約14年ぶりの新型として登場し、大きな話題となっているトヨタ・ランドクルーザー300。
世界的な評価が非常に高いランドクルーザーだが、現在他の日本メーカーではこのクラスのモデルをラインナップしておらず、ガチンコのライバルが不在となってしまった。
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しかしながら、世界に視野を広げると名門ブランドの強敵たちがいる。
そこで今回は、ランクル300のガソリンとディーゼルのほかに、ランドローバー・レンジローバーとベンツ・Gクラスを連れ出し、世界基準でのランクルの価値をチェックすることにした。クロカンSUVの王者は如何に!?
ランドクルーザー300のPOINT
・新開発TNGAラダーフレーム「GA-F」プラットフォームを採用した堅牢な車体
・頑強ながら200kgもの軽量化を実現
・80型から踏襲される伝統の2850mmホイールベースによる悪路走破性
・新開発V6、3.3Lディーゼルターボを搭載。ガソリンはV6、3.5Lターボ
※本稿は2021年9月のものです
本文/根本純、鈴木直也 写真/ベストカー編集部 撮影/平野学
初出:ベストカー2021年10月10日号
[gallink]
■ラリードライバーが最新ランクル300を試す!
根本純(ねもとじゅん) 世界5大陸、55カ国、200万km以上を自動車で走破。特に1981年からは継続してパリダカールラリーに参戦し、完走を果たす。こうした経験から、ランクルなどのヘビーデューティーモデルに対する造詣は深く、性能を見極める確かな経験と技術を持つ
ランドクルーザーは1951年、民生用として初代BJ型が誕生した。新型ランクル300は記念すべき70周年モデルなのだ。ちなみにJEEPは軍需用に1941年登場した。
1981年、発売間もないFJ60でパリダカールラリーに初挑戦した。以来、BJ70で2戦、80型ではレイド・モンゴルにも参戦したが、タフなランクルのおかげもあり計5戦で完走した。同じく今年70歳のネモジュンとしては、その成長ぶりは他人事ではないのだ。
新生“300”の第一印象はフォルムのよさだ。100系以来、やや平べったい印象があったランクルだが、300は逞しいクロスカントリーカーの「高さ」を感じさせ、面構えやフェンダー周りの抑揚ある意匠も威風堂々を体現。
写真左はプレシャスホワイトパール、右はアヴァンギャルドブロンズメタリック
大きく見せているが、80系以来踏襲される2850mmのホイールベースや、200系からの各対地角を踏襲して、オフロード性能も確保する。
ルーフ、ドアなどをアルミ化してボディ部での80kg軽量化は大いに評価するが、アフリカなどでの板金や部品供給を心配してしまう。
内装は世代ごとに進化しているが半端ない。居住性も装備操作面もクロカンの本質を集約し、使い勝手を向上させつつも“土臭さ”は微塵もなく、高級SUVそのもの。
ドライバー的には70系などの、立ち上がった見下ろすドラポジから、よりオンロード志向で快適ポジションになった。見た目同様、ヘッドクリアランス、リアシートの膝回りも200系以上にゆとりを増した。
(TEXT/根本純)
■洗練された乗り味で、高級さとタフネスを両立
左からベンツ・G63 AMG、ランドローバー・レンジローバー、ランドクルーザー300
地下駐車場からのスロープでは、ディーゼルのアイドリング直後からの滑らかなトルクで軽々走る。エンジン本体と車体の遮音性の高さからも出来のよさを実感した。
気になったのは、アルミ材の強度対策か、ボンネットの左右が一段低くなっており、車体先端が見切れない。同じく低いベンツGでは盛り上がったウィンカーで感覚がつかめる。300ではコーナーポールが欲しくなるほどだ。
街中では軽いタッチの操作で滑らかに流れに乗り、変速もスムーズかつ上質だ。
もはや比較にもならないが、70系の車軸式サスを意識させるゴツイ乗り味などは皆無。フラットなターボのトルク上昇感といい、クロカン特有のスパルタンぶりは過去のものである。
80系以来採用されるリンク式リアサスペンションは高速走行時の追従性が向上した。100系以降ではフロントの独立懸架化で、悪路での操安性は飛躍的に向上した。
そして今回の300系では従来型に加えて高級SUVのしなやかな乗り味をモノにして、心地よい。
ガソリン、ディーゼル両エンジンともV6ツインターボにダウンサイジング。時流に乗りつつ、ストレスなく応えてくれる。
ガソリン、ディーゼルともにV6としたランクル300。特にディーゼルは新開発された3.3Lで最大トルクは71.4kgmを発揮する
いずれもアイドリング領域から滑らかにトルクが発揮され、スムーズに大トルクを発揮する特性は、まさに王者の風格。
高回転まで回しての加速も、ディーゼルはトルクの力、ガソリンは加えて伸びのある上昇感が楽しめる。
このあたり同行したベンツGクラスのヤンチャな豪快感やレンジローバーの野太いV8パワーと一線を画し、ランクルには上品さを感じた。
レンジローバーとベンツGはV8で、ランクルはガソリン、ディーゼルともにV6を採用する
コスパ最強!! まさに『地球をエンジョイできるクルマ』の進化を実感した。まだ一時の試乗ではあるが、低速時のやや不整路面でのマッチングは、わずかにディーゼル優勢か。
なぜかディーゼルには7人乗りの設定がないが、年1万km以上走るならお薦めだ。
(TEXT/根本純)
■ランクル300をさらに掘り下げる!!
