この記事をまとめると
■ジムニーシエラをベースに5ドア化したジムニーノマドに試乗
「でかジムニー」のジムニーノマドがいま爆発的人気! 過去を振り返ったら「8人乗りジムニー」その名も「ジプシー」が存在した
■悪路走行ではジムニーシリーズに共通の走破性を確認
■意外なほど上質で快適な乗り味ももっている
悪路+オートマの相性は想像以上にいい
2025年1月に発表されたスズキ・ジムニーノマドは、ジムニーシエラをベースにホイールベースを340mm延長し、リヤドアを備える5ドアモデルとして登場した。発表直後から注文が殺到し、わずか数日で受注停止となったことからも、注目度の高さがうかがえた。そのジムニーノマドが一部仕様変更を受け、2026年1月30日に受注が再開され、同年7月1日から発売された。外観やK15B型1.5リッター自然吸気エンジン、ラダーフレーム、副変速機付パートタイム4WDといった基本構成に大きな変更はない。しかし、安全運転支援機能の強化や快適装備を充実させるとともに、タイヤやサスペンション、吸音・遮音対策にも手が加えられている。
今回、富士ヶ嶺オフロードの特設コースで4速AT車に、周辺の一般道では5速MT車に試乗する機会を得られた。
まず確認したかったのは、5ドア化によってジムニー本来の悪路走破性が損なわれていないかという点だ。ジムニーノマドのホイールベースは2590mm。ジムニーシエラより長くなったため、障害物をまたぐ際のランプブレークオーバーアングルではスペック的には不利になる。一方、前後オーバーハングはジムニーシエラと同じに抑えられており、最低地上高も210mmを確保する。延長された専用ラダーフレームにはセンタークロスメンバーとサイドフレームリーンフォースが追加され、ロングホイールベース化に伴うねじれや曲げへの対策も施されている。
トランスファーレバーが4L(4WDのローギヤ)に固定を指定され、岩や深い凹凸が連続する特設コースへ進入する。走り始めて最初に驚かされたのは、悪路走破力よりもむしろ静粛性の高さだった。左右の車輪が大きく上下し、車体に強いねじり入力が加わっているにもかかわらず、ボディやドア開口部からギシギシという軋み音がまったく聞こえてこない。サスペンションからのガタつきや異音もなく、室内は予想以上に落ち着き静寂を保っている。
今回のモデルでは車外騒音規制への対応を機に、エンジン、トランスミッション、トランスファー周辺を中心とした吸音・遮音対策が強化された。ルーフライニングにも吸音材が配置され、床下のカバーや遮音材、厚めに施工されたアンダーコートなどが騒音の放射と車内への侵入を抑えている。
さらにタイヤも見直され、その特性にあわせてコイルスプリングやショックアブソーバを再チューニングしたという。単に音が小さくなっただけでなく、車体全体の動きが落ち着き、ひとクラス上のクルマに乗っているような重厚感が与えられている。
泥を含んだ急斜面でも標準装着タイヤは確実に路面を捉えた。K15B型エンジンは最高出力101馬力、最大トルク130Nmであり、絶対的に強力なパワーユニットではない。それでも4Lでは通常の約2倍となる駆動力を利用でき、AT車ならトルクコンバーターを介して駆動力を途切れさせずに伝えられる。
極低速で急斜面や岩場を走る場合、MT車ではクラッチ操作を誤るとエンストする可能性がある。その点、AT車は右足で駆動力を調整しながらステアリング操作に集中できる。純粋な悪路走破を重視するなら4速AT車を推奨するというスズキの理屈も納得できる。
対角線上の2輪をローラーに載せた状態では、接地していないローラー上のタイヤが空転する。しかし、ブレーキLSDトラクションコントロールが空転輪だけにブレーキをかけ、反対側の接地輪へ駆動力を伝える。エンジン回転を一定に保つだけで、ノマドは難なくローラー台から脱出した。
左右交互に大きなコブが続くモーグル路でも、3リンクリジッドアクスル式サスペンションが可能な限り路面を捉える。フロントサスペンションストロークはバンプ側で約80mm、リバウンド側約70mm、リヤサスペンションではバンプ側で約90mm、リバウンド側約40mmと大きいが、そのストロークを使い切って一輪が浮いたあともブレーキLSDトラクションコントロールが駆動力を確保してくれるため進路を乱すことなく前進できた。
ヒルディセントコントロールは急な下りで有効だ。クリープで発進し、ブレーキを自動制御して車速の上昇を抑え一定速度に保ってくれるため、ドライバーはステアリング操作に専念できる。ただし、坂へ進入した直後には一度車速が上がってから制御が強まる傾向が感じられた。乾いた路面では問題にならないが、凍結路では初期の速度上昇をもう少し早い段階から抑えてほしいところだ。
あくまで「ジムニーのまま」快適性や利便性だけ高めた!
