この記事をまとめると
■ポルシェが6ストロークエンジンの特許を取得したことに注目が集まっている
コンパクトで安価でハイパワーな「2ストロークエンジン」! クルマもバイクからも消えたワケ
■2回の燃焼行程を可能にする革新的構造が熱効率向上に貢献している
■e-fuelとの組み合わせによりカーボンニュートラルを実現する可能性もある
6ストロークっていったいどんな仕組み?
昨年の秋口、一部の外国誌が着目して伝えたニュースがあった。内容を要約すると「ポルシェ、6ストロークエンジンの特許を取得」というタイトルの記事である。
6ストローク? なんのこっちゃ、というのが偽らざる思いだったが、非常に興味をひかれるキーワードだった。ただ、その内容についてポルシェAGから詳細なニュースリリースはなく、報道された可能な限りの情報を集めてみることにした。その結果、判明したのが、6ストロークで一巡する内燃機関、ということだった。
現在、我々が知る内燃機関は、吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気でひとつの燃焼作用が成立する4ストローク(サイクル)エンジン(クランクシャフト2回転=720度)と、ピストン上昇時に吸気と圧縮、ピストン下降時に爆発(燃焼)と排気を同時に行う2ストローク(サイクル)エンジン(クランクシャフト1回転=360度)の2タイプだけだが、ポルシェが新たに特許を取得したエンジンは6ストローク(クランクシャフト3回転=1080度)だという。
空気と燃料を混合、それに着火して回転力を得る内燃機関の行程を見ると、4サイクルエンジンの各行程が行う動きがすべてであり、常識的には、吸気→圧縮→爆発→排気以外に何か必要な行程があるのか、となってしまうが、なんとポルシェの6ストロークは、吸気→圧縮→爆発→圧縮→爆発→排気の各行程によって成立するエンジンだという。
思わず、「エッ」と疑問が生じてしまうサイクルだ。最初の圧縮→爆発の動きからすぐに2度目の圧縮→爆発につながるというのはどういう行程構成なのか、その動作の内容が理解できない。つまり、1度目の燃焼によって生じた燃焼ガスの排気と、新たに燃焼する空気(吸気)をどうやって取り入れるのか、その動きが理解できないのである。
ピストンの動きに合わせて吸排気バルブを開閉させる4ストロークエンジンのメカニズムでは、6ストロークエンジンの2回目の圧縮→爆発行程の成立が考えられないのだ。
1回目の燃焼作用で、シリンダー内の酸素は皆無の状態になっている。少し前の燃料供給方式、キャブレターや間接噴射のインジェクションでは、吸気バルブが開くことで燃料と空気の混合気をシリンダー内に導入していたが、2度目の圧縮行程では、当然ながら吸気バルブが閉じているため混合気の取り入れができず、シリンダー内には燃焼させるための燃料/空気がないことになる。
これは、現在の直接噴射のインジェクションでも同じことがいえ、吸気バルブの開閉にかかわらず燃料の供給はできるものの、吸気バルブが閉じている状態では空気(酸素)の取り入れができないことは同じであり、燃料はあっても燃焼を行うことはできず、2度目の燃焼行程の成立が考えられないのである。
実際には、ここからがポルシェの特許の意味、真価ということになるわけだが、まず、ポルシェの6ストロークは可変ストローク構造で作られている。1度目の圧縮/爆発(燃焼)行程と2度目の圧縮/爆発(燃焼)行程とで、ピストンストロークが異なるようなのだ。
熱効率を上げe-fuelを用いて内燃機関の復権を図るか
では、その真意は、ということだが、どうやらシリンダー下部に、シリンダーの円周に沿って複数の吸気ポートが設けられ、ピストントップが円周上のポート位置より下がることで、この吸気ポートから空気の導入が行えるようになるようなのだ。といっても、大気圧だけでは空気の導入は不可能だ。そこで威力を発揮するのが過給機ということになる。過給機で圧縮された空気がポートからシリンダー内に圧送されるかたちで充填される。
ここからは推測だが、ピストン上昇過程のある段階までシリンダーヘッドの排気バルブが開き、燃焼ガスを排出。加圧されてシリンダー下部のポートから導入された空気が、シリンダー下方から燃焼ガスを押し出す効果を見越した方式ではないかと思われる。燃焼ガスをシリンダー内に再導入して燃やす考え方はEGRと同じ、といったら乱暴だろうか? しかし、熱効率は確実に引き上げられる。
これも推測だが、ポルシェ6ストロークエンジンの狙いは、熱効率の引き上げにあるのではないか。簡単にいってしまえば、燃やした燃料からどれだけエネルギーとして活用できるかが熱効率で、熱効率が高いほどクルマを走らせるのに必要な燃料量は少なくなる。つまり、消費燃料が少なくなれば、排出する二酸化炭素の量を抑えられる、ということになるからだ。
さて、考えるべきはここからで、これまでどおり化石燃料を使うのであれば、いかに熱効率に優れた6ストロークエンジンとはいえ、二酸化炭素の排出は避けられない。つまり、時代に逆行するのが内燃機関ということになる。この二酸化炭素の排出を低減ではなくゼロにするため、電気モーターによるEVの普及が急がれているわけだが、2023年3月、世界に先駆けドイツ国会で、将来的にe-fuel(合成燃料)を使う内燃機関車の製造・販売が認められるようになった。これは、内燃機関にとっての一発大逆転だった。
e-fuelは、炭素と水素によって燃料を作り出す方法で、炭素は大気中の二酸化炭素を原材料とする。炭素を大気中から取り入れ、燃焼によって再び大気中に放出するため、大気中の二酸化炭素の量は増えもせず減りもせず。いわゆるカーボンニュートラルとなり、地球環境の破壊にはつながらない、という考え方だ。
こうした場合、e-fuelを使う内燃機関車は、二酸化炭素排出の点でEVと同じ条件に立てることになる。ポルシェは、e-fuelによる内燃機関車が社会的に認められた状況下で主導権を握る立場を目指し、新たに内燃機関の特許を出願、取得したと思われる。気になるのは実際の性能で、登場に期待が寄せられる新エンジンである。
振り返れば、フェルディナント・ポルシェの作った1号車は電気自動車(EV)だった。100年以上も前に無公害車を作っていたポルシェが、今度は内燃機関車で無公害車の先頭に躍り出たことになる。モーターレーシングの世界、高性能スポーツカーの世界で名を馳せるポルシェだが、社会と密接な関係にあるモータリゼーションの立場でも、第一級の自動車メーカーであることを思い知らせる特許の取得劇だった。
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みんなのコメント
電気自動車というけれど
そもそも電気は間接的に
化石燃料燃やしている上
直接燃やすより
むしろ変換効率は
悪くなるかと…?