【インタビュー】野尻智紀、15年越し“全日本王者”までの歩み:後編 ようやく迎えた成熟の時。王座獲得の地もてぎで流した“悔し涙”の理由
2022/01/21 19:48 motorsport.com 日本版
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2006年に全日本カート選手権で王者に輝いた後、ジュニアフォーミュラではなかなかタイトルに手が届かず、悩み苦しみながらも、着実にステップアップを果たしてきた野尻智紀。2014年には国内最高峰カテゴリーであるスーパーフォーミュラにたどり着いた。
ジュニアフォーミュラ時代に抱えていた「カートのような速さが発揮できない」というコンプレックスは、徐々に解消されつつあった。関係者からのアドバイスも自分なりに落とし込めるようになり、全日本F3最終年には「フォーミュラでも速く走れるかも」という期待を感じられるようになっていた。
■野尻智紀、15年越し“全日本王者”までの歩み:前編 心は何度も折れた……それでも前を向いてきたキャリア初期
実際、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGで迎えた野尻のスーパーフォーミュラ1年目は、その速さを随所で見せたシーズンだった。予選ではフロントロウを2度獲得し、その内第6戦SUGOでは初優勝も飾ってみせた。「この年は周りのチームと比べてもクルマが相当仕上がっていたと思います。環境に恵まれたことも大きかったと思います」と野尻は謙遜する。
ただ、野尻はその後ポールポジションこそ何度か獲得したものの、タイトル争いには加わることができないまま、月日が過ぎていく。速さはある一方で、“波”が大きいことに今度は悩まされるようになった。
「速く走れる時とそうでない時の差が大きく、波があることに悩んでいました」
「自分の中では、予選を速く走れないと決勝で速く走れないと思っていました。ただこれだけ決勝で遅いと、その考えが間違っていたのではないかと思うこともありましたが、その考えだけは曲げずに、やり方さえ変えれば(決勝でも)速いラップを出し続けられると信じていました」
そんな野尻にとってひとつのターニングポイントとなるのが、2018年オフの合同・ルーキーテスト。翌年から、5シーズン過ごしたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGを離れてTEAM MUGENへと移籍することが内々定していた野尻は、同年にTEAM MUGENでタイトルを獲得した山本尚貴のマシンをドライブし、そのフィーリングに驚きを覚えたという。
「『同じ形をしていてこんなに違うの?』と思いました」
「何かと『ドライビングがそれぞれ違うから』という言葉で片付けられることが多いですが、『本当に(ドライビングを変えれば)このクルマで速く走れるの? どうやってそんなタイムを出せるの?』と思いました。ダンディライアン時代のセットアップを近付けていっても、感覚は似ないんですよね」
「その時に、セットアップなど、自分がコントロールできる幅を広げていかないと、速さを維持することはできないなと思いました」
そうしてTEAM MUGENに加入した野尻は、一瀬俊浩エンジニアと二人三脚で「予選でも決勝でも速いマシン作り」を目指した。「サーキットに来るまでは彼もエンジニア」と一瀬エンジニアが言うように、野尻はレースウィーク以外でも積極的にミーティングを行ない、自らのフィードバックを事細かに伝え、自分が思い描く理想のイメージにマシンを近付けていった。ふとした瞬間にも「あの時どうして調子が悪かったのだろう」「どうすれば問題を解決できるのだろう」とひとり“仮説”を立て続けた。
それだけではない。この頃には“レースとの向き合い方”にも変化があった。野尻はこう話す。
「レースウィークの進め方が分かるようになってきました。戦うために何が必要かということを、少しずつ理解していったつもりです」
「僕は色んな人から『緊張しすぎだ』と言われることが多かったです。『自分だけが緊張しているんだ』という思いから、余計に緊張してしまっていたのかもしれません」
「ただ、色んな選手を近くで見て『意外とみんな緊張しているんだ』と感じました。それで『これでいいんだ』と思えるようになりました。それが2017年、2018年くらいです」
「あと、緊張がなぜ起こるかも分かってきました。僕は自分にできないことをやろうとすると緊張するタイプなんだなと。だから事前準備をしっかりすれば、緊張はしますけどある程度は(緊張を)取り除けるのかなと思いました」
「スタート直後の1コーナーでどこでブレーキを踏むか分からない時は、フリー走行などで練習したり……後方からのスタートになる時は、フリー走行でオーバーテイクポイントを確認しておけば感覚が掴めますしね」
さらにドライビング面でも“コントロールできる幅”の広さを発揮したこともあり、移籍2年目の2020年シーズンには1勝・ポールポジション2回を記録。最終戦までタイトルコンテンダーのひとりとして戦った。ポールからスタートした最終戦富士の決勝は惜しくもタイヤトラブルでリタイアとなったものの、それまでの6戦は全戦でポイントを獲得するなど、“波”は限りなく小さくなっていたと言える。野尻は最終戦のレース後、motorsport.comに対して「自分の力、成長を示せたシーズンだった。最近は今までの僕と違うようなレースができている」と語り、翌年以降へのさらなる期待感を口にしていた。
TEAM MUGENでの3年目となる2021年シーズンを迎えた野尻は、これまでのひとつひとつの積み重ねにより、まさに“成熟の時”を迎えていた。彼がこの年口にした「誰よりもレースと向き合ってきた自信がある」というコメントも、それを物語っていると言える。そして彼の同年の活躍は周知の通り。7戦中3勝を挙げ、その内ポールトゥウィンが2回。そして全戦トップ6以内でフィニッシュと、まさに隙がなかった。
第6戦もてぎを5位でフィニッシュし、最終戦を待たずして悲願のタイトルを確定させた野尻の目には涙。その涙には、どんな感情が宿っていたのか?
「もちろん感謝もありますし、色々です。ただ、その中で『なぜこれまでできなかったんだ』『もっと早くできたんじゃないか』という悔しさがありました。その気持ちが強いかもしれません」
「スクール(鈴鹿サーキットレーシングスクール)に入って以降、たくさんの方が気にかけて下さり、色んなことを教わってきましたが、その方々に何も返せず、無駄なエネルギーを使わせてしまったというのが後悔です」
「この思いが1回チャンピオンになっただけで消えることはありませんし、もっと頑張り続けないといけないなと思います」
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