もくじ
ー ワン・アンド・オンリーの四輪駆動モデル
ー ラダーフレームに自然吸気エンジン
ー デフロック機能は欲しい
ー アフリカで選ばれるランドクルーザー
ー 両車それぞれの価値
ー 番外編:英国編集部、マット・プライヤーのジムニー
ー 2台のスペックのスペック
ワン・アンド・オンリーの四輪駆動モデル
ワン・アンド・オンリーともいうべき、軽量な四輪駆動モデルがスズキ・ジムニー・シエラ。3.6mの短い全長は、驚くべきことに先代よりもさらに短く、1135kgの車重は、大きなレース用のツールボックスと同じくらいの重さ、というのは大げさか。
このクルマのオフロード性能を確かめるために選んだのは、起伏の激しい使用されなくなった採石場。山羊の群れが自由に跳ねる中、わたしがライバルに指名したのは、轍を縫って走る重量級のワイルドなモデル、トヨタのランドクルーザーだ。最新の4代目ジムニー・シエラは、ランドクルーザーの隣に並ぶととても小さく見える。初代と変わらず、もともとは日本の軽自動車規格に合わされて作らているから、当然だろう。日本の軽自動車版ジムニーは、黒いオーバーフェンダーが付かないから、全幅は更に狭い。
ジムニーは、実用的で堅牢な、ジープ・ライクなクルマだが、初代が登場したのは1970年。軽自動車規格の枠の中で誕生した、初めての四輪駆動モデルだった。初代ジムニーは11年間生産され、続いて登場した2代目ジムニーは、17年に渡って生産されている。2代目は英国でも「スズキ・ジープ」として呼ばれ、広く知られるようになった。その後登場した先代の3代目は20年間のモデルライフを過ごしており、不思議なことに徐々に長くなっている。
最新モデルは3代目よりも全長が短くなっているが、わたしの目にはひとまわり大きくなったように見える。恐らく直線的で角ばった、ディフェンダーやジープ、Gクラス、あるいはオリジナルのSJ型ジムニーに似たエクステリアデザインをまとっているからだろう。
ラダーフレームに自然吸気エンジン
極めてコンパクトなボディサイズのおかげで、ジムニー・シエラの車内は狭いまま。リアシートも備わってはいるが、その小さなリアシートを畳んでフラットなラゲッジスペースにしてしまうと、フロントシートからプラスティック製のフロアの奥まで手が届いてしまう。荷室に残った枯れ葉を拾うのには丁度いい。直立した後部座席に狭いラゲッジスペースの組み合わせだから、ジムニーはファミリーカーとしては受け入れられないだろう。
またジムニー・シエラは、現代主流になっている車両構造も受け入れていない。オフロード走行が可能なクルマでも、多くがモノコックボディを採用しつつある現代に、ジムニーは独立したラダーフレーム・シャシーを備えている。また、多くのクルマがエンジンにターボを組み合わせている中で、ジムニー・シエラは自然吸気のまま。1.5ℓの直列4気筒エンジンは、101psを6000rpmで、13.1kg-mを4000rpmで発生させる。
通常のハイレンジの4輪駆動の他に、トランスミッションにはローレンジも備わり、急勾配を上り下りするときに役立つ。しかもジムニーはオーバーハングが短く、勾配でも接地する確率はかなり低い。フロントオーバーハング部のアプローチアングルが37度、ホイールベース間のブレークオーバーアングルが28度、リアオーバーハング部のデパーチャーアングルは49度となっている。充分過ぎる数字だ。
この角度はランドクルーザーはもちろん、今まで運転したSUVの中で最も印象的だった、最新のジープ・ラングラーにも負けていない。ラングラーの場合、アプローチアングルは44度で優れているが、ブレークオーバーアングルは27.8度、デパーチャーアングルは37度と及ばない。
デフロック機能は欲しい
ただ、オフロードの走行性能を左右する数値は他にもある。ジムニーは前後にリジットアクスルを採用するから、最低地上高の位置はホイールセンターの高さから少し下の部分になる。ジムニーが履くタイヤは、15インチの195/80というサイズで、最低地上高は210mmだ。一方でラングラーは大径タイヤを履いており、300mmを超える。そのため、ラングラーの方が深い轍や険しい岩場も走ることができるといえるだろう。
