも、厳しい目で検査をする必要があると語る。

「車両の不具合で失格になってしまうという今の流れが良いとは我々も思っていません」

「でもこのような仕組みがなくなってしまうと、クルマの公正性が保てなくなってしまう。そことのジレンマだと思います。我々としては、どの車両もルールを守ってほしいというのが一番の想いです」

「このようなことが続くと、車検に落ちたクルマがクローズアップされがちですが、その裏にはもっとルールと向き合ってクルマを持ち込んできたチームもいるわけです。もちろん、違反しようと思ってやっているチームはいないと思いますが、でも真面目にやっているところが馬鹿を見てはいけない。だからこそ、我々“テクニカル”は公平公正な目で、全チームがルールに沿ったマシンを作ってきているか、厳しい目で見ていく必要があると思っています」

「だからこそ、心苦しい思いをするジャッジも発生すると思いますが、そこは堪えて、真面目に取り組むチームのためにも、厳しい車検をしなければいけないと思います」

 心を鬼にして、厳しく客観的なジャッジをしているという小西氏。しかし彼が語るように、GTAが何より望んでいるのは全車がルールに準拠し、車検に合格すること。そのため、金曜車検の段階で数値ギリギリで車両を持ち込んできたチームには声をかけているといい、さらに車検後には各チームが車両の数値を再度チェックできる“任意計測”の時間も設けられている。それはひとえに、全車に車検をクリアしてもらうためだ。

 以上のようなレース運営側の事情を加味すると、ここ数戦でレース後に結果が変わってしまうという事態が発生してしまったのは致し方のないことにも思えるが、GTAとしても、来場したファンが後味の悪い思いをしたこれらの一件は問題であると認識しているという。GTAはレースウィークの日曜日に坂東正明代表による定例会見を実施しているが、そこで坂東代表からどのような話が聞かれるかにも注目である。

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みんなのコメント

22件
  • 日本の団体が主催するレースだったら、公平性はそこそこ担保されてると思う。

    欧米の団体が主催する場合は日本のチームが不利になるように
    ルールを解釈して「あれダメ、これダメ」といちゃもんを付けてくる。
    ルール自体は公平だけど、解釈論で不公平にされてる事実。
    抗議すると「主催の指示に従わないから」とかでさらなるペナルティ。
    モータースポーツに限らず、あらゆるスポーツに共通する話。
  • エントラントがしっかりレギュレーションを遵守し、レースに臨むのは当たり前。
    走行会から世界選手権まで共通の概念。
    ワークスカーまで出ているカテゴリーで違反などあってはならないです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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