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ブレーキに苦労した平川のFP1。“失敗を恐れず大胆に”臨んだ中東2連戦【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第4回】

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ブレーキに苦労した平川のFP1。“失敗を恐れず大胆に”臨んだ中東2連戦【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第4回】

 2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。シーズン序盤から大混戦の中団勢のなかで、ハースはバーレーンでダブル入賞を達成し一時はコンストラクターズ選手権で5位につけた。ところが続くサウジアラビアでは入賞を逃し、順位も6位に。しかし成績には繋がらなかったものの、チームとしていいレースオペレーションができたことで、今後に向けても「だんだんレースチームになってきた」と手応えを明かした。そんなバーレーンGPとサウジアラビアGPを小松代表が振り返ります。

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2025年F1第6戦マイアミGP TV放送&タイムスケジュール

■2025年F1第4戦バーレーンGPNo.31 エステバン・オコン 予選14番手/決勝8位No.87 オリバー・ベアマン 予選20番手/決勝10位

■第5戦サウジアラビアGPNo.31 エステバン・オコン 予選19番手/決勝14位No.87 オリバー・ベアマン 予選15番手/決勝13位

 ようやく今年最初の3連戦が終わりました。今回はバーレーンとサウジアラビアでの中東2連戦を振り返っていこうと思います。

 前戦日本GPの後に発表したとおり、バーレーンGPのフリー走行1回目では平川亮選手を起用しました。いいラップタイムを残せなかった(編注:平川選手のベストタイムは1分35秒261の17番手)のは、ブレーキの問題があり、そのせいで苦労することになったからです。うちはブレンボのブレーキを使っていますが、平川選手が以前乗ったアルピーヌやマクラーレンは他社のブレーキを使っているので、全然フィーリングが違うんです。昨年のアブダビテストの時は終日ハースのクルマに乗ることができたので慣れたと言っていましたが、今回は1時間のセッションでしたし、バーレーンにはアブダビと違ってターン1、4、14のようなブレーキを試されるようなコーナーもあるので、自信を持って攻めることができなかったというわけです。

 FP2でオリー(編注:オリバー・ベアマンの愛称です)が乗った時も変わらずブレーキに苦戦していて、それが彼の予選Q1敗退の一因でもあります。だから平川選手に関しては、彼自身の問題というよりも、ブレンボのブレーキに慣れなければいけなかったのに、ブレーキ自体に問題がありタイムも出せなかったというセッションでした。本人は残念がっていましたけど、それ以外のセッションに臨む姿勢やフィードバック、プロフェッショナリズムという面では期待通りです。タイムが出ない時も「何がどうだから攻められない」と正直に言ってくれるので、 変な方向にエンジニアを惑わせることもないし、こちらとしてもすごくやりやすいです。

 平川選手なら、ラップタイム的にはどちらのドライバーともほとんど遜色ないタイムで走れる実力はあると考えています。今後に向けては、まずはしっかりとエステバンやオリーのコンマ2~3秒以内くらいで走って、プログラムをこなしてほしいです。これも以前書いたことですが、本当にプレッシャーがかかる場面でどうなるかというのはわかりません。ただ、もし本当にレースに出場することになった場合に備えて、できる準備は全部しておくつもりです。今週の火曜にはうちで初めてシルバーストンでテスト走行もしました。


■これ以上ないレースオペレーションだった中東2連戦

 第2回のコラムで書いたように、開幕戦ではバーレーンでのプレシーズンテストでは出なかった問題が出てしまったことで苦戦しました。それをなんとか改善するために日本GPではいくつかの工程を飛ばしてでもフロアの新しいパーツを投入したわけですが、そういった問題を認識したうえで望んだバーレーンGPは、問題は出てきたものの症状は軽かった、という印象です。

 うちはテストではあまり予選の練習をしなかったのですが、それは問題があると考えていなかったからです。うちが直面している問題というのは、予選のように速度域が上がったり、攻める走りをする時に特に出てきます。だから今回も予選想定のランをした時に問題が出ましたが、開幕戦の時ほどではなかったですし、その場で自分たちでどうにか対処できるレベルになっていました。それがよかったことのひとつです。

 またバーレーンGPでは速さはあったものの予選を失敗したのでダブル入賞できるとは想像していませんでした。エステバンを14番手からなんとか10番手くらいに引き上げることはできると思っていましたけど、まさか20番手スタートのオリーを10番手まで上げられるとは……という感じです。バーレーンGPはレース結果がよかっただけじゃなくて、僕たちの考え方や行動の仕方、コミュニケーションなど、僕がこのチームを「こういうチームにしたい」と思ってやっていることが、レースのやり方にすべて反映されていたので、そういう意味で結果以上にすごく嬉しかったですね。

