現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 作るぞ「世界最強戦闘機」! でも“本当に重要なのは…” イタリア代表者幹部が明かす第6世代戦闘機“開発の神髄”とは(前編)

ここから本文です

作るぞ「世界最強戦闘機」! でも“本当に重要なのは…” イタリア代表者幹部が明かす第6世代戦闘機“開発の神髄”とは(前編)

掲載 16
作るぞ「世界最強戦闘機」! でも“本当に重要なのは…” イタリア代表者幹部が明かす第6世代戦闘機“開発の神髄”とは(前編)

合弁企業設立は順調に進行中

 イタリアの大手航空機メーカーであるレオナルドは、2025年5月21日から23日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された大規模な防衛・安全保障の展示会「DSEI Japan 2025」にブースを出展しました。

【まさかの富士山バック】レオナルドが公表したGCAP新イラスト(画像)

 レオナルドは、日英伊共同開発の次世代戦闘機を開発する「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」において、イタリア側の参画企業をリードする立場にあります。筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は同社のブースにおいて、GCAP上級代表であるエドアルド・デ・サント氏に単独インタビューを行う機会を得ました。その模様を、2回に分けてお伝えします。

 まず、GCAPに参画している企業で構成される合弁会社(JV)の現状について、デ・サント氏は次のように説明します。

「昨年、我々は合弁契約(JVA)を締結しました。これにより、3か国の防衛産業は共同でこの計画を進める意志を最終的に確認しました。正式な法人としての合弁会社(JV)設立は来月を予定しており、月末までには3か国の企業による統合体として正式に設立される見込みです。

 設立前に必要とされていた多くの準備作業、例えば独占禁止法に関する承認や新たな事業体設立に必要な各種手続きなども順調に進行しています。そのため、今から約1か月後には、ひとつの統一企業体としてスタートできると見込んでいます。その時点から、この新会社が、GCAPにおける政府間合同機関『GIGO(GCAP International Government Organisation)』との主な窓口となります。このGIGOは、すでにイギリスにおいて運用が始まっています。

 JVの初代CEOはイタリアから選出されます。株主は三か国の企業で構成されており、まずはイタリアから代表を出す形です。また、我々はイギリスにJVの拠点を構え、すでに活動開始へ向けた準備が整っています。まるでスタートアップ企業のように、今は会社の骨格を築いている段階であり、技術部門や組織体制の構築を進め、年末までに予定されている国際共同契約の履行に向けた体制を整えているところです」

「要求仕様に合わせて成果物を納品する」とはワケが違う!

 前述のように、GCAPは日英伊という文化やモノの考え方が異なる国同士による共同開発事業です。そうした各国の「違い」がプログラムに及ぼす影響について、デ・サント氏はこう説明します。

「このような文化の違いは、私は個人的にも価値あるものだと捉えています。異なる文化、異なる働き方、ビジネスに対するアプローチの違いは、協業をより効果的にするための要素です。

 イギリスとイタリアには長い協力関係があり、トーネードやユーロファイターなど30年以上にわたる共同開発の歴史があります。一方で、日本との本格的な共同開発事業は今回が初めてですが、このプロジェクトは真に効果的な協業を実現する好機と考えています。

 もちろん、課題は複雑です。第6世代戦闘機を開発するわけですから、それ自体が新しいマインドセットを必要とします。従来のように『要求仕様に対して成果物を納品する』というモデルではなく、設計そのものを協業で構築するという新しいアプローチです。このプロジェクトでは、異なる要素を一つのシステムとして統合することが求められます」

じつはコレが一番大事! GCAPにおいて重視される「デジタル化」とは

 一方で、関係者によればGCAPは「真にデジタル技術を用いて設計され、運用される」点が特徴だといいます。とすると、そこで重要になるのはサイバーセキュリティです。筆者がそれについて質問すると、デ・サント氏は次のように答えました。

「ご指摘のとおり、『デジタル化』と『サイバーセキュリティ』は、GCAPにおいて非常に重要なテーマです。そして、さらに一つ加えるとすれば、それは『セキュリティフレームワークの構築』です。

