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パンクしても走れるタイヤの欠点に変化!? なぜランフラットは乗り心地が悪いのか

掲載 更新 10
パンクしても走れるタイヤの欠点に変化!? なぜランフラットは乗り心地が悪いのか

 「パンクしても走れるタイヤ」の欠点に変化あり!?

 パンクをしても一定の距離を一定の速度で走れる「ランフラットタイヤ」。これまでレクサスやBMW、ベンツといったブランドを中心に、新車装着されてきた。ただ、パンクしても走れるという圧倒的なメリットの反面、今一歩採用が拡がらず、普及を阻んできた要素が乗り心地の悪さだ。

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 しかし、いま普通のタイヤとランフラットタイヤの乗り心地格差がほぼなくなってきているという。本稿では、そもそもランフラットタイヤはなぜ乗り心地が悪いのか? という部分から最新のトレンドを紐解いていきたい。

文/斎藤聡 写真/BRIDGESTONE、LEXUS、編集部

【画像ギャラリー】ランフラットタイヤを装備するレクサスLS&UXを見る

■そもそもランフラットタイヤはなぜ乗り心地が悪い?

パンクしても一定距離を一定速度で走れるという画期的なメリットがありながら乗り心地の悪さが普及を妨げていた

 ランフラットタイヤの乗り心地はなぜ悪いのか。それを説明する前に、まずランフラットタイヤっていったいどんなタイヤ? ということからお話をしましょう。

 ランフラットタイヤは、パンクして空気圧がゼロになっても、一定のスピードを保ちながら、一定の距離を走れるように作られたタイヤです。具体的には時速80キロで80km走れるタイヤと定義づけられています。

 では、どうやってタイヤの空気圧が0キロになっても走り続けられるのかというと、タイヤが完全につぶれてしまわないような工夫が施されているからです。その方法は大別して2つあります。

 ひとつは「中子式」と呼ばれるもので、ホイールにリムよりも背の高いドーナツ状のリングを組み込み込むことで、タイヤがパンクして空気圧が0キロになっても中子がタイヤを内側から支えてタイヤがつぶれ切ってしまうのを防いでくれるタイプ。

 この方式のメリットは、そのまま従来のタイヤが使えることです。タイヤが変形して中子に干渉しなければ乗り心地も従来どおり。一見とても具合のいい方式なのですが、低扁平タイヤではタイヤの変形量が規制されるため相性が良くないこと。

 それからパンクしてしまったとき、タイヤのトレッドゴムは挟んでいますが、ほぼダイレクトに路面の凹凸が振動となってホイールからサスペンション、ボディへと伝わってしまいます。

 乗り心地への懸念もあるのですが、それ以上に深刻なのが、この振動で80キロ走る前にサスペンション周りのブッシュがちぎれたり割れたりと深刻なダメージを受けてしまうのです。

 そんなわけで、現在「中子式」はほとんど姿を消してしまいました。

■構造上「不利」なランフラットは今でも本当に乗り心地が悪い?

写真は通常のタイヤ(左)とランフラットの主流となっているサイド補強型(右)の構造比較。文字通りサイドウォールを補強することで、パンク後も一定距離走行が可能に

 現在は、ランフラットタイヤといえばサイド補強型が主流になっています。これはタイヤのサイドウォール(側面部)内側に補強ゴムを付け加えたものとなっています。

 パンクしてタイヤの空気圧が0キロになってしまうと、タイヤの側面が大きく強く屈曲してつぶれてしまうわけですが、その大きく屈曲する部分に補強ゴムを張り付ける(製造工程で)ことで、タイヤのつぶれを抑え、80km/hで80キロの距離を走行可能にしているわけです。

 デメリットは、専用のタイヤが必要なことと乗り心地が悪くなることです。

 そう、今回のお題であるランフラットタイヤの乗り心地の悪さは、もともとサイド補強式のランフラットタイヤが持って生まれたデメリットなんです。

 タイヤはサイドウォールをたわませることで乗り心地を作り出しています。もちろんこれだけではありませんが、かなりの部分サイドウォールの柔軟性に依存しています。

 ランフラットタイヤを作るメーカーも、当初(1990年代)は空気圧0キロでの走行可能距離に余裕を持たせる目的でサイド補強ゴムを厚めにしたり、耐久性の高い補強ゴムを採用していたため、サイドウォールの柔軟性が一般的な地文のようには発揮できず、乗り心地が犠牲になっていたのでした。