ランドクルーザーはオフロード系4WDとしては世界屈指のブランドで、とりわけ耐久信頼性に関しては間違いなく世界一と言われている。
ホイールベースは80系以来継承される2850mm。アプローチアングル、デパーチャーアングルなどは本格派クロカンにふさわしい実力。渡河性能は水深700mmを実現
ぼくが面白いと思うのは、この評価をトヨタが意図的に狙って獲りに行ったわけではない、という点だ。
もし、過酷なオフロード環境における耐久信頼性を優先してクルマを造ったら、答えはランクルにならない。
出来てくるクルマは軍用車両や特殊車両に近いものとなり、オンロード性能は犠牲になりコストは増大するだろう。それはトヨタの仕事ではない。
ランクルが目指しているのは、オフロード性能に優れた使い勝手のいい多目的車。それ以上でも以下でもない。
価格でも世界中にたくさんの業務ユーザーを抱えているから、そんなに高価なクルマにするわけにもいかず、コスパにも相当気を遣っている。
新開発のGA-Fラダーフレームを採用
ただし、このへんがトヨタらしいのだが、ランクルのユーザーがもっとも重視するポイント、すなわち耐久信頼性に関してだけは別格扱いで、信じられないような執念深さでそれを徹底的に磨き込んでいる。
先に「世界一を狙ったわけじゃない」と書いたが、この点に関してだけは開発チームの人たちも世界ナンバーワンという自負を隠さない。
ランクルの耐久信頼性が世界トップクラスになったのは、たぶん60シリーズあたりからだが、それを誰に誇るでもなく淡々と改善作業を20年以上続けた結果、100シリーズの頃になると「周りを見回したら誰もついてこなかった」という状況に到達。
200シリーズ以降は無人の野を行くがごとしで、今回の300に到るまでライバルといえるようなクルマは現われていない。
(TEXT/鈴木直也)
■圧倒的なヘビーデューティー性能を誇るランクル
今回のランクル300の取材には、ライバルとしてレンジローバーとメルセデスGクラスを持っていったのだが、「何よりもまず耐久信頼性」というランクル本来の“立ち位置”は明確だった。
例えばオンロードをスポーツカーのようにカッ飛ばすなら、Gクラスのほうが洗練されているしファントゥドライブ度も高い。
メルセデスベンツ・G63 AMG
まして、今回持ってきたのはG63AMGだったからパフォーマンス的にも別格。カーボンニュートラルくそ食らえという気分で、内燃機関最後の徒花をエンジョイする背徳感がスリリングだ。
いっぽう、エレガントな走りでは、レンジローバーにまさるSUVはない。端正なスタイリング、シックなインテリア、しなやかな乗り心地。にわか成金では乗りこなせない上品さとノーブルな味わいが素敵だ。
ランドローバー・レンジローバー fifty
こういうお金持ち向け高級4WDから乗り換えると、ランクル300の乗り味はよりヘビーデューティ寄り。
ダウンサイズターボ化と新型ディーゼルエンジンでドライバビリティの質は近代化されたが、少し緩めのステアフィールやセパレートフレーム特有の乗り心地など、過酷な環境下で業務用として酷使されるのを前提としたクルマ造りの方向性は踏襲。
また、これほど高度なオフロード性能を詰め込んだクルマが、エントリー500万円で買えるところも業務ユーザーへの配慮として素晴らしい。この点はトヨタ以外どのメーカーにも真似できない。
もちろん、ランクルの本当の意味での実力は、日本の環境では試しようがない。
以前、ランクル200のチーフエンジニアをつとめた小鑓貞嘉さんに話をうかがう機会があったが、ランクル本来の実力が問われるのはたとえば以下のようなシチュエーションだという。
「オーストラリアとかへ行くと、送電網の点検で毎日毎日200kmも300kmもオフロードを走行するユーザーさんがいるわけですよ。
普通のクルマだとまずひと月ももたずに壊れるんだけど、そこで壊れると乗ってる人の命にかかわる。開発者としては責任を感じるとともにファイトが湧く現場というわけです」
この写真はGR SPORTのインパネで、専用デザインのステアリングなどが装着されるが、基本的なインテリア造形は全モデル共通だ
そこまで過酷な環境で使われるランクルは世界中でも1%以下だろう。しかし、圧倒的な余剰性能がブランド価値創造の原動力になるのはスポーツカーと同じ。300km/hで走る人はほとんどいなくても、300km/h出る実力がスポーツカーの価値だ。
都会を走るランクルもそれと同じ。どんな過酷な状況でもこのクルマなら走破できるという絶大な信頼感こそが、ランクルを選ぶ最も大きな理由。それを再確認した試乗でした。
(TEXT/鈴木直也)
■GR SPORTは究極のランクル
