定期観光バスで、また高速バスでもいまどきは2階建てバスという存在はそれほど珍しくなくなっている。が、ルーフを切り取ったオープンバスとなると、スペシャルなバスとして“乗りたい願望”が湧いてくる。
すでに定期観光便「オーソラミオ('O Sola mio)」として運行しているこのオープントップの2階建てバスだか、その先駆者であるはとバスがこの春、最新型を制作して発表、新たなマスコットネーム「Tokyo Open Top Tour」を冠し、すでに運行を開始している。
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なお、これまでの「'O Sola mio」も今後は「Tokyo Open Top Tour」に順次変更される。
文・写真/バスマガジン編集部
【画像ギャラリー】新型オープントップ2階建バスの外観・内装 さらにはコクピットからエンジンまで写真で徹底紹介!
■オープントップバスの歴史は意外と古い。そして着実に進化を遂げている
発着はJR東京駅丸の内南口にある、はとバスターミナルだ
観光バスの世界において、オープントップバスという存在は実は1965年にはすでにあった。ただこのバスはモノコックボディの観光バスのサイドウインドーから、上半分をザックリと切り取ったスタイルで、現在なら安全面ばかりか、ツッコミ満載の車両。
ただし当時は、オープカーの爽快さをバスでも味わえる!! と、かなり大人気のバスであった。
時代は飛んで2009年。2階建てバスは普通に走っており、高い目線からの眺望の良さ、1台で多くの乗客を運べる性能などはしっかりと定着し、利用客も“階段のあるバス”を楽しみにチョイスしていた。
しかしこの年、さらに特別感のあるバスが登場した。それがオープントップバスだ。ルーフが切り取られ、文字通りの青天井!? 定期観光ニーズでは眺望面積が爆発的に増え、東京タワーの駐車場から着座したしたまま、タワー頂上の“トンガリ”を見ることができるようになった。
もともと2階建てバスという高くて広い目線が魅力のバスだけあって、オープントップの威力は絶大、すぐにはとバス都内観光の花形となった。この最初のモデルはドイツ製の「ドレクメーラー メテオール」という外車。
当時は改造ノウハウが確立され切っていないことから、いわば“丈夫そうな車両”がチョイスされたようだ。
当時は国産にも三菱ふそうエアロキングという2階建てバスの名車があり、高速、定期観光、貸切など多くのニーズで全国で大活躍している。ただしこのころ、2010年を持って製造が終了。現時点で最後の国産2階建てバスとなった。
その後はとバスは、新たな2階建てバスとして、ベルギーのバンホール車と日本向けの車両を開発、2016年に「スカニア バンホール アストロメガTDX24」の導入を果たした。
本国仕様との大きな違いはボディサイズ。日本では全長12m×前幅2.5m×全高3.8mという規定があるが、欧米のバスはもう少々大きい。この日本向けボディサイズを実現するには、かなりの改造・開発が必要となる。
現在ではこのアストロメガは、はとバスではもちろん、全国の事業者で定期観光バス、高速路線バス、貸切バスとして大活躍している。
■久々の新型。それも英国からの輸入車……コイツはケタ違いの実力だ
堂々たるフォルムのエクリプス ジェミニ3。スラントしたフロントパネルだが、2階床部分がせり出したようなデザインだ。ヘッドライトは4灯のプロジェクターで、某汎用人型決戦兵器の2号機に似た印象の顔つきだ
このたびの導入となった[エクリプス ジェミニ3]も[アストロメガ]同様に輸入車だ。イギリスの「バンフォード バス カンパニー(Bamford Bus Company)」車との共同開発で、やはり日本規格のサイズに適合させるために研鑽が重ねられ、いくつもの基準をクリアしての導入実現となったものだ。
さて、このエクリプス ジェミニ3。そのボディサイズは全長11.46m×全幅2.47m×全高3.79mと全高を除けば日本規格最大値よりもやや小振りの数値だ。その堂々たるボディをも上げると、“小さめ”などとは間違っても思えないが、いただいたデータ表ではそうなっている。
1965年「走るパーラー」と言われた豪華仕様車の屋根を切り取った初のオープンバス
特に全長は大型路線バス(長尺)とほぼ同じ。謙虚なサイズだが、これには強度、インテリアレイアウト、もともとのボディサイズから改造する際の事情などといった理由がある。そしてまったく不便さは感じない。そして車両総重量(GVW)は16t未満に抑えられている。