 このようなプロジェクトにおいては、情報共有の手段も従来の紙やローカルPCではなく、全てが仮想的にデジタル空間で行われます。したがって、非常に高レベルのサイバー脅威への耐性、すなわち『サイバー・レジリエンス』が求められます。我々のJV組織は、こうしたセキュリティの要請を前提に設計されています。内部には高度なスキルを持つ大規模な『デジタル部門』があり、多数の専門人員が在籍しています。彼らは、デジタル環境下での作業の本質を理解した最先端技術者たちです。

 加えて、我々は『セキュリティ・バイ・デザイン(設計段階からセキュリティを織り込むこと)』という新たなパラダイムに取り組んでいます。これは、後追いで安全性を確認するのではなく、初めから安全であるように設計する方針です。JVの構造自体にもこの考え方が反映されており、組織全体がセキュリティを前提に構築されています」

中小企業をどう助ける? カギとなるのは…

 しかし、サイバーセキュリティやデジタル化の推進に関しては、GCAPの主要参画企業である三菱重工やレオナルド、BAEではさほど問題とはならない一方で、その下に連なる中小企業にとっては大きな問題となりそうです。筆者がそれについて質問すると、デ・サント氏はこう口にしました。

「おっしゃる通りだと思います。この点は、実際には日本、イギリス、イタリアの3か国すべてに共通している課題です。主要な防衛産業―イタリアではレオナルド、日本では三菱重工、イギリスではBAEシステムズ―は、確かに高いレベルのサイバーセキュリティ能力とデジタル化に関する豊富な知見を備えています。

 一方で、イタリアで「PMI(Piccole e Medie Imprese)」と呼ばれる中堅・中小企業は、こうした分野において未だ発展途上です。ただし、今回のGCAPは、これらの企業にとって新たな領域を開拓する大きな機会でもあります」

 こうした中小企業は、三菱重工やレオナルドのような大企業と比べて構造がコンパクトであり、柔軟性が高いと言われます。しかしその反面、サイバーセキュリティやデジタル基盤を強化するための資金的な負担は大きくなってしまいます。そこで、デ・サント氏は政府の支援が重要になると説明します。

「この点において、公共投資、つまり政府の支援が重要な役割を果たすでしょう。必要な技術分野や、サプライチェーンに組み込むべき企業群を特定したうえで、それら中小企業のデジタル能力やセキュリティ環境を強化する取り組みには、政府が支援すべきだと考えます。

 政府の役割は、必要な技術を特定し、技術戦略の進化を導き、そして中小企業のデジタル・セキュリティ能力の強化を支援することです。この体制は、すでにデジタル進化を内部に抱える大企業の管理下で、非常に良好な産業環境を形成することになると私は確信しています。これはすべての関係者にとっての好機なのです」

 とある関係者は筆者に、「GCAPは日本の防衛産業にとっての大変革をもたらす」と、かつて説明したことがありました。その真の意味を、デ・サント氏の発言を受けてようやく理解できたと感じました。(稲葉義泰(軍事ライター))

