6月27日(金)から、ついに映画『F1/エフワン』が全国公開を迎えた。ブラッド・ピットが主演を務め、『トップガン マーヴェリック』制作陣が指揮を執り、劇伴はハンス・ジマー。ハリウッドを代表するスターが結集して作り上げられたことから、大きな注目が集まっている。
しかし、これまでF1やレースに触れてこなかった方も多いはず……そんなあなたに、映画をもっと面白く観れる、より深く理解できるF1の基礎知識をお届けします!
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今回はその後編8項目だ!
9. F1は準備が肝心
基本的にグランプリは金曜日、土曜日、日曜日の3日間で構成される。まず金曜日には2回のフリー走行(それぞれ1時間)が行なわれ、各チーム・各ドライバーがマシンに乗り、サーキットを周回する。
F1は0.001秒を争う世界。ほんの小さな微調整が明暗を分けることもあり、ここでいかに有益なデータを収集し、マシンを仕上げることができるかが勝利の鍵となる。新しいパーツのチェックもここで行なわれる。
土曜日は最終チェックとしてもう1度フリー走行が実施され、決勝レースの出走順を決める予選の時間を迎える。現在は20台→15台→10台と3セッションで下位5台ずつが脱落していくフォーマットが用いられる。
20人中最速(ポールポジション)となったドライバーが日曜日の決勝を先頭からスタートし、基本的には約305kmのレースを戦う。
なお、F1では2021年から決勝よりも短い距離を走るレース“F1スプリント”が導入され、2025年は6大会でこのレースが実施される。そのためグランプリのスケジュールも変則的となる。
10. F1マシンはどうして速い?
F1マシンは時速300km超という猛烈なスピードで走る。それだけでもものすごいが、本当の凄さはコーナーを曲がる時の性能にある。
F1マシンは軽い上、路面にベッタリと貼り付くようにグリップするタイヤを履いており、さらに空気の力で車体を路面に抑えつけている。そのため、コーナーを曲がる際の遠心力に耐え、ものすごい速さで通過できるのだ。最高速がほぼ同じ新幹線が、F1マシンと同じスピードで同じ角度のコーナーを曲がったら、おそらく転覆して大惨事となることだろう。一般の自動車も、F1マシンと同じ速さでコーナーを通過することはできない。
この空気でマシンを抑えつける力をダウンフォースという。これを車体の前後につけられた羽(ウイング)と、マシンの底面で生み出している。
ウイングの働きは、簡単に言えば飛行機が飛ぶ原理を逆さまに利用したもの。飛行機とは上下逆さまの形状の羽になっていて、これにより地面に沈み込むような力がかかる……つまり地面に向けて”飛んでいる”のだ。
一方、車体の下を流れる空気を強制的に引き抜くことで圧力を下げるという形でのダウンフォースも活用されている。今のF1では、これが非常に重要だ。
F1マシンの端の部分(フロアエッジといいます/上の写真の赤丸で囲んだ部分)は複雑怪奇な形状をしているが、これによりマシンの底面の空気の流れをコントロールしている。これがうまくいけば強力なダウンフォースを生み出すことができ、マシンの大幅戦闘力アップにつながる。
ちなみにダウンフォースを発生させると、空気抵抗が大きくなってしまう。遠心力がかからない直線では、この空気抵抗を減らしたい。そこで活躍するのがDRS(空気抵抗削減システム)だ。これはリヤウイングを構成する2枚のウイングのうち1枚が動き、空気抵抗を削減してくれるというもの。これにより最高速が伸び、ライバルを追い抜くことが容易になる。また、ライバルの後ろを走ることでライバルを風除けに使い、最高速を伸ばすこともできる。これがスリップストリームである。
これらによってものすごく速く走れるF1マシンだが、そんな中でもドライバーの生命を守るための努力は怠っていない。大クラッシュを喫しても決して壊れないようにコクピット部分(モノコックといいます)は非常に強固に作られているなど、各所に世界最高峰の安全技術が用いられている。ドライバーの前から上にかけて搭載されている“サンダルの鼻緒”のようなパーツもそのひとつで、天使の輪に見えることからヘイロー(HALO)と呼ばれる。
