連載/石川真禧照のラグジュアリーカーワールド
メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルといえば「Sクラス」だ。2013年に先代が発売されてから、約8年間で累計販売台数は50万台を記録。「世界で最も選ばれているラグジュアリーセダン」の1台となった。その「Sクラス」が2021年1月にフルモデルチェンジをはたし、日本に上陸した。メルセデス・ベンツといえば「私たちは自動車を発明した責任があります」と言い切るほど、クルマ造りには絶対的な自信をもつメーカーだ。その会社が造るフラッグシップカーがどのような進化を遂げたのか、クルマ好きの方なら興味は尽きないはずだ。
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新型のボディーサイズは、全長5210×全幅1930×全高1505mm、ホイールベースは3105mmの標準モデルと、全長5320mm、ホイールベース3215mmのロングモデルが用意されている。
ここで気になるのは、2020年11月に改良をされた、レクサス「LS」の存在だ。2017年に5代目に進化した時は、消化不良の部分も目についたが年次改良ともに中身は進化を続けてきた。レクサス「LS」とメルセデス「Sクラス」というと、比較する対象ではないと思っている人もいるかもしれないが、ここ日本においては「Sクラス」の最大のライバルはレクサス「LS」なのである。今回は、この新型「Sクラス」とレクサス「LS」を比較しながら、進化のポイントを確認していきたい。
ちなみに、新型「Sクラス」もレクサス「LS」への対向意識を感じさせる内容となっている。ちなみに「LS」は標準モデルだけで、ロングは用意していない。サイズは、全長5235×全幅1910×全高1450/1460mm、ホイールベース3125mm。「Sクラス」の標準モデルと全高を除けば、20mmくらいしか差はない。
次は、パワーユニットを見てみよう。新型「Sクラス」には直6、3.0ℓのガソリンターボ、435PS、520Nm+22PS、250Nmの電気モーターと48Vの電気システムで回生ブレーキによる発電を行なう方式が採用されている。その出力は1kWhだがスタート時やシフトチェンジ時に使用するモーターの動力になる。つまりマイルドハイブリッド車だ。
もうひとつは直6、2.9Lのクリーンディーゼルターボで、こちらは330PS、700Nmの性能を誇る。この2つのパワーユニットは、標準モデルとロングの両方に搭載されている。駆動方式は、全グレード4WD(4MATIC)で、9速ATが組み合わされる。グレードは、それぞれ1グレードなので、合計4グレードということになる。ただし、発売記念として、ガソリンエンジン+ロングモデルの限定車が2モデル加わる
気になる価格帯だが、ディーゼルの標準モデルが1293万円。ガソリンの標準モデルは1375万円。これをレクサス「LS」と比較してみると、「LS」のV6、3.5ℓツインターボ・バージョンLのAWDは1386万円、V6、3.5ℓ+モーターのハイブリッド500h・バージョンL・AWDは1534万円となっている。「LS」は装備などを考慮するとバージョンLが比較対象に適していると思われるが、価格に関していうと「Sクラス」のほうが安いことがわかる。
ところで、燃費が気になるという人のために、数値を比べてみよう。メルセデス・ベンツ「S400d」はWLTCモードで12.5km/ℓ、「S500ロング」でも11.0Km/ℓだ。ちなみに、レクサス「LS500h」は12.6kmℓ、ツインターボの「500」は9.5km/ℓ。「Sクラス」のディーゼルターボは「LS」のハイブリッドとほぼ同じ燃費。ガソリン車では「Sクラス」のほうが優れている。
そんなことを考えながら、「Sクラス」に乗り込んだ。ドアハンドルはメルセデス・ベンツ初の格納タイプを採用。キーを持った人が近づくと自動的にせり出してくる仕組みで、事故など緊急時もドアハンドルがせり出して、乗員を救出しやすくするという。運転席の乗り降りはラクで、全高が1505mmなのでAピラーやドア上縁との間には余裕がある。ちなみに、レクサスは1460mmなので「Sクラス」のほうが45mm高い。この差は前後席の乗り降りのしやすさに関わってくる。
試乗は「S400d」から。直列6気筒のディーゼルターボは、スタートからのアクセルオンでやや唸り音が室内に入っている。走り出せばその音はまったく気にならない。このエンジンのレッドゾーンは4600回転から。フルアクセル時には4500回転まで上昇し、シフトアップする。0→100km/hの加速は、実測で7秒台後半。走行モードは、エコ、コンフォート、スポーツなど6つのモードから選択できるほか、シャーシも選択可能。ガソリン車は0→100km/hが5秒台でかなり速い。
操作系と乗り心地だが、軽めのハンドルとやや上下動の大きいサスセッティングが特徴。ハンドリングでは標準装備の4WSは、低速域で急ハンドルを切った時、後輪の動きがシャープになったことがわかるぐらい軽い。自然な動きで、低速から高速までをコントロールする。ちなみにハンドルは、ロック・トゥ・ロックが2回転ジャストなので、手首の動きでも十分向きが変わる。
標準モデルの後席は、カタログ上は乗員定員3名だが、中央部はクッションも薄く、ヘッドレストも簡素なので、左右1名ずつが快適といえるだろう。床面のトンネルは大きいが、前席からのコンフォートの張り出しも小さいので、左右の往来はできる。これはロング仕様も同じだ。セパレートシートでないのが実用的だ。ちなみに、ロングモデルは助手席後ろの座席に、フットレストも装備。リクライニングシートでしっかりくつろぐことができる。
しかも、世界初の後席用エアバッグも備わっている。シートベルトに内蔵されたエアバッグをはじめ、乗員全員の安全を確保してくれる。安全といえば、座席位置、ハンドル、ドアミラーの位置などを記憶させ、それを認証するのは運転者の顔、指紋、声の3種類から選べる。テレマティックスサービスも標準設定されている。
今回、新型「Sクラス」を2台試乗したが、フロントウインドウの映り込みや、乗り心地の設定など、まだ改良の余地はありそうだ。しかし、発売から毎年のように熟成させていくのが、ドイツ流のクルマ造りでもある。価格面でもレクサス「LS」と比較できるまでにハードルを下げてきた新型「Sクラス」は、日本でもラグジュアリークラスでヒットするに違いない。問題は、メルセデス・ベンツに対する一般の人たちの敷居が高すぎるという潜在意識。
実は「LS」を購入するより「Sクラス」のほうがお財布にも優しい。「儲かってますね」という言葉は、「Sクラス」に乗る経営者より「LS」に乗る経営者にかけたほうがいいのかもしれない。
■関連情報
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/s-class/saloon/explore.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博 動画/吉田海夕
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みんなのコメント
全高も高いから全体的にデカいんだよね
結構邪魔