そのかわりジムニーの場合は、1645mmという全幅と、最小回転直径9.8mという小回りの良さで、他のオフローダーでは走りきれない段差も乗り越えることができる。また軽量な車重のおかげで、重たいクルマではスタックしてしまうような泥炭地でも、軽々と走り抜ける。
より大型のモデルでは排気量の大きいターボ・ディーゼルエンジンを搭載し、ディファレンシャル・ロックが可能なクルマもある。ジムニーは一般的なオープンデフを搭載し、ブレーキを利用したトルクベクタリング・システムが備わるため、ディファレンシャルギアをロックさせるのと似た機能を果たすが、この場合、常にうまく働くとは限らない。
デフロックは、片側のタイヤが浮いてしまったときなどに、無駄なホイールスピンを防ぐ機能がある。一度バックして少しスピードを上げて、慣性の力で駆け抜けるという手段もあるけれど。
ジムニーにターボエンジンは不要だろうか? オンロード走行時には付いていた方が良いだろう。しかし、険しいオフロードでは、微妙なクラッチ操作なしで、エンストさせずに低速走行をすることは極めて難しい。またターボを搭載すると、インタークーラーなども含めて20kgは重量が増える。増加するパワーに合わせて、クラッチの容量も大きくする必要があるかもしれない。そのような装備が招く重量増は、ジムニーが理想と描く姿とは異なっていると思う。
アフリカで選ばれるランドクルーザー
数ヶ月前、世界中の自動車メーカーの中で、生産するユニット数で見るとスズキが最も収益率で優れているという報告があった。ジムニーを詳しく見ていくと、その理由もわかってくる。ボディを軽くノックしてみれば鉄板の薄さが分かるし、塗装の仕上げや塗装されている範囲も絶妙。エンジンルームにも、無駄な黒い樹脂製のカバーは殆ど見られない。
ターボをラインナップさせないことでコストも抑えられるし、トランスミッションはできの良い5速マニュアルだけ。燃費は12.6km/ℓで、二酸化炭素の排出量も154g/kmと、さほど優れて居るとはいえないが、上手にコンパクトカーをまとめて利益を上げるという、他のメーカーでは真似できないスズキ流のクルマ作りが見えてくる。
一方でランドクルーザーはコンパクトとはいい難いが、理念の面ではジムニーと共通する部分がある。スズキとは異なる手法ながら、オンロード走行を洗練させるということ以上に、オフロード性能を優先している。オンロードでの乗り心地には目をつむって欲しい。しかしランドクルーザーこそ、アフリカの大部分で選ばれるべきクルマだし、今回のラトランドの採石場にもピッタリだ。
渡河性能は700mmもあり、ジムニー・シエラの2倍近い水深まで対応しているが、それ以外にも、車重や価格、牽引重量などもジムニー・シエラの倍近い。ランドクルーザーもまた、ラーダフレームにボディが乗る従来ながらの構造を持っており、どこへでも出かけられて、何事もなく戻って来れるだろう。
さらにローレンジ・ギアとリジッドアスクル、リミテッドスリップデフも備えている。最低地上高はジムニー・シエラより5mm低いが、ハイエンドモデルではエアサスペンションも選択できる。今回のテスト車両となる3ドアモデルは驚くほど機敏で、最小回転直径も10.4mと悪くない。
両車それぞれの価値
悪路に踏み入れてみると、ジムニーでは通過できる茂みの間が、ランドクルーザーでは車幅が大きすぎて通れないことが何度かあったが、強引に押し倒して進めたかもしれない。また、ランドクルーザーの2055kgという思い車重が不利な場面もあった。しかし、ほとんどの場面でランドクルーザーの方が安楽に、リラックスした状態のまま、より険しい岩場や起伏を突き進んでいける。
ジムニー・シエラなら進めても、ランドクルーザーでは難しい場所もあったことは確かだが、ランドクルーザーの方が全般的に機能的で許容値も高く、より落ち着いて走れるクルマであることには違いない。ボディサイズに起因するメリットも多いといえる。またソリッドな剛性感のおかげで、舗装路面