ミニモト時代からアメリカに挑戦し続け、近年ではアメリカに拠点を移してモトクロスの途をたどってきた下田丈(17歳)。先週よりお届けしているとおり、最後の全米アマチュア選手権を戦って、1週間後8月11日にAMAプロデビューを果たした。
LUCAS OIL PRO MOTOCROSS CHAMPIONSHIP Rd.10 ユナディララウンド
8月11日
ニューヨーク州ユナディラ
ライバル対決! スズキ KATANA / カワサキ Z900RS / ホンダ CB1100RS を乗り比べ!
伸び悩んだタイムドプラクティス
予選ヒートがある全日本モトクロスとは異なり、AMAの場合はタイムドプラクティス、つまりタイムアタック予選が2本おこなわれる。このうち、ベストタイムを採用して上から40名のライダーが決勝を走ることになるわけだ。15分のうち、10分が計測ということでせいぜい4本のチャンス。クリアラップもとりづらく、昨晩の雨がたたって路面も荒れていて、タイムを出すことは容易ではない。
そんな中でも、ポイントリーダーの証レッドプレートをつけたアダム・シアンサルーロは、目に見えて好タイムをマークする走りを魅せる。我らが下田は、少し走りづらそうな気配だ。
タイムドプラクティス、1本目
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
と、見ての通り振るわない結果。おおよそトップから5秒。10、11位にはロレッタリンで争ったカーソン・マムフォード、ジェット・ローレンスの姿もある。下田によればローリングセクションの荒れた部分の処理にてこずり、それだけで3秒はかかったとのこと。なにより、下田の後ろにトップランカーのマケラスや、マーチバンクスがいるのだから結果が荒れているのだろう。それに、下田は路面が荒れれば荒れるほど得意だ。だから、2回目は期待が持てそうだったのだが…
タイムドプラクティス、2本目[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
2秒つめた下田に対して、トップのアダムは4秒つめ、マケラスら1回目でタイムが出なかった連中も上がる結果に。これはレース後のインタビューでわかったことだが、ロレッタリンで負傷した肩が相当に痛み、ペースを上げることが難しかったとのこと。「コースも難しかったですね」と下田。一抹の不安を抱え、下田丈初のAMA本戦へ駒が進む。
幸運にも、イン側グリッドへ21番手のタイムゆえ、グリッドチョイスも21番目。特にアウト側は激しいぶつかり合いでコース外に弾き出される傾向にあるユナディラ。だが、下田は幸運にも残っていたイン側のグリッドに入ることができた。肩の痛みもうまく収まっていて、偶然が重なり好条件をつかむ下田。
スタートは、悪くなかった。中盤あたりの位置につけて2コーナーへつっこんでいく。同じウエアのチームメイト達が固まっていた。しかし、その直後にチームメイトのR・ハンプシャーと接触。下田は3コーナー目を折り返して集団で飛ぶコンビネーションジャンプの時点でほぼ最後尾へ。最悪の立ち上がりであった。
トップを引いたのは、予選でもずば抜けていたアダム・シアンサルーロ。これを、ディラン・フェランディスが執拗につけまわし、二人のデッドヒートが続く。加熱するトップ争いは、ぐいぐい3番手以降を引き離した。予選でも成績のよかったアムゾイルホンダのジェット・ローレンス、カーソンマムムフォードも好調だった。下田は、追い上げにかかるが、序盤のミスで失速。さらに転倒車を避けられずヘルメットバイザーを失うほどの転倒を喫し、7周目にレースを離脱した。
奇しくも、ジェットも同じようにバイザーを失う転倒で後方へ沈んでいく。カーソンは、後半にタレて急激にペースを落としつつも、16位を死守。ジェットは21位とホンダルーキー組にはきついモト1だった。1週間前のロレッタリンで最優秀の「ホライゾンアワード」に輝いたジャレク・スウォルはさらにタレが響いて22位の結果。レースはアダムが耐えて1位を守り抜いた。我らが下田は残念な結果だったが、トップ争いは大いに盛り上がったのだった。
器の片鱗をみせる下田、モト2モト1は、離脱したものDNF扱いにはならず36位。だが、当然グリッドを選ぶのも36番目であり、今度こそアウト側へ追いやられてしまった下田。案の定、スタートはコース外へはじき出され、モト2も最後尾からの追い上げを強いられる。だが、ここからはモト1とは様子が違った。
下田はレース後、語る。
「肩の痛みがおさまったこともよかったのですが、走り方がわかったことが大きかったですね。ペースをしっかりあげることができるようになり、追い上げを開始しました」その言葉通り、1周目では33番手、2周目で21番手、3周目では14番手とロレッタリンと大差ないレベルでごぼう抜きの展開に。スウォル、マムフォードらだけでなく、デレク・ドレイクら名のあるライダーもパス。このままどこまで上がるのだろう! 14番手をパスして、13番手まで2秒ほどの差があった。下田は、たった2秒ほどだと思っていた。
だが…そのスピードも束の間、ジャンプ着地でフロントのグリップを失った下田は、またも肩から地面にたたきつけられるクラッシュ。このモト2も途中で離脱せざるを得ない状況へ。
レースは、モト1のバトル再び、今度はフェランディスが先行するものの、アダムが何度もアタックするレース展開。チェッカーは、0.001秒差でフェランディスに軍配。総合優勝もフェラインディスの手に渡った。ジェットは、転倒すること無く追い上げのレースを走り抜き、8位へ。ルーキー組のなかでもっとも上位でゴールしたのだった。
下田、かく語りき下田丈のデビュー戦は、モト1/2ともに途中離脱。だが、モト2に関しては下田のスピードが通用することがよくわかったレースだった。そのまま走りきるだけで一桁順位は獲れただろう。では、スタートが成功したらどうだったろうか。たらればを話せばきりがないが、5位以内はそれ以下と別次元であった。特に、どう贔屓目にみてもトップ2名のスピードには達していないという見方が大勢だろう。
落ち込んではいない、と下田は言う。「モト2は、走り方がわかったからもっと走りたかったです。それが正直なところ。悔しいのは悔しいですが、落ち込んではいません。走り的には、悪くはなかったと思っています。
ロレッタリンのようなレースは、コース幅が狭くてなかなかラインのうまいつながりを探せませんでしたが、ユナディラのようなコースなら何本もいいラインがあるので、序盤からペースを上げるのは難しくはありません。ロレッタリンで感じた、序盤のペースがあがりづらいという課題は、AMAではなさそうです」そもそもカリフォルニアで、グレンヘレンなどの巨大なコースを走り込んでいる下田にとっては、AMAで使うコースのスピード感や、ダイナミックさに戸惑いは一切ないのだそうだ。「ユナディラは、はじめてだったのですが、いいコースでした。はじめてのコースを攻略することは、得意なんです」とも言う。
「100%で走れてはいないけれど、ペースをつかむことができました。これまでプロのレースに出ていなかったから、わからなかったことが多くて、本当に通用するか不安でした。でも、今日走ってみてそれが解消できた。緊張が抜けました」と下田。
レース後、下田は会場にあるドクターのところへ。肩のレントゲンを撮ると、肩の骨が欠けていたと言う。おそらくロレッタリンの転倒で生じた怪我だろうとのこと。痛みはあるけど、残り2戦を欠場することは考えていない。早速明日から、次週のバッズクリークへ向けてトレーニングを始める。
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