徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は、デ・トマソとフォードによる伊米合作のスーパーカー、デ・トマソ・パンテーラGTSを取り上げます。’70年4月のニューヨークショーで発表され、’71年より販売されたパンテーラは、イタリアンテイスト溢れるボディワークに、フォード製V8エンジンを搭載した“実用的な”スーパーカーでした。フェラーリやランボルギーニとは別の異色モデルを、徳さんはどう評価したのか。『ベストカーガイド』’79年2月号初出の試乗記を振り返ります。
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年2月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
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■量産できるスーパーカー
パンテーラの開発はランボルギーニのチーフデザイナーを務めたジャンパオロ・ダラーラで、デザインはトム・ジャーダ(ギアやピニンファリーナで活躍し、ベレットMX1600GTもデザインした)。北米ではフェラーリやランボルギーニに比べて安く、フォードの販売網を使ったこともあって販売も好調だった
アルゼンチン生まれのレーシングドライバー、アレグサンドロ・デ・トマソはそのレーシングテクニックもさることながら、商売のテクニックも相当なものだ。彼はイタリアに住み込んで最初はごく小規模にスポーツカーの生産をはじめた。
彼が作った最初のスポーツカーはフォード製の1.5Lエンジンをミドシップに載せた小さなミドシップ、デ・トマソ・ヴァレルンガである。このミニフェラーリともいうべきスポーツカーは比較的多くのレーシングドライバーによりレースに出場した。
デ・トマソ・ヴァレルンガ。全長3870×全幅1590×全高1050mmという小さなボディに、フォード・コーティナなどに使われた直4OHV、1.5Lをミドシップに搭載した2シータースポーツカーだった
デ・トマソが世界中にその名を知られ、かつスーパーカーメーカーの仲間入りを果たしたのは1966年のトリノショウに発表したマングスタからである。フォードのV8をミドシップにおき、ベルトーネの迫力あるボディをもって大ウケした。このあたりから デ・トマソは好調であり、パンテーラはフォードのバックアップを受け、アメリカに輸出する。
パンテーラの大きな特徴はエンジンフッドを開けても、そこに輝くばかりのDOHCのV型12気筒やV型8気筒はなく、そのへんにゴロゴロしている大量生産のフォード製V8があることだ。
このことはマニアにとっては面白くないが、実際に乗ってみるとたいしたパフォーマンスを持ち、アメリカンV8だからタフでもあり、サービスも比較的容易というメリットがある。
■ボディスタイルは迫力のひと言
パンテーラGTSのスタイリングは、スーパーカーの流儀を踏襲しているが、どことなく荒削りだ。そこが独特の迫力を感じさせる原因だろう。
全体のシェープはウェッジで特にフロントはシャープにとんがっている。その下にかなり大きなエアダムスポイラーがあるのだが、黒く塗られているため目立たない。
キャビンから後方へかけては、グッとボリュームも増し、厚みを持つ。大きく張り出したオーバーフェンダーは前8J、後10Jという超幅広のホイールを覆う。このスタイリングを生み出したのはギアやピニンファリーナで活躍したアメリカ人のトム・ジャーダで、このへんのところも異色なのだ。
コックピットはスーパーカーの教科書通りだが、どちらかといえばシンプルで、シートは本格的バケットタイプで、レーシングカーのようにファイバーに薄いクッションを張り、その上にビニールレザーを張ったものだが、見た目よりは疲労が少ない。
ダッシュボードは、目の前にタコメーターとスピードメーターがあり、どちらもドライバーに向けて少し内側に向けられている。スティアリングホイールはアメリカ車的でクラッシュパッド入りだ。
センターコンソールには各種メーターが並び、その後方にシフトガイドを切ったシフトレバー、ナイフのように薄い、そして強靱なシャフトを持つ。ラジオ、ステレオのたぐいはないが、少なくともエンジンがかかっている間はその力強いビートがコックピットを支配し、とてもそれどころではない。
■意外なほど扱いやすいV8
パンテーラのパワーユニットはすでに何度も書いたとおりフォード製だが、このV8、OHV 5765ccでキャブレターはダウンドラフトの4バレルキャブ1個、フューエルポンプもダイアフラムによるメカニカルというシンプルさなのだ。しかし、パワーは決してシンプルではなく、330ps/5400rpm、トルクも46.0kgm/3800rpmとものすごい。組み合わされるトランスミッションは5速だ。
エンジンはV8 OHV、5.8Lをミドシップに搭載。トランスミッションはZF製の5MT
運転しづらいかといえば、そうでもなく、都内の大渋滞はともかくとして、少しでも動いていればサードはおろか、フォースでさえも走れる。その粘りは驚くほどだ。とにかく低速トルクが太いのだ。クラッチは当然重いがフェラーリ308GTBほどではなく、渋滞でもローのまま我慢していられる。
お馴染み谷田部のテストコースでの走りは、さすがパンテーラの名に恥じないものだった。0~400mを14秒89で走り、最高速テストは220.18km/hを記録した。パンテーラにとっては不本意かもしれないが、まったくのニューカーであり、エンジンが充分走り込まれていなかったことを考慮すれば、すばらしい数字といえ、エンジンが調整されれば、0~400mは14秒フラットくらいで走り、最高速は240km/h以上マークするだろう。
パンテーラ(豹)の名の通り、リアスタイルは野獣が飛びかかりそうな雰囲気を感じさせる。ボディを製作したのはカロッツェリア・ギア社
■バランスに優れたハンドリングと乗り心地
パンテーラGTSは200km/hで走行しても直進性は極めて安定している。スティアリングホイールを軽く握るだけで矢のようにまっすぐ走る。もちろん荒れた道ではファットなタイヤが災いし、左右にスティアリングがぶれてしまう。ラック&ピニオンスティアリングはキックバックがきつく、この点は大いに気になるところだ。
ハンドリングに関していえば、やや大きめのロールを伴ってコーナーし始めテールはグッと沈み安定感は充分だ。そのままスロットルを踏み込んでいくとほんの少し、アウトへはらみ始める。スロットルを少し戻すと果たせるかなテールが滑り出す。これは意外に唐突だが、タイヤをピレリP7にすることで、かなり違うという。スーパーカーの性能を引き出すには、いいタイヤは必要条件だろう。
乗り心地はどうだろう? サスペンションのセッティングは硬めで、それは80km/h以下で顕著だ。しかし、100km/hを超えると乗り心地が変わり、フラットでビシッとしたものに変わる。エンジンが神経質でないこともあって、高速巡行は気持ちのいいものだ。
パンテーラGTSの最大の魅力は、価格が安い!? ことだ。安いといっても1080万円もするが、これはフェラーリ512BBやランボルギーニ・カウンタック、マセラッティ・ボーラに比べて明らかにリーズナブルなのだ。そして私個人の驚きは、この種のスーパーカーでもけっこう都内を走らせることができるということだった。
パンテーラを語る徳さん
◎デ・トマソ・パンテーラGTS主要諸元
全長:4270mm
全幅:1830mm
全高:1100mm
ホイールベース:2512mm
車重:1420kg
エンジン:V8 OHV 5763cc
最高出力:330ps/5400rpm
最大トルク:46.0kgm/3800rpm
トランスミッション:5MT
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
'79年当時の価格:1080万円
本誌テスト結果
0~400m 14.89秒
最高速 220.18km/h
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