今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「ホンダ MDX」だ。
ホンダ MDX(2003年)
MDXが北米市場で発表されたのは、2000年の秋。「アキュラ MDX」として、メルセデスのMLクラスやBMWのX5と真っ向勝負しているプレミアムSUVだ。それから2年半近くが経過して、ついに右ハンドルの日本仕様車が発売開始された。生産はカナダのアリストン工場なので、ホンダ車ではあるが正しくは国産車ではない。純然たる輸入車となる。ちなみに「MDX」という車名は、「マルチ ディメンション-X」の略で、多目的要素を高次元に進化させた道への可能性を持つSUVを意味しているという。
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実車を見るまでは「かなり大きそうだな」と想像していたのだが、実際に目の当たりにすると「思ったよりは大きくないかな」という印象だ。全幅は1955mmもあり、たしかに日本の街中では気を遣うサイズだが、北米市場で競うライバルのSUVたちが巨大化していることを思えば、彼の地ではこれくらいのサイズは必要なのだろう。
MDXの日本仕様は、モノグレードとなる。ステアリングはもちろん、シートも本革を採用し、後席用のTVモニターまで標準装備している、いわゆる「フル装備」以上の豪華な仕様だ。シートレイアウトも2-3-2の3列7人乗りを採用している。1列目は電動アジャスト付きで、2列目は60:40、3列目は50:50の分割可倒式。3列目を倒して5人乗車でもラゲッジスペースは十分以上に広いが、2列目まで倒すと、幅1490×奥行き1910×高さ895mmという広大なスペースが出現する。
フロントに横置き搭載されるパワートレーンは、北米市場でマイチェンされた新型の3.5L V6に、やはり新開発の5速ATが組み合わされる。車重は2トンを超えるが、260psと35.2kgmのパワースペックで楽々と加速していく。ATの変速やタイミングも良く、フラットなトルク特性がこのクルマには似合っている。
ハンドリングは、基本的にニュートラルなもの。足まわりのセッティングはタイヤのサイズや銘柄も含めて北米仕様と変わらないが、大陸をユッタリと走るのに最適なように直進状態のステアリング特性を少しダルにしてあるようだ。
4WDシステムは「VTM-4(バリアブル トルク マネージメント 4WDの略)」と呼ばれる、走行状況に応じて前後の駆動力を100:0から50:50にまで制御するもの。さらに後輪の左右に可変トルククラッチも備えて、LSDの機能も備えている。試乗会場には少しだけ積雪路面があったのだが、VSA(車両挙動安定化制御システム)との協調制御で巧みに4輪のトラクションを操り、30cmくらいの積雪路面を難なく走破して見せた。
日本市場でも、ハリアーやエクストレイルといった人気のSUVよりも上のポジション、いわゆるプレミアムSUVとして、ミニバン的にも使える3列シート、パワフルなV6エンジンによる安定した走り、そして優れた4WDシステムによる悪路走破性などをアドバンテージに、販売戦略を展開することになるのだろう。
■ホンダ MDX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4790×1955×1820mm
●ホイールベース:2700mm
●車重:2030kg
●エンジン形式:V6・4バルブSOHC・横置き4WD
●排気量:3471cc
●最高出力:191kw(260ps)/5800rpm
●最大トルク:345Nm(35.2kgm)/3500rpm
●ミッション:5速AT
●タイヤ:235/65R17
●当時の価格:485万円
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