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【まだ出口は見えず?】アストン マーティンの苦境は続く 注視が必要

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【まだ出口は見えず?】アストン マーティンの苦境は続く 注視が必要

わずか数時間で

text:Hilton Holloway(ヒルトン・ホロウェイ)

【画像】業績アシストに期待 アストン初のSUV「DBX」【ディテール】 全48枚

「政治の世界で1週間は長すぎる」というのは使い古された決まり文句だ。

だが、最近アストン マーティンは、株式市場ではわずか数時間で企業の命運が左右されることもあるということは証明している。

皮肉にも、今年1月23日にはDBXのポテンシャルを評価したシティグループのアナリストが、アストンを「ハイリスク・ハイリターン」銘柄だとして将来の目標株価を6ポンド(800円)に設定していたのだ。

アストン マーティン・ラゴンダPLCが2018年10月に株式上場を行って以来、その株価は売出価格である19ポンドから下がり続け、2018年12月14日には11.56ポンドにまで下落している。

確かにアナリストの多くが上場価格そのものが過大に評価されていたと感じていたものの、2カ月も掛からずにアストンの株価はその価値を約40%も失ったことになる。

状況がやや好転する兆しを見せたこともあったが、2019年1月18日を境にふたたびアストンは苦境に見舞われている。

2018年のアストンは概ね好調だったと言われていたことを考えれば、こうした状況はやや驚きと言えるものだった。

2018年にはV12モデルが1785台、V8モデルが4471台の販売を記録した一方、米国販売は38%増加し、アストンの売上も25%アップの11億ポンドに達していたのだ。

「スペシャル」モデルを除いた平均的な販売価格は14万1000ポンドにも達していたが、それでもアストンの投資計画に対しては、十分ではなかったのかも知れない。

驚きの事実

それでも、こうした数値から窺い知ることの出来ない驚きの事実とは、上場には1億3600万ポンドものコストが掛かっており、その結果、年間収益はわずか6800万ポンドに留まったということだ。

将来のモデル展開に関する投資家向けプレゼンテーションは極めて自信に溢れたものだった。

クロスオーバーモデルのDBXに加え、ヴァンキッシュとヴァルハラというふたつの新型ミドエンジンスーパーカー、さらに2021年と2022年にはラゴンダから電動SUVとEVサルーンの登場が予定されていた。

こうした積極的なモデル展開や155台限定の完全EVモデル、ラピードEに加え、アストンではDB4 GTザガート・コンティニュエーションとDB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーション、さらにはハイパーカーのヴァルキリーにおけるふたつのバリエーション追加を発表していたのだ。

DBX用に新セント・アサン工場への投資を決断したのと同じく、明らかにこうしたモデル展開は、特にアストンのような小規模メーカーにとっては極めて野心的と言えるものだった。

2019年上期も全般的に株価は下落基調にあり、5月24日には8.43ポンドまで下がったものの、7月には一旦10ポンドを上回る水準まで回復している。

デザイン変更が原因?

だが、7月23日にアストンが最新の販売と財務の状況を公表すると、こうした業績回復への期待も終わりを迎えている。

2019年4月から6月の販売台数は、英国で22%、欧州全域と中東では28%減少しており、全体では25%減となったことで、アストンの株価はわずか1日で26%も下落している。

さらに7月31日には2019年上期が7800万ポンドの赤字となったことを公表しているが、2018年上期は2100万ポンドの黒字だったのだ。

8月5日には株価は4.54ポンドまで下落し、さらに10月31日には3.99ポンドを記録している。

それでも、12月6日には株価が6.30ポンドへと回復したことで、2019年末に向け投資家の間にはある種の自信が戻って来ていた。

だが、この株価が直近のピークであり、しばらくこの水準への回復は見込めないだろう。

年初にアストンは2019年の業績速報を発表しているが、英国での販売台数が前年の1798台から1429台へと減少するとともに、大陸欧州でも1489台から1074台へとその数を減らしており、収益も9%減となった。

後にアストンCEOのアンディ・パーマーも認めているが、ヴァンテージの販売台数が目標に達しなかったのは、直近に行ったデザイン変更が原因だろうと言うのがアナリストたちの見方だった。

救世主登場

米国での販売台数は増加したものの、それもアストンの苦境を跳ね返すには不十分だったようだ。

アストンの債務が5億6000万ポンド(746億2700万円)から8億7600万ポンド(1167億3800万円)へと急拡大したことで、野心的な新型モデルの投入計画も影響を受けている。

財務状況が極めて不安定になったことで、DBXといったアストンにとって重要なニューモデルを計画通りに登場させることが難しくなったのだ。

そして、1月31日にある種の救済策が発表されている。

億万長者のローレンス・ストロールが1億8200万ポンド(242億5400万円)でアストン株の16.7%を取得するとともに、3億1800万ポンド(423億7700万円)の新株予約権割当を行うことで、アストンには5億ポンド(666億3100万円)の資金がもたらされることになった。

その結果、DBXが無事ショールームに並ぶとともに、新型ミドエンジンモデルの開発計画も進められている。

アストン会長となったストロール自らの計画によれば、2020年にヴァルキリーが登場する一方、ラピードEはキャンセルされ、ラゴンダのデビューは2025年まで延期されるようだ。

ふたたび試練が

そして、こうした状況のなかで新型コロナウイルスの感染拡大が発生したのだ。

当初契約に含まれていた自らに有利な条項に基づき、ストロールは再交渉を経て取得する株式の価格を4ポンド(533円)から2.25ポンド(300円)に変更したうえで、25%の株式を取得することで合意している。

さらに、アストンが現在の苦境を乗り切るべく、2500万ポンド(33億3200万円)を追加出資し、5550億ポンド(73億9600万円)の運転資金を供給している。

ストロールの新提案は、おそらく1月30日に記録した4.02ポンド(536円)という株価をもとに検討されたものであり、この投資によって株価は一旦4.98ポンド(664円)まで回復したが、世界が新型コロナウイルス感染拡大に揺れる中、ふたたび下落に転じている。

1日の取引時間中では最低となる1.20ポンド(160円)を記録したあと、アストン株は利ザヤを狙うデイトレーダーたちによる売買の影響から、2ポンド(267円)を割り込む水準での取引が続いている。

それでもストロールが保有する株式の価値はすでに半減しているのだ。

3月は世界の自動車市場が停滞し需要が蒸発していくなか、ふたたびアストンは試練の時を迎えているようだ。

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