これまで多くの2階建てバスでは、後2軸+前1軸の計3軸で全体を支えていたが、このエクリプス ジェミニ3は前後1軸の2軸仕様だ。
本来バス(大型車)には各軸に荷重制限があり、重量の重いバスは軸荷重と全体のバランスから3軸とされてきた。2階建てでなくても、かつては装備を多くしたスーパーハイデッカーなどにも3軸車があったほどだ。
今回、エクリプス ジェミニ3が2軸で登場したことには、初見で驚きがあったが、この“軽さ”は走行、環境、経済の各面で絶対的にアドバンテージとなる。
2009年 オー・ソラ・ミオ。ドイツ、ドレクメーラー・メテオールのルーフをカットした2階建てバス1号車
そして一連の2階建てオープントップバスは、高速道路を走ることができる性能も持っている、ということも利用者にとって重要でありがたい能力だ。強度や着座設備、シートベルトなどの安全対策をクリアしないと許されない高速走行。
これまでのオープントップバスも首都高速走行は目玉だっただけに、この新型だってそこは譲れない。よってコースにはレインボーブリッジが含まれるが、走行するのは「上の段」。
着座高の高い2階建てバスで、しかもオープンエアでの首都高クルーズは、これまでに味わったことのないであろう体験になるはずだ。なお、すべてのバス(一般路線車を除く)乗車時に言えることだが、シートベルトは確実に装着することをお忘れなく。
■ツアーメニューが考慮された車内レイアウトにも刮目!!
後方から前方を見た2階席。左側にあるオレンジの手すりで囲まれた部分が階段口だ
さて車体中央のスイングドアから乗車すると、ノンステップの床に2×3席の1階席が配置されている。ドアを背にして右側、車両の後方を向くと2階席への階段がある。なお、乗車したドアのすぐ横には、クルマ椅子用のスペースが設けられている。もちろんバリアフリー乗車にも対応している。
階段は途中から左方向へループして上る。6段目が2階席のフロアだ。そして2階では開かれたルーフのために、圧倒的な開放感を得ることができる。ルーフのある2階建てバスだと、シングルフロア車よりも転じようが低くなり、立ち歩きの際には圧迫感があるほどで、長身の人だったら背を曲げながらの移動となる。
これも2階建てバスの“味”として楽しいモノだが、やはりオープンルーフの特別感は格別だ。
シートは4×13列。ただし、階段の上り口があるので進行方向左側は3列少ない。2階の乗客定員は46名で、最後部にガイド席が2席ある。つまりこの車両は、ドライバー×1、ガイド×2、クルマ椅子×1、1階乗客6、2階乗客46の計56名が乗車できる。
開かれたルーフ部は、乗用車でいうところの「キャンバストップ」。ルーフの水平ピラー部(ステー)は残っているのでオープンカーとは違うテイストだ。
閉じるルーフの素材はキャンパス地で、折り畳まれながら開して後部に収まるため開放面積がとても広い。畳まれたキャンパスが収まる最後尾席の天井も、オープン状態となる。
超ウルトラスペシャル席の最前席は4席。シートカラーがオレンジだ。慈雨来の2階建てオープントップバスでは、この最前席が対面式のガイド席になっていたため、客席は2席しか取れなかったが、エクリプス ジェミニ3ではそれが解消された
逆に2階建てバスでは、超ウルトラスペシャル席であるはずの最前席、フロントウインドー正面のため、眺望はダントツの素晴らしさながら、前方に位置する屋根にほぼ被られる状態となる。それでも開放感が割り引かれはしないので、1度は乗っておきたい席だろう。
なお訪日外国人の需要も見込んで、バスの走行に合わせてリアルタイムで英語、中国語、韓国語、スペイン語、インドネシア語、タイ語、フランス語、ベトナム語の案内を聞けるガイドシステムを導入。
乗車時に貸し出されるスマホサイズの端末でサービスを受けられる。さらにこの端末ではGPS連動マップで自車位置も表示される。
2021年4月現在の運行ルートは東京駅丸の内南口の“はとバスストリート”にあるターミナル発着で、日比谷、東京タワー、レインボーブリッジ、東京スカイツリー、雷門などを巡る約150分のコースが用意されている。
1日2階で10:00発と14:00発だ。料金は大人2600円、子ども1400円(4歳~12歳/3歳以下は乗車不可)。乗車するには、webを検索して申し込むだけ。コース番号はA1309だ。
はとバスホームページ(リンク先)
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