スバルの運転支援システム「アイサイト」が新型SUBARU BRZのMT車に搭載された。今回は特設コースで新型BRZに試乗してアイサイトの機能の1つプリクラッシュブレーキを体験。「スポーツモデルの安全性」について考えてみた。(Motor Magazine 2023年12月号より)
新型BRZにMT車初のアイサイトを搭載
2023年9月、改良版BRZにSUBARU(以下、スバル)のMT車では初めてとなる運転支援システム「アイサイト」が搭載された。これは2030年までに「死亡交通事故ゼロ」を目指すスバルにとって、とても重要なトピックである。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
スバルのクルマづくりの原点は、前身となる中島飛行機時代から引き継がれているDNAにある。少しのミスが惨事に繋がりかねない航空機では、操作ミスを減らすため、そして万が一ミスをしてしまった場合も想定して、「人を中心にした設計」が求められてきた。
この人を中心に考えて安全を追求するクルマづくりこそが、現在のスバルの「総合安全」という考え方である。スバルはそんな「総合安全思想」のもと、「0次安全」「走行安全」「予防安全」「衝突安全」「つながる安全」を軸に安全技術を磨き続けてきた。
その軸のひとつとなる予防安全に繋がる技術こそが「アイサイト」で、2008年に登場した4代目レガシィから搭載された技術である。その後もアイサイトは年々進化を重ねて、機能や精度を向上させてきた。
そして2020年には360度センシングを実現した「新世代アイサイト」をレヴォーグに搭載した。現在のスバルのほとんどの車種(OEMを除く)に搭載されている「アイサイト」はいまやスバルを象徴する技術となった。
「死亡交通事故ゼロ」実現のためMT車にもアイサイト
そんなアイサイトだが、スバルのスポーツモデルBRZへの搭載は2021年登場の2代目からで、しかもAT車のみだった。これまでMT車にアイサイトが搭載されていなかったのはなぜだろうか。
「当初はWRX STIやBRZなどのスポーツ色が強いモデルのMT車では、運転を純粋に楽しみたいというお客様が多く、搭載する予定はありませんでした」とADAS開発部の寺田拓郎氏。
しかし、死亡交通事故ゼロを実現するためには車種を問わずできるところから先進安全技術を投入することが大切。そしてスポーツモデルにこそ安全性能が必要であると考えたスバルは、MT車にもアイサイトを搭載することにした。だが、もともとCVT/AT車用に開発されたアイサイトは、MT車にそのまま搭載すれば済む話ではない。そこで苦労したのがMT車ならではの制御の問題だった。
「MTではプリクラッシュブレーキが作動して緊急停止した際にエンストしてしまうので、まず停止時の制御をどうするのか、またACCに関してはギアの操作もすべてドライバーが行うことになるので、制御で介入できるところが少ないという課題がありました」
初代アイサイトが登場してから15年。長い間、安全技術の開発を続け、技術と品質を熟成させてきたスバルは、ついにMT車向けアイサイトのリリースに至った。
▶▶▶次ページ:MT車にもアイサイトを搭載することで、ぶつからず、疲れない走りを実現
MT車向けアイサイトの機能は5つ
MT車向けアイサイトの機能は、「プリクラッシュブレーキ」「追従機能付きクルーズコントロール」「車線逸脱警報」「ふらつき警報」「先行車発進お知らせ機能」の5つ。その中でも「ぶつからない」と「疲れない」を実現するのが、プリクラッシュブレーキと追従機能付きクルーズコントロールである。
まず、追従機能付きクルーズコントロールだが、MT車でも違和感なく使えるように加減速の制御が工夫されている。使用中はギアチェンジも可能だが、ニュートラル状態やクラッチを踏んで5秒経つと解除されたり、6速で25km/h以下(エンジンがストールしない速度)になると解除されるというMТ車ならではの条件も付く。
次にブレーキ制御で衝突回避をサポートするプリクラッシュブレーキだが、通常は1km/h以上、ニュートラルやクラッチが繋がっていなければ8km/hから作動する。またスポーツ走行時など任意でオフにすることも可能だ。
SUBARUは「安全に停止する」に拘る
この「安全に停止する」という部分にスバルはとくにこだわりがある。「プリクラッシュブレーキが作動して停止した後もブレーキをそのまま保持します。他社ではエンストと同時に制御が解除されたりギアロックだけの場合もあるのですが、スバルではブレーキを保持し、アイサイトからドライバーの制御に移り変わる部分でも安全に行ってほしいと考えています」と寺田氏。
今回は特設コースでこのプリクラッシュブレーキを体験することができた。障害物に向かって進みながら、自分でブレーキを踏まないというのはなかなか覚悟がいる。すると、障害物が迫る中、まずは「ピピピピピッ」という警告音と表示が出て、その後すぐに若干のブレーキが作動、そしてその直後「ピー」という警報とともに強力なブレーキでクルマはピタッと停止した。一瞬の出来事だった。
自分で操る楽しみがMT車の醍醐味なので、運転支援は不要と考える人もいるだろう。しかし、万が一の備えがあればより安心してドライブができるというもの。
MT車へのアイサイト搭載で着実に「死亡交通事故ゼロ」実現へ近づく。そしてスバルの安全思想と強い拘りが、スポーツモデルにも安心と楽しさを与えてくれるのだ。(文:中村圭吾/写真:井上雅行、SUBARU)
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みんなのコメント
ただ、6速26km/h以上までACCが使えるのは助かる。
シビックタイプRは40km/hだかで切れるので、高速道走行時にちょっと車が詰まると直ぐにオフになるので面倒でしたから。