オンロードでの操縦性、乗り心地にも優れるGR SPORT
ランクル300のGR SPORTは特別なモデルではなく、ZXやVXなどと並んで、1グレードとして設定されている。
“GR”のイメージから、オンロード志向の仕様なのかな? と思ってしまったが、さにあらず。
ランクルの目指す性能をより磨き上げる……、つまりよりラフロードでの走破性能を高めるのがランクルGR SPORTの狙いなのだ。
そのための装備として、電子制御で前後スタビライザー効果を変化させるE-KDSS、前後電動デフロック、専用チューニングされたサスペンションなどを標準装備する。
(TEXT/鈴木直也)
GR SPORTのタイヤはラフロードでの走行性能を重視した265/65R18。ZXは20インチ
●トヨタ ランドクルーザー ZX(ガソリン)主要諸元
・価格:730万円
・WLTCモード燃費:7.9km/L
・全長×全幅×全高:4985mm×1980mm×1925mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2500kg
・最小回転半径:5.9m
・最低地上高:225mm
・アプローチアングル:32°
・ランプブレークオーバーアングル:25°
・デパーチャーアングル:26°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ、V35A-FTS
・排気量:3444cc
・最高出力:415ps/5200rpm
・最大トルク:66.3kgm/2000-3600rpm
・トランスミッション:10速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/55R20
●トヨタ ランドクルーザー ZX(ディーゼル)主要諸元
・価格:760万円
・WLTCモード燃費:9.7km/L
・全長×全幅×全高:4985mm×1980mm×1925mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2550kg
・最小回転半径:5.9m
・最低地上高:225mm
・アプローチアングル:32°
・ランプブレークオーバーアングル:25°
・デパーチャーアングル:26°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型6気筒DOHCディーゼルツインターボ、F33A-FTV
・排気量:3345cc
・最高出力:309ps/4000rpm
・最大トルク:71.4kgm/1600-2600rpm
・トランスミッション:10速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/55R20
●ランドローバー レンジローバー fifty 主要諸元
・価格:2299万2000円
・WLTCモード燃費:6.7km/L
・全長×全幅×全高:5005mm×1985mm×1865mm
・ホイールベース:2920mm
・車両重量:2650kg
・最小回転半径:6.1m
・最低地上高:220mm
・渡河性能水深:900mm
・エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
・排気量:4999cc
・最高出力:525ps/6500rpm
・最大トルク:63.8kgm/2500-3500rpm
・トランスミッション:8速AT
・サスペンション:ストラット/ウイッシュボーン
・タイヤサイズ:275/40R22
●メルセデス・ベンツ G63 AMG 主要諸元
・価格:2218万円
・WLTCモード燃費:6.6km/L
・ホイールベース:4665mm
・全長×全幅×全高:1985mm×1975mm×2890mm
・車両重量:2530kg
・最小回転半径:6.3m
・最低地上高:215mm
・アプローチアングル:31°
・ランプブレークオーバーアングル:26°
・デパーチャーアングル:30°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
・排気量:3982cc
・最高出力:585ps/6000rpm
・最大トルク:86.7kgm/2500-3500rpm
・トランスミッション:9速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/リジッドアクスル
・タイヤサイズ:275/50R20
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