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建築コレクティブ、GROUPが生み出す領域横断的シームレスな空間──GQ クリエイティビティ・アワード2025

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建築コレクティブ、GROUPが生み出す領域横断的シームレスな空間──GQ クリエイティビティ・アワード2025

あらゆる分野で時代を切り拓く先駆者たちを称える「GQ Creativity Awards(クリエイティビティ・アワード)」。2025年の受賞者のひとり、建築コレクティブ・GROUPのクリエイティビティの源とは?

あるときは展覧会のセノグラファー、あるときは建築や改修を手がける設計士、さらにはアート作品を発表する活動まで。いまや裏方と表舞台、両方で名前を見かけることの多い謎のグループ、その名もGROUP。メンバーは活動時期やプロジェクトごとに変わるものの、現在のところ井上岳、齋藤直紀、棗田久美子、赤塚健と、中井由梨、以上5名で構成されている。複数のプロジェクトに奔走するメンバー全員が揃うことは難しく、井上、齋藤、中井の3名にインタビューすることになった。

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GROUP発足のきっかけとなったのは、2021年のプロジェクト《新宿ホワイトハウスの庭》。ここはもともと1957年にネオ・ダダイズムの旗手・吉村益信が磯崎新に設計を依頼した住宅兼アトリエで、その後何度かの改変を経て、2019年からアーティスト・Chim↑Pom from Smappa!Groupのアトリエになり、彼らからの依頼で外構改修を手がけた。建物と塀の間の幅1.5mほどの細長い外部空間に高床のツリーハウスやドアなどを取り付けた庭は、増築とも言えるし、実験的なインスタレーションのようでもある。彼らにとって、建築とはどのようなものなのだろう?

「一人のスターアーキテクトの名前のもとに巨額の資金を集めて大建造物をつくることだけではなく、複数の建築家や異分野も含めたさまざまな人たちと協働することで生まれる建築というものもあるのではないか。そういう思いで僕らはGROUPを結成しました。建築とは、みんなが普通だと思っていることをちょっと立ち止まって考えさせるようなものじゃないかと考えています。時間が過去から未来へと進んでいることや、当たり前の日常風景を違ったふうに見せる。そのためには従来の建築とは異なるプロセスを踏んだほうがやりやすいと思ったのです」(井上)

「建築をベースにしながら、映画監督や俳優やミュージシャンなど、違った専門性をもつ人が集まって設計について議論していく。そのプラットフォームとしてGROUPが存在するようなイメージです」(齋藤)

領域横断的な発想を軸に建築の幅を広げるその言葉どおり、2024年に京都国立近代美術館で始まり、熊本市現代美術館での開催を経て4月16日から東京オペラシティ アートギャラリーに巡回中の『LOVEファッション─私を着がえるとき』展の会場デザインには、GROUPに加えて石毛健太と楊いくみという2名のアーティストの名がクレジットされている。彼らは各自の作品を出展するのではなく、あくまで会場デザインそのものを一緒に考え、意見を出すメンバーとして参画しているのだ。「一般的には建築において図面は最上位に置かれて、それに従って粛々と施工が進みます。でも僕らはむしろ、みんなでアイディアを出しながらつくったものの記録として図面を引いているようなもので、そういう設計のやり方もあっていいのではないかと」(井上)

「横浜のBankART Stationで画家の佐貫さんの展示の会場構成をしたとき、作品を設置していく過程で佐貫さんが壁にも絵を描き始めたんです。図面上で予期できない出来事を通して空間が立ち上がっていくのはかなり面白いことだと感じました」(齋藤)

彼らの領域横断的な発想に接すると、建築とアートを分けて考えること自体が旧弊のように思えてくる。

「そもそもルネサンスの時代、ミケランジェロは絵画を描き彫刻をつくる一方で、サン・ピエトロ大聖堂など大建造物の設計まで手がけたわけですから。彼にとっては全て同じ範疇での活動だったのだと思います」(井上)

