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自動車部品大手ZF 次世代EVの出力/効率を大幅向上させる最新テクノロジー公開

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自動車部品大手ZF 次世代EVの出力/効率を大幅向上させる最新テクノロジー公開

ムダの少ない効率設計 EVの性能向上目指す

パワフルかつコンパクトな800Vの電気モーター、高効率の減速機、インテリジェント・サスペンション・ダンパーといったテクノロジーは、次世代EVのパフォーマンスを飛躍的に向上させる可能性を秘めている。

【画像】EV向けの先端技術を開拓?【ZFの電動ドライブやコンセプトカーのベースとなったポルシェ・タイカンを写真で見る】 全21枚

世界有数の自動車部品サプライヤーであるZF(ゼット・エフ)社が開発した第3世代電動パワートレインは、すでに新型ロータス・エレトレなど市販車への導入が予定されている。

ZFの新型モーター「EVSys800」は、既存の設計よりも30%高い70Nm/kgというトルク密度を持つ。同社の電動モビリティ部門責任者であるオトマール・シェラー氏は、「このモーターは80kgと非常に軽量でコンパクトでありながら、ピーク定格出力は300kW(408ps)です」と語っている。

このコンポーネントの一部は、「EVbeat」と名付けられたポルシェ・タイカン(後輪駆動モデル)をベースにした技術デモカーでシミュレートされている。EVSys800は、重量を抑えるために全合金ケーシングを使用する。内部では、一般的なヘアピン式巻線から編み込み式巻線に変更され、200か所のレーザー溶接が不要になったことでパッケージ・サイズが10%縮小され、出力も50%向上した。

設計の基本は、ステーターを冷却し、廃熱を「TherMas」ヒートポンプに利用する直接導体冷却による新しい熱管理システムである。

その結果、EVSys800はピーク出力の75%を長時間維持できるという。ZFによれば、定格200kWの一般的なモーターは75kWでしか連続走行できない可能性があるという。「非常に優秀な場合でも、定格出力の50%の連続出力しかありません」とシェラー氏は言う。

「その理由は冷却です。90%の効率でも、200kW(272ps)のモーターでは10kW(14ps)を手放すことになる。10kWあれば、マイナス20℃の冬でも2軒の家を暖めることができます」

ZFの第3世代電動パワートレインのもう1つの特徴は、新しいプラネタリーギア式同軸減速ドライブである。モーターによる減速機能とディファレンシャル機能の両方を備え、音響的に最適化されたギア設計により静粛性が高いという。

ZFはまた、「Cubix」と呼ばれる集中型ソフトウェアの制御下で、電気モーターとその駆動コンポーネントを連携させる新しいインテリジェント・サスペンション・システムを開発した。ロータス・エレトレにも同システムが採用され、高品質なロード・ダイナミクスの実現を目指す。

Cubixは、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV、ソフトウェア定義車両)という概念のもとで「シャシー2.0」とも呼ばれており、事実上、車載のスーパーコンピューターとなる。液体冷却、インテリジェント・ダンパー、ステアバイワイヤ、ブレーキバイワイヤを制御するために最大1500TOPS(1秒あたり1500兆回)の演算能力を備え、同時に電気モーターの駆動制御にも統合される。このCubixは、ZF以外の他社製コンポーネントを統合することもできるという。

ZFのテクノロジー、モーターだけじゃない

【イージー・ターン】
開発に3年を費やしたというマルチリンク・フロントアクスル「イージーターン」は、独自のサスペンション・ロワーアームとキングピンを備え、80度以上の操舵角を実現する。(一般的な操舵角は45度)。BMW i3の場合、最小旋回直径は10mから6.8mに短縮され、後輪操舵と組み合わせると5.7mになる。まるで、後輪を中心に旋回しながら横に動いているように見える。

特に大型セダンやSUVの場合、操縦性の向上は目を見張るものがある。ただし、フロントドライブシャフトは極端なロックに対応できないため、後輪駆動車のみの対応となる。自動車メーカーも興味を示しているが、量産化に漕ぎつけるにはあと2年のエンジニアリングが必要だ。

【スマート・シャシー・センサー】
ロアボールジョイントに取り付けられたセンサーが、前輪のたわみを正確に測定。これにより、くぼみなどの路面状況や、縁石への衝突など大きな衝撃に関する詳細情報を取得する。ZFは路面データをクラウド経由でナビマップに重ね合わせることで、悪路の事前警告を行い、よりスムーズなルート選択ができるようになる未来を見ている。こうしたデータは、タクシー会社やカーシェアリング事業者のメンテナンス、安全監視に役立つかもしれない。

【ヒートベルト】
今年初めのCESで初公開された「ヒートベルト」は、数秒で設定温度に達するため、電気毛布のように素早く乗員を暖めることができる。シートベルトの生地に高抵抗のワイヤーが織り込まれており、乗員に熱エネルギーを集中させることで、エアコンの負担軽減を目的としている。ベルト1本あたりの定格電力はわずか68Wだが、車両全体のHVACシステムは3.5kWを使用する。例えばBEVでは、HVACシステムの小型化によってバッテリーの消耗を抑えることができる。

【TherMas BEV HVACシステム】
「TherMas」は、バッテリーからの廃熱を利用する小型・軽量・高効率のヒートポンプである。ZFは、そのCOP効率の高さを強調している。「1kWの入力で2kWの出力が得られます。これは自動車では新しいことです」

TherMasは冷媒にプロパンを使用しており、低温での効率が10%向上する一方で、重量は最大17kg軽減されるという。外部のパイプや継手に邪魔されないデザインのため、大きさは靴箱2つ分ほど。

【パッシブセーフティ技術】
5つの新機能を搭載した先進のシートベルト技術。32ビットのマイクロプロセッサーによって制御され、触覚による警告や、着座位置がずれた乗員への対処が可能な、電動ベルト巻き取り装置が特徴である。眠気センサーと連動し、ベルトをリズミカルに揺らすことでドライバーを起こすよう設計されている。また、急ブレーキ時やエアバッグの膨張前に乗員の着座位置がずれていると、巻取り装置がベルトを強力に巻取り、乗員を正しい位置に引き戻すという。

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みんなのコメント

2件
  • 世界の自動車部品メーカーのトップはボッシュ、2位がデンソーで僅差の3位がこの記事のZF。
     「内燃機関を守る事は雇用を守る事」と某巨大企業トップが言ったとか日本の自動車雑誌は持ち上げてたと思うけど。
     この記事のように、新しい技術が登場すればその分野で新たな雇用を創出するの巨大企業だと思うのだけど、日本ではそうではないらしい。
  • おっ!ポルシェのEV、タイカンですな!!

    #EV推進党
    #飯部井乗夫
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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