ヘイローは過去の事故から学びF1が導入したモノで、障害物がドライバーに激突するのを避けるは働きがある。2020年のバーレーンでロマン・グロージャン(ハース)がガードレールを突き破って炎上するクラッシュを経験した際には、頭部を守る重要な役割を果たした。
11. オシャレは足元から。F1も同じ
イタリアのピレリ社がF1用タイヤの開発・製造を一手に手がけている。
乾いた路面用のタイヤは6種類用意されていて、硬い方から順にC1~C6と名付けられている。このうち3種類が各グランプリに持ち込まれ、柔らかい方からソフト、ミディアム、ハードと指定され、ソフトは赤色、ミディアムは黄色、ハードは白色で”ピレリ”のロゴが入れられ、視認性が高くなっている。
ソフトは「速いが消耗しやすい」、ミディアムは「バランス型」、ハードは「遅いが長持ちしやすい」と覚えればよろしかろう。
各グランプリでひとりのドライバーが使えるのはソフト8セット、ミディアム3セット、ハード2セット。決勝レースではこのうち、少なくとも2種類のタイヤを使わなければいけない。この他、強い雨用のタイヤ(ウエットタイヤ/ピレリのロゴは青)と、弱い雨用のタイヤ(インターミディエイトタイヤ/ピレリロゴは緑)も用意されている。
一般的な乗用車ではあまり捉えにくい感覚だが、F1マシンに履かされ時速300km以上のスピードで走ると、周回を重ねれば重ねるほどタイヤ自体のパフォーマンスは下がっていく(デグラデーション/性能劣化というのが“F1通な”言い方だ!)。タイヤのゴムが摩耗してしまったり、極端に発熱してしまったりするのがその主な原因だ。
そのため、ドライバーは速く走りつつもタイヤを“セーブ”する技術が求められる。また、どのタイヤをどう組み合わせて使うのかが、戦略上では重要となる。タイヤを制する者がF1を制す。そう言っても過言ではないだろう。
12. 状況は旗でお知らせ
レース中には、コースサイドから旗が振られ、ドライバーにオフィシャルから様々な指示が送られる。また、コース脇のLEDで光る四角いライト(ライトパネル)でも、色を表示して旗と同じ指示が送られる。
それぞれの旗/ライトパネルの色の意味は、以下の通りである。
[赤]レース/セッションの中断
[黄]危険信号。旗が1本振られている場合は「速度を落とせ。追い越し禁止」。旗が2本振られている場合には「大幅減速、追い越し禁止。停止準備をせよ」の意味。
[赤の縦縞]滑りやすい場所があることを示す
[青旗]後方から速い車両が接近中。進路を譲れ
[白]前方に低速の車両がいる
[緑]コース上がクリア。走行に問題なし
[白黒のチェッカー]レース/セッションの終了
[黒]当該車両は停止せよ
[オレンジ色の円が書かれた黒旗]当該車両に問題あり。ピットインせよ
[黒と白の斜め2分割の塗り分け]警告
13. チームワークがモノを言うピット作業
F1はチームスポーツ。レース中のその最たる例はピット作業であろう。前述の通り決勝レースでは基本的に、少なくとも2種類のタイヤを使用するが義務づけられており、タイヤ交換のために最低1回はピットストップを行なわなければいけない。ちなみにレース途中に給油することはできない(2009年までは給油もできた)。
F1ではピット作業を行なう人数に制限は設けられておらず、20人以上が配置され、1台のマシンに対して一斉に”サービス”を行なう。ピットボックスと呼ばれる停止位置にマシンが止まってから前後左右のタイヤを交換し、マシンが再び動き出すまでは約2~3秒。史上最速記録は1.82秒だ。
一般的な自動車整備のショップでタイヤ交換を行なう場合、作業時間は30分ほど……それと比べていただくと、ものすごい早技であることが分かる。