それらが細分化され、違う職業としてカテゴライズされるようになったのは近現代のことであり、GROUPのアプローチのほうがむしろ古典的かつ根源的なのかもしれない。

「人が何をどう認知し、どう切り分けるか、その境界線をつくるのが美学だと考えています。とすると、たとえば住宅をつくるときどこまでが家庭の問題で、どこからが社会の問題なのか、その境界を設定できるのが設計で、建築も美学として扱うことができる。その際にアートなどの分野も設計に関わってくる可能性は大きいですよね。細分化された建築のあり方のみで突き詰めようとすると無理がでてくると思います。それとは違う境界線を引くために、様々な分野の方に設計者として入ってもらっています」(井上)

「どのプロジェクトでも、立ち止まって今ある現状について考えるというスタンスは同じですが、一般的に建築って完成までにかなり時間がかかるものです。竣工が4年後だとしても、そのプロジェクトについて熟考しているのは“今”なので、そこにはどうしてもギャップが生まれちゃう。一方で展示は期間が短いので、今思っていることをすぐに発表できるし、アップデートもしやすい。両方をバランスよく保っていけたらと思っています」(中井)

最新作は、大阪・関西万博の《トイレ1 夢洲の庭》その“自分たちの考え”をラディカルな方法で提示した最新作が、大阪・関西万博での《トイレ1 夢洲の庭》だ。来場者が利用できる11のトイレの個室それぞれに入り口と出口があり、用を足して出口から出ると、共用の洗面台と一体化した庭が目の前に広がる。

「人間のための万博会場の中に、人が立ち入れない場所をつくるというのがコンセプトです。夢洲は1970年代に宅地開発のために埋め立てが始まったもののバブル崩壊で計画が頓挫。放置された土地は一時、絶滅危惧種を含む希少な鳥類や植物が育つ生態系が生まれましたが、万博のために再び更地になりました。そんな、かつて存在した生態系を再現したのが、この庭です」(井上)

「開発前の土地の植生を調べ、その種を植えました。会期中には繁茂して荒れ放題になるかもしれないけれど、それこそがかつてあった原風景。でもトイレの隔壁の向こうにはパビリオンが立ち並んでいる。あり得たかもしれない未来を混ぜて見せるのが狙いです」(中井)

「庭」や「引越し」など毎回異なるテーマについてのインタビューを主体とする書籍『ノーツ』を発行することも、展覧会の会場や什器に使われた資材を希望者に譲って循環させるサブスク制のプラットフォーム「ことの次第 / Way of Things」を運営することも、彼らにとっては広義の“設計”だ。従来の建築の枠組みを自在に超えて、当たり前と思われていた現状や思考を組み直し、他者を巻き込みながら新しい視野を提示する。属人的だったクリエイティビティがよりオープンな場へとひらいていく未来を感じさせる5人組なのだ。

【GROUPの5人に影響を与えたもの】リチャード・ミズラックの写真集『Desert Cantos』(井上岳)アメリカ西部のランドスケープが核施設建設など人間の手によって変容していくさまを捉えた1988年刊行の写真集。「人間が生息できない風景が美しく感じられることについて考えさせられます」

ある840mの暗渠(齋藤直紀)「擁壁や塀、民家の軒先に置かれた植木鉢や家具など、個人による非制度的な設えが連続的に現れる風景に対して、こうした匿名的な設計要素の集積がいかにして形成し得るのかについて考えています」

渡り鳥のいる風景(中井由梨)「小さい頃に家族でよくバードウォッチングに出かけることがありました。田んぼに車を止めて見た、北からやってくる渡り鳥の景色がとても印象的で。人が介入しない世界の存在について考えるようになりました」

ラウレンツィアーナ図書館のミケランジェロ設計の階段(赤塚健)フィレンツェのサン・ロレンツォ教会内にある図書館に続く階段。「ある概念から外れることで生まれる自由と美しさを教えられます。海老名芸術高速プロジェクトのスロープの設計で参照しました」

