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日本映画批評家大賞で主演男優賞受賞! 30代を迎えた吉沢亮の挑戦──映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』インタビュー

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日本映画批評家大賞で主演男優賞受賞! 30代を迎えた吉沢亮の挑戦──映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』インタビュー

ろうの両親に育てられた青年の人生を描いた映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(Netflixで配信中)が日本映画批評家大賞で最多の4冠(作品賞、主演男優賞、助演女優賞、編集賞)を受賞。主演男優賞を受賞した吉沢亮は、中学生から社会人までの主人公を手話を使い見事に演じ、讃嘆を集めた。難役に挑み続ける俳優・吉沢亮が自身の俳優論を語る。

吉沢亮は挑戦し続ける。『そこのみにて光輝く』、『きみはいい子』などで知られる呉美保監督の9年ぶりの長編作品『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で耳の聞こえない両親のもとに生まれた青年、五十嵐大を演じた。大は手話を使って大好きな母の通訳をし、“きこえる世界”と“きこえない世界”を行き来する。しかし、次第に“耳のきこえない親を持った可哀想な子”という偏見の目で見られることに戸惑いと苛立ちを感じていく。特別な環境に置かれた大だけでなく、多くの人が感じるであろう普遍的な感情をリアルにそして繊細に演じた。

スパイク・リーによる、黒澤明の『天国と地獄』リメイク版について現時点でわかっていること

10代を違和感なく演じる力量「大の環境は特殊ですが、多くの人が思春期に通る道なので、10代特有の不安定さをいかにリアルに出すかということを意識しました。大が抱える苦しさを強調し過ぎても嘘くさく見えてしまうから、いつかその頃を振り返った時に『そんなに大変なことではなかったよね』と思えるようなニュアンスが出るような芝居をしたつもりです。10代を演じるにあたり、呉監督には『とにかく声を高めにして』と言われ、正直『こんなに高くて大丈夫なんだろうか?』という不安があったんですが、映像を見ると不自然ではなく、ちゃんと若さが表現されていたのと、10代特有の危うさも出ていたので監督への信頼が増しました。やはり未知のことをやるのは不安ですが、チャレンジして良かったと思いました」

俳優という職人初めてタッグを組んだ呉監督は吉沢のことを「見る人にも役にも媚びていない芝居をする。撮影現場でも雑談はなく、ただただ役に集中する俳優という職人」と評した。

「演じること以外に何も意識していないのでそう見えるのかもしれませんが、改めて言葉にされると照れますね(笑)。僕は芝居が好きなだけなので、芝居をしている瞬間は頑張れるんですが、現場で芝居以外のことも上手くできているかは自信ないです。少しずつ主演をやらせていただく機会が増え始めた20代前半の頃は、共演者やスタッフの方とできるだけコミュニケーションを取ろうと頑張っていたんですが、元々そういったことに長けているタイプではないので、今では無理せず、より芝居に集中するようになりました」

難役に挑み続ける『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では約2カ月間手話を学び、手話のチームから「驚くほどナチュラルだ」と賛辞を贈られる程のレベルにまで上達した。2025年に公開を控える『国宝』では稀代の女方歌舞伎役者を演じるため、歌舞伎の基本動作から稽古を行って撮影に臨んだという。緻密で専門的な技術が必要とされる難役が続く。

「特に意識しているわけではないのですが、最近興味を引かれる作品は大変なことが伴う作品なんです。手話にしても歌舞伎にしても、技術を追究することで芝居に活きることが多くあるのでやりがいを感じます。その技術を習得している方々に納得してもらえるレベルまで到達する必要がありますが、そこまで持っていくのは、時間も労力もかかる。形だけできていればいいというわけではなく、漂っている空気感がリアルでないとダメ。ある程度の技術が習得できていないとリアルな空気感は生まれません。ですから、そういった技術を必要とする役を演じるプレッシャーは大きいのですが、同時にすごく燃えるんです。ただ、いざ準備が始まるとしんどくて仕方がない。もっと気楽に芝居がしたいと思う時はあります(笑)」

とはいえ、自身を追い込むことでスキルアップしてきたという自覚もある。

「僕はとても面倒くさがりなので、焦るところまで追い込まれないと必死にならないところがあります。『できるだろう』と思うと自分を燃やすことを止めてしまう。僕にとっての原動力は焦りや不安なんです。そう考えると焦らざるを得ない大変な作品が、性分に合っているのかもしれません」

演じる役を愛して欲しい今年デビューから15周年を迎え、初めて1万人規模のファンミーティングを開催したという。

「ファンの人たちを目の当たりにして、こんなに自分のことを好きでいてくれる人がいるんだと、うれしい気持ちと同時に、もっとコミュニケーションをとって大切にしていかないといけないなと身の引き締まる想いでした。皆さんに作品を観てもらって、吉沢亮という人間ではなく、僕が演じる役そのものを愛してもらえる俳優になりたいと思っています」

自分は良い人間ではないし、良い人と思われたくないと語る吉沢亮。キャリアを重ねても、謙虚な姿勢で努力を惜しまず、取り繕わない姿勢はまさに職人そのものだ。仕事人、吉沢亮の挑戦はこれからも続いていく。

吉沢亮俳優。1994年生まれ、東京都出身。2020年、一人二役を演じた映画『キングダム』で第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。2021 年、『青天を衝け』で大河ドラマ初出演にて初主演を務める。昨年は『東京リベンジャーズ2』2部作などの計6作品、2024 年は『キングダム大将軍の帰還』に出演。2025年に主演映画『国宝』が公開予定。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』宮城県の小さな港町に暮らす五十嵐家に男の子が生まれた。家族は“大”と名付けて誕生を喜ぶ。他の家庭と少しだけ違っていたのは両親の耳が聞こえないこと。幼い大にとっては、手話を使って大好きな母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが……。
NETFLIXで配信中。

写真・山田陽、スタイリング・荒木大輔、ヘアメイク・小林正憲(SHIMA)、文・小松香里、編集・遠藤加奈(GQ)

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