ピット作業を行なうクルーは、グランプリに帯同するスタッフの中から選抜される。メカニックだけではなく、チームの資材を運ぶトラックの運転手が、このピット作業も担当することもある。タイヤのナットを脱着するためのホイールガンのパワーは凄まじく、タイヤとホイールは合計74kgであり、かなりのトレーニングが重要となる。
この他、タイヤのパフォーマンスが低下して手の打ちようがなくなったり、破損したパーツを交換したりするためにピットインすることもある。
14. 速いだけでは勝てない
どのようなレース戦略を実行するかが勝敗を分けることもある。チームの立ち位置やマシンとサーキットの相性、フリー走行でのデータ、予選順位を元に、レース前の会議でチームとドライバーが膝を突き合わせて、どのようなタイヤをどう使用するかを決めていく。
ただレース/セッション中は、無線交信は他者にも聞かれてしまうことが多い。テレビ中継に載せられてしまえばなおさらだ。そのためチームは「プランA」「プランB」「プランC」などいくつか戦略を用意し、その内容をライバルに悟られないようにしておくのが一般的だ。時には無線ではったりを放ち、ライバルを揺さぶることだってある。
また、いくら事前に戦略を用意していたとしても、レースの状況は刻々と変わる。例えばアクシデント発生によってセーフティカー出動となった場合、コース上を走るマシンの速度が落ちるため、ピットストップで失うタイムが相対的に少なくなる。
つまりこのタイミングでタイヤを交換するのがベストだが、本来の予定よりも早いタイミングならば、そこでピットインするのが最適なのかとか……すでに予定のピットストップを終えているが、セーフティカーが入るなら新しいタイヤに履き替えた方が得策かもしれないとか……頭を悩ませることになる。雨が降るなど天候が変わった時も同様だ。各チームはAIなどの技術も活用しながら、その時その時の最善の戦略を迅速に下すことが求められる。
コース上で前後のライバルと争っているドライバーよりもチームは俯瞰して戦況を見ることができるため、戦略に関する情報はチームからドライバーに伝えられる。ただし、ドライバーの直感や咄嗟の判断も重要となる。
戦略を失敗すると、手堅いと思われたレース勝利を逃すことも……そうなれば、レース後のチームミーティングは非常に長くなる。
15. F1を視聴するにはどうしたらいい?
日本ではDAZNとフジテレビNEXTでF1のライブ配信/放送が行なわれている。我々motorsport.comのようなモータースポーツ系ニュースサイトでも最新ニュースを日々配信しているので、ぜひチェックを!
16. F1が日本にやってくる!
そんなF1は年に一度、日本にもやってくる。舞台は三重県・鈴鹿市にある「鈴鹿サーキット」だ。1962年の開業以来、その高い難易度から多くのF1ドライバーに愛されてきた。
2024年からF1日本GPは春開催となり、2025年大会は既に終了。しかし案ずるなかれ……鈴鹿サーキットは現時点で、F1側と日本GP開催契約を2029年まで結んでおり、2026年大会は第3戦として3月27日(金)から3月29日(日)にかけて開催される予定だ。
毎年、鈴鹿は様々なチーム/ドライバーの応援グッズを身にまとったファンが大挙して訪れる。グッズを自作される方も少なくない。日本のF1ファンにとっては、年に1度のお祭りだ!
鈴鹿サーキットはF1を開催する国際サーキットだけではなく遊園地も併設されており、小さなお子さんたちも楽しめるようになっている。またチケット価格が世界で最も安いグランプリのひとつとして数えられ、公共交通機関でもアクセス可能だ(日本国内の他のサーキットでは、なかなかそうはいかない)。
F1マシンで実際にドライブすることはできないが……是非、スクリーンで観た時速300kmで駆け抜けていく大迫力のF1を生で体験してみてほしい。スピード、音、振動、匂い、熱気、緊張感……五感で楽しむ非日常がそこにはある。
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