家族旅行(棗田久美子)「知らない場所や街に家族と出かけて、思いのままに散策することでインスピレーションを得ます。遊んだり行き止まりに迷い込んだりしながら、一人だと見過ごしてしまう新たな視点や発見に出会えるのです」(写真は白浜にて)

【改修設計、展示発表、会場構成。多岐にわたるGROUPの活動】会場構成でアーティストをサポート豊田市美術館で開催されたアーティスト・玉山拓郎の『玉山拓郎:FLOOR』展の会場構成を担当。館内の複数の展示室を、建築とも構造物とも立体作品とも取れる巨大な物体が貫くように設置された前代未聞のインスタレーション。カーペット地で覆われた“物体”が、ある部屋では梁や床となり、あるいは壁から突き出た彫刻にもなり、陽の光の移ろいによっても見え方が刻々と変化し、人間が持っているスケール感を脅かす。美術館の建築ごと作品の一部とする作家の画期的な意図に並走した。作品世界を成立させるため、防火シャッターやコンセント、非常灯、ライティングレールなど普段は気にかけない部分まで綿密に計算した空間づくりを設計者の立場でサポートした。

都市の諸問題を顕在させるエキシビション2024年に東京・歌舞伎座タワー22階のマイナビアートスクエアで開催されたGROUPの個展『島をつくる』。住宅改修の際に出た産業廃棄物を展示室に持ち込み、建材100%のコンポストを形成した。実際に埋立地を造成することなく「人工島」をつくるという、実験的なインスタレーション。ガラスを砕いて砂にするなど、産廃の最終処理場で行われている作業を人力で行う展示を通して、都市開発にまつわる諸問題を示唆する。

DIYから生まれた狭小空間のユニークな庭《新宿ホワイトハウスの庭》2021年。1957年に磯崎新によって設計され、ネオ・ダダイズムの拠点だった東京・新宿区百人町の建物をギャラリーに改修する際、外構部分をGROUPが担当。建物と塀の間の狭小スペースを、バー・カフェ・アートスペースのための庭に整備した。わずかな工費で新しい概念の庭を出現させた。老朽化した建物に負担をかけないよう、入り口の半円の庇、ハシゴをかけたバルコニーはそれ自体が自立するように設計されている。

異分野の人材を設計に巻き込んだプロジェクト《海老名芸術高速》2021年。平成の初めにハウスメーカーが建設した米軍基地従事者のための7棟の住宅が空き家となり、オーナーからの依頼でアトリエ付きのシェアハウスに改修。設計メンバーとして映画監督の清原惟、劇作家・写真家の三野新が参加。そのほか俳優やダンサー、ミュージシャンたちと一緒に共同生活をしながら設計について議論を重ねた。かつてこの家に住んだ人々の生活の痕跡を見つけ、それを設計に再構築させている。たとえば壁や床の一部は、住人の痕跡や裏庭を歩く猫などをモチーフとして街角に描かれたグラフィティを思わせる形で切り取られ、開口部になっている。

グループ/GROUP井上岳、齋藤直紀、中井由梨、棗田久美子、赤塚健、5人による建築コレクティブ。都市開発や建築のあり方への問題を提起し、実践過程そのものをアート作品へと昇華したプロジェクトを多数手がける一方、アート系展覧会の会場構成も行う。代表作に《海老名芸術高速》(2021/改修)、ATAMI ART GRANT《浴室の手入れ》(2022)、個展に『島をつくる』(2024)など。

写真・加藤純平  文・松原麻理  編集・橋田真木(GQ)

https://media.gqjapan.jp/photos/680870b64477f9338fb3b11c/master/w_1800,h_700,c_limit/CA2025_gqbunner_1800x700ii.jpg

文:GQ JAPAN 松原麻理

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