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

いまだ実績ゼロ! 売れない“日の丸輸送機C-2” 尻目に快進撃の「ブラジル製輸送機」メーカーを直撃したら納得でした
いまだ実績ゼロ! 売れない“日の丸輸送機C-2” 尻目に快進撃の「ブラジル製輸送機」メーカーを直撃したら納得でした
乗りものニュース
世界初公開! 印パ紛争で注目のフランス戦闘機「新モデル」披露! 見た目の違いはドコ?
世界初公開! 印パ紛争で注目のフランス戦闘機「新モデル」披露! 見た目の違いはドコ?
乗りものニュース
チビすぎ? 地味すぎ? 今や見向きもされない「戦車王国の原点」I号戦車 けっこうスゴいんだぜ…?
チビすぎ? 地味すぎ? 今や見向きもされない「戦車王国の原点」I号戦車 けっこうスゴいんだぜ…?
乗りものニュース
東南アジアの「ロシア兵器大好き国」が方針転換? かつての敵国に“最新戦闘機ちょうだい” 一体なぜ?
東南アジアの「ロシア兵器大好き国」が方針転換? かつての敵国に“最新戦闘機ちょうだい” 一体なぜ?
乗りものニュース
これからの戦車は「弾でもミサイルでもないものをぶっ放してくる」のか? 韓国の次世代戦車に見る“トレンド”
これからの戦車は「弾でもミサイルでもないものをぶっ放してくる」のか? 韓国の次世代戦車に見る“トレンド”
乗りものニュース
「軍服にしちゃトガりすぎだろ!」ガンダムの「ネオ・ジオン軍」がハデハデ服となったワケ
「軍服にしちゃトガりすぎだろ!」ガンダムの「ネオ・ジオン軍」がハデハデ服となったワケ
乗りものニュース
人は乗りません!「撃ってくる無人戦闘艇」韓国で初披露 日本やアジアで増殖する“海の無人機”
人は乗りません!「撃ってくる無人戦闘艇」韓国で初披露 日本やアジアで増殖する“海の無人機”
乗りものニュース
“二刀流”どころじゃない! 最低でも三刀流以上!?  現代戦闘機は超万能マシンだった なぜ“何でも屋”になる必要が?
“二刀流”どころじゃない! 最低でも三刀流以上!? 現代戦闘機は超万能マシンだった なぜ“何でも屋”になる必要が?
乗りものニュース
空自「ブルーインパルス」後継機バトル、どうアピールすべき? スペックだけじゃない「露出戦略」とは
空自「ブルーインパルス」後継機バトル、どうアピールすべき? スペックだけじゃない「露出戦略」とは
乗りものニュース
米軍のイージス艦に見慣れないハコ見っけ!「アレ何?」←士官「答えられません」その正体は?
米軍のイージス艦に見慣れないハコ見っけ!「アレ何?」←士官「答えられません」その正体は?
乗りものニュース
「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”
「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”
乗りものニュース
自衛隊の“新顔輸送艇”コンセプト初公開 「それに“火力”付けられるよ」 離島防衛の“使えるセット”もはや完成!?
自衛隊の“新顔輸送艇”コンセプト初公開 「それに“火力”付けられるよ」 離島防衛の“使えるセット”もはや完成!?
乗りものニュース
『紅の豚』に出てきそう!? いかにも「古そうな複葉飛行艇」が第二次大戦で引っ張りダコだったワケ「空母にも発着できます!」
『紅の豚』に出てきそう!? いかにも「古そうな複葉飛行艇」が第二次大戦で引っ張りダコだったワケ「空母にも発着できます!」
乗りものニュース
“異形の巨鳥”世界一長~い輸送機の開発 新たに5社の航空宇宙企業の参加が発表される ロケットなど積み込む?
“異形の巨鳥”世界一長~い輸送機の開発 新たに5社の航空宇宙企業の参加が発表される ロケットなど積み込む?
乗りものニュース
安くしてもダメ「アメ車タレント起用も意味ナシ!」強大な販売力でも無理… 日本で売れなかった伝説のトヨタ車とは
安くしてもダメ「アメ車タレント起用も意味ナシ!」強大な販売力でも無理… 日本で売れなかった伝説のトヨタ車とは
乗りものニュース
アメリカ製戦闘機もエンジンに泣いた!?「偉大なる凡作」と「WW2最優秀」の意外な共通点とは
アメリカ製戦闘機もエンジンに泣いた!?「偉大なる凡作」と「WW2最優秀」の意外な共通点とは
乗りものニュース
「北極海の砕氷船」いったい何しに大阪へ…? 万博だけじゃない、日本含む4か国の“重大ミッション”とは?
「北極海の砕氷船」いったい何しに大阪へ…? 万博だけじゃない、日本含む4か国の“重大ミッション”とは?
乗りものニュース
レーザー1発「うまい棒より安い!」 コスパ最強兵器の大いなる“欠点”とは メーカー「組み合わせて使って」
レーザー1発「うまい棒より安い!」 コスパ最強兵器の大いなる“欠点”とは メーカー「組み合わせて使って」
乗りものニュース

みんなのコメント

16件
  • ber********
    造るならラプターを越える性能の戦闘機を造ってよ
  • uta********
    どの国も安全保障のためなら政府資金を投入するのは当然だと思うけど、今の日本はどうかな…。財務省は当然できるだけケチろうとするでしょうし。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

413 . 0万円 838 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350 . 0万円 350 . 0万円

中古車を検索
ランチア テーマの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

413 . 0万円 838 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350 . 0万円 350 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村