一般道では5速MT車に乗り換えた。1速から5速までのギヤは想像していたほどローギヤードではなく、市街地でも扱いやすい。発進には基本的に1速を使う必要があるが、流れに乗れば早めに上のギヤを選択できる。高速巡航時のエンジン回転も極端に高いわけではなく、5速MT車の日常性は十分に確保されている。5速は0.666というオーバードライブのギヤ比が採用され、時速50km/hでのエンジン回転は1500回転。時速100km/hでは3000回転となる。4速ATも4速ギヤはオーバードライブで100km/h巡航は3030回転と、5速MTとほとんど同じだ。
何より印象的なのは、舗装路でも静かで快適なことだ。ラダーフレームに前後リジッドアクスルという構成から想像する粗野な感触はない。荒れた舗装や補修跡を通過すると、重いアクスルが動くことによる多少の揺すられ感は出る。それでも入力は角が丸められ、車体に不快な振動や軋み音を残さない。
ステアリングは操舵力がやや重く、ギヤ比もロックtoロックで3.5回転とスローだ。現代の流行りであるラック&ピニオンを使わず、ボールスクリュー式として路面からのキックバックを抑える設定は悪路で大きな安心感につながる一方、市街地での切り返しやUターンでは多くの操舵量を必要とする。さらに、最小回転半径は5.7mと車体寸法に対して大きめ。これはリジッドアクスルによるナックル構造による制限と悪路での耐久性を優先した結果であり、ジムニーがジムニーであり続けるための割り切りともいえる。
1.5リッター自然吸気エンジンは、車体を強烈に加速させるほどの余裕はない。乗員や荷物を積んだ登坂路では、もう少しトルクが欲しいと感じる場面もあるだろう。しかし、ターボ化や電動化は重量や価格、冷却性能、アクセル操作に対する応答特性にも影響する。低速域で駆動力を細かく扱うことが求められるジムニーには、自然吸気エンジンならではの素直さにも価値がある。
ノマド最大の魅力は、当然ながらリヤドアと実用的な後席を得たことだ。後席ヒップポイントはジムニーシエラより50mm後方へ移され、左右乗員の着座間隔も90mm拡大された。4人乗りに割り切ったことで、後席には大人2名が無理なく座れる空間が確保されている。
リヤシートには1段階だがリクライニング機構が備わり、背もたれ角度を変えるだけでも着座姿勢は大幅にラクになる。室内の静粛性向上も後席の快適性に効いており長距離移動にも十分使えそうだ。
一方、後席用の空調吹き出し口や専用ドリンクホルダーなどは備わらない。前席中心だったジムニーの基本設計を受け継がざるを得ない部分であり、ファミリーカーとして見れば改善の余地は残る。
荷室容量は4名乗車時で211リットル、荷室床面長は590mmを確保する。後席は5対5分割可倒式で、片側だけを倒して長尺物を積むことも可能だ。3ドアのジムニーシエラでは難しかった「4人で乗り、全員分の荷物も積む」という使い方が、ノマドでは現実的になった。
安全装備も大きく進化した。衝突被害軽減ブレーキにはデュアルセンサーブレーキサポートIIを採用し、車線逸脱抑制機能を標準装備する。アダプティブクルーズコントロールは4速AT車が全車速追従機能付き、5速MT車は30km/h以上で追従走行が可能だ。9インチHDディスプレイを用いたバックアイカメラ付ディスプレイオーディオとスズキコネクト対応通信機もメーカーオプションで選択できる。
メーカー希望小売価格は5速MT車、4速AT車ともに292万6000円。先進安全装備と快適性を高めながら、300万円を下まわる価格に抑えている点はスズキらしい極めて大きな魅力だ。
ジムニーノマドは5ドア化によってユーザー層を広げたが、ラダーフレーム、リジッドアクスル、副変速機付パートタイム4WDという核は変えていない。乗用車的な便利さを得るためにジムニーらしさを薄めるのではなく、ジムニーのまま日常性を引き上げたのである。
悪路では市販状態のままで驚くほど高い走破性を示し、舗装路では従来の本格四輪駆動車というイメージを覆す静かさと快適性を見せた。最小回転半径や操舵量、動力性能などに固有の癖は残るが、それらを含めても今回の一部仕様変更モデルは完成度が高い。長く待ってでも手に入れたいと考えるユーザーが多い理由を、実際の走りが明確に証明していた。
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みんなのコメント
読んで共感出来る記事でした。
自分の用途にはバッチリなんだけれどファミリーカーとしてはおまけ程度に考えた方がいいと思うな。
なしよりのありというか…
あくまであのジムニーが5ドアになっただけと考えれば不満は少ないのでは?
全く気にならないけど最大回転数とか気にするなら違うの乗ればいいし。
ただ最高に楽しくていいクルマです!
家族の車への理解に感謝ですわ。