2021年に初年度開催を予定する、TCR規定を採用した電動ツーリングカー選手権『PURE ETCR(ピュアETCR)』に参戦するヒュンダイ・モータースポーツは、すでにレースドライバーとして発表済みだったアウグスト・ファーフスとジャン-カール・ベルネイに加え、トム・チルトンとジョン・フィリピの加入をアナウンス。すでに開発作業に従事するふたりとともに、4台体制でシリーズに挑むと発表した。
また同シリーズは2022年からFIA格式に昇格することも決定し、来季からは『FIA eTouring Car World Cup(FIA eツーリングカー・ワールドカップ)』として、改めてWTCR世界ツーリングカー・カップの電動版の位置付けに据えられる。
バックマン兄妹が世界戦に昇格。ヒュンダイ・エラントラN TCRでWTCR参戦へ
スペインやイタリアを中心に、シリーズへの参戦を決めているセアト・クプラやアルファロメオらと事前テストを進めているヒュンダイ・モータースポーツだが、このピュアETCRに投入するヒュンダイ・ヴェロスターN ETCRを託す残り2名のラインアップに、ツーリングカー経験豊富な実力派の起用を表明した。
WRC世界ラリー選手権でもファクトリーチームの代表を務めるアンドレア・アダモは、この電動シリーズ初年度に改めて4台体制を敷くことを確認するとともに、このラインアップは「毎週末に誰もが勝利を目指してレースができる顔ぶれ」だと自信を見せた。
「これまでのところ、電動ツーリングカーの製造と開発の過程で直面したすべての課題に立ち向かい、それを打ち負かし乗り越えてきた。この分野の競争は時代の最前線であり、レースシーズンが始まって我々のドライバーたちが活躍する日を楽しみにしている」
先行開発を担当してきたファーフスとベルネイに続きヒュンダイ加入を決めたチルトンは、2021年も地元でBTCCイギリス・ツーリングカー選手権に参戦し、今季はBMW330i M-Sportのステアリングを握る。そのプログラムと並行し、このEVシリーズでも後輪駆動モデルで新時代のツーリングカー挑戦を決めた。
「電気を動力源とするマシンは僕にとって完全に新しい体験だが、ヒュンダイ・モータースポーツへの加入は、勝利を狙うにあたり最適な場所に居ると感じている」と、意気込みを語ったチルトン。
■7月のゾルダー戦がキャンセル。8月にハンガロリンクで代替戦開催へ
「ジョン(・フィリピ)とは以前からともに働いた経験があるが、アウグストやジャン-カールとガレージを共有するのはこれが初めてだ。彼らは言わずと知れたツーリングカー界の成功者であり、年間を通じて自分を評価する良きベンチマークになるだろう」と続けたチルトン。
一方、2020年は名門ターゲット・コンペティションとともにTCRヨーロッパに参戦し、ヒュンダイi30 N TCRで合計3度の表彰台と優勝も記録したフィリピは、総合ランキング2位の勢いをピュアETCRにも持ち込みたい構えだ。
「僕は昨季もヒュンダイ製のTCRモデルでシーズンを戦ったが、ヒュンダイ・ヴェロスターN ETCRへの移行はとても大きな変化だ。そのすべてを楽しみにしているし、最優先課題は開幕前テストでクルマを“モノにする”こと。新たなクルマ、チーム、フォーマットのすべてに慣れる必要があるね」と、冷静な見通しを語ったフィリピ。
その新生ピュアETCRは初年度開幕に先立つ4月30日付でリリースを発表。まだ実際のレースは1度も開催していない状況ながら、2年目の2022年からFIA格式のワールドカップ戦として承認され、新たに『FIA eツーリングカー・ワールドカップ』として開催するとアナウンスした。
「今回、新たにFIA eツーリングカー・ワールドカップが加わったことで、FIAファミリーのツーリングカー競技がさらに拡大した。これはとても喜ばしいことだね」と語るのは、FIAツーリングカー・コミッション代表を務めるアラン・ゴウ。
「FIAが許認可を与えたTCR規定ツーリングカーに関して、従来の内燃機関搭載モデルの最高峰として位置づけるWTCRに対し、この革新的なフォーマットを採用した完全電動カテゴリーが共存するのは理想的なシナリオだ」
「すべての関係者のみならず、ツーリングカー・ファンにとっても重要なステップであり、この新世代の競技が具現化する日を楽しみにしている」
その一方で、2021年度のピュアETCRカレンダーに組み込まれていた7月のベルギー・ゾルダー戦は、現地の24時間レースとの併催やロジスティックの問題で見送られることが決まり、代替戦として8月のWTCRハンガロリンク戦とジョイントし、第5戦とすることも決まっている。
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