 その後、世代が進むにつれて、サイド補強型のランフラットタイヤも進化しており、現在では、サイド補強ゴムの見直しによって、ある程度の柔軟性を確保したり発熱を分散させ耐久性を高めるなどの技術が投入されています。

 ほかにも、タイヤプロファイル(断面形状)をラウンドタイプ(凸型)にすることで、乗り心地の改良がおこなわれています。

 ですから、サイド補強型ランフラットタイヤは近年ではかなり乗り心地が良くなっています。

 お題の「なぜ乗り心地が悪いのか」という、乗り心地が悪いのを前提とした設問は、実はかなり改善されていて、ランフラットタイヤ装着車にパッと乗っても少し走ったくらいではわからないくらいに乗り心地は良くなっているのです。

■トレンド変化で乗り心地の「差」はなくなっている!? ランフラットの「今後」

レクサスではランフラットタイヤを積極的に採用している

 これにはもうひとつ大きな理由があります。時代のニーズでもあるのですが、ここ数年、低扁平タイヤの装着率が上がっており、ランフラットタイヤも低扁平化しているということです。

 乗り心地が悪いタイヤなのだから、低扁平にしたらもっと悪くなるのではないか、と思われるかもしれませんが、ランフラットタイヤは逆に作用するんです。

 55、60偏平のサイドウォールがぶ厚いタイヤは、サイド補強ゴムの量も多くしないといけませんから、サイドウォール部はどうしても固くなりがちで、乗り心地は悪くなってしまうのです。ところが、(より低扁平で、薄い)35、40扁平になると、サイドウォールが薄いぶん補強ゴムも少なくて済みます。

 もともと低扁平タイヤの乗り心地は、タイヤプロファイルやサイドウォールとショルダーのつなぎ目あたり(バットレス)で出しているので、その乗り心地のノウハウがそのままランフラットタイヤでも使えるのです。サイドウォールが薄いため補強ゴムが少なくて済み重量もかさみません。

 ランフラットタイヤは、低扁平のほうが乗り心地が良いというのはだいぶ前から定説ではあったのですが、低扁平タイヤが急速に普及して19インチ、20インチが当たり前にみられるようになったことで、ランフラットタイヤのデメリットが目立たなくなったのです。

 個人的には、クルマの乗り心地だけでなく乗り味的な視点から見ても(現段階では)ランフラットタイヤよりも一般的なタイヤが良いと思うし、偏平率は50、45偏平程度が好みです。

 一方ランフラットの進化はというと、レクサスでは比較的積極的にランフラットタイヤが導入されていますが、BMWやメルセデスベンツでは縮小方向に向いています。技術的な進化も実は2009年くらいからほとんど見られません。

 コストや汎用性の面でもランフラットタイヤの普及にはいくつものハードルがあるのです。

 ただ、自動運転やカーシェアリングでタイヤのメンテナンスが行き届かなくなるかもしれない状況を考えると、ランフラットタイヤにも期待したい未来像はあります。

 特に自動運転では高速走行中のパンクなど、安全性の面でのメリットは大きいし、操縦性の面でもより精度の高い自動操縦を実現するためには、もしかしたらランフラットタイヤは重要な要素となる可能性もあります。

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みんなのコメント

10件
  • BMWがランフラット縮小傾向って初めて知った。ホントか?
  • 確かに乗り心地は思ったほど悪くないが、この記事で全く触れてない問題点が
    「ロードノイズ」。ランフラットはロードノイズが路面が悪いほど目立つ。
    全国綺麗な路面ばかりじゃないので古い路面走るほどノイズが気になる。
    いくら静粛性が高い高性能の車に乗ってもタイヤがそれを帳消しにしてしまうんだよね。
    そこが解消されればランフラットを装着する意味も出てくるだろうけどね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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