 僕はこのチームを、“目の前のことをしっかりと見て、大胆に失敗を恐れずにやる”ことができるチームにしたいんです。バーレーンGPで言えば、ダブル入賞という結果にたどり着くまでのプロセスの話で、みんなできちんとコミュニケーションをとって、刻々と変化する状況を見て、ギャンブルをするのではなく、結果を恐れず目の前にあるものに取り組むということです。結果は後からついてくるものだと思うので、結果を出すまでのプロセスが一番重要であり、それがハースF1チームを成長させるうえで僕が大事にしていることです。

 たとえば、バーレーンはタイヤのデグラデーションが大きいのでアグレッシブにアンダーカットをしようと決めていました。5周目にピットインしたニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)には反応しなかったのは予定通り。しかしうちとは反対に反応したアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)がヒュルケンベルグをカバーできなかったのを見て、アンダーカットの効果が想定以上に大きいことがわかりました。

 ということはヒュルケンベルグに続いてアンダーカットをするドライバーが出てくるはすで、後手に回ったら負けると判断しエステバンを8周目にピットに呼びました。こういうのは失敗を恐れていたらできないし、最新の情報を見て、常にアジャストしながら自分たちが一番いいと思ったことをやるしかありません。

 反対にオリーの方は第1スティントを伸ばしました。するとオリーがどこで勝負をすることになるかというと、最後の第3スティントです。そこで最終スティントで一番適したタイヤ使うために第2スティントで先にハードタイヤを履くというふうに選択を変えて、最後にミディアムかソフトタイヤで行くという選択を残しました。

 オリーは最後にミディアムタイヤを使いたいと言っていて、(説明の順番は前後しますが)予選では僕のミスがあったので、オリーの主張もよくわかっていましたが、こちらにはいいデータがあったのでソフトを選びました。セーフティカーランが想定より1周短かったので、第3スティントではソフトで20周走ることになりましたけど、それでもオリーはソフトを活かしてオーバーテイクをして、その後は順位を守り切ってくれました。

 予選のミスというのは、Q1でソフトを2セットしか使わなかったことです。エステバンでは想定通り上手くいきましたが、オリーの方は僕の判断ミスと言わざるをえません。金曜日の段階であまりタイムは出ていなくてもQ3に進めるという手応えが僕にはあったので、Q1をソフトタイヤ2セットで走ることにしたんです。先に書いたようにオリーにはブレーキの問題があってFP2やFP3でちょっと苦労していましたが、オリーはそんな状況でもタイムを出せるドライバーなので、僕は彼に対して過信していた部分がありました。

 一方でドライバーはふたりともQ1を突破できると思っていなかったので、タイヤを3セット使いたいと言っていたのですが、僕はQ2のために新品のタイヤを2セット残すべきだと考えていたのでドライバーにはそれで納得してもらいました。エステバンはこの判断でよかったものの、オリーはブレーキの問題もあってあまりクルマを限界で走らせることができていなかったので、1セット目のランはあまりうまくいかず、2セット目でもミスがあって20番手になりました。彼が苦労していたという僕の認識が甘かったので、オリーがどれだけ実力のあるドライバーであっても3セット用意すべきだったと思います。彼もミスがあったと悔しがっていましたけど、僕が悪かったと伝えました。

 その次のサウジアラビアGPでは結果は出ませんでしたけど、レースオペレーションに関しては、これ以上ないくらいできていたと思いますし、評価しています。サウジで苦戦した理由は、予選用のC5タイヤで力を出しきれなかったことです。ふたりとも新品よりユーズドの方がフィーリングがよかったという状況だったので、タイヤをきちんと理解できていませんでした。

 レースではストレートでクルマの後ろにつくと乱気流を受けますし、予選の失敗がさらに響きました。VF-25がストレートであまり速くなかったことや、昨年よりタイヤが一段階柔らかくなったことも影響していますし、いろいろな兼ね合いがいまいちあの超高速コースに合っていなかったです。クルマのパフォーマンスの幅の狭さが出てしまいました。


■「だんだんとレースチームになってきたな、という感じ」

 開幕から5戦を終えて、現在ハースはコンストラクターズ選手権で6位にいますが、正直にいうと今のチームには6位の実力はないと考えています。7位くらいが妥当ですかね。だから今6位にいるというのは上出来だと思います。なぜ上出来の成績を残すことができているのかというと、今年はポイントを獲れる時に取りこぼさずに獲ることができているからです。ここまでチャンスを逃さずにやってきていると思いますし、開幕戦で問題があった時にどういうリアクションをしてそれに取り組んだかというのを振り返ってみても、だんだんとレースチームになってきたなという感じです。

 ただ、厳しいと思われるかもしれないですが、まだ及第点には届いていません。次の第6戦マイアミGPに向けてはサウジの反省を活かしてタイヤの理解を進めて、その次のエミリア・ロマーニャGPではまたアップデートをするので、さらに改善する方法を考えています。正しい方向に向かっているので悲観はしていませんが、もう少し安定して戦えるようにしていきたいですね。

[オートスポーツweb 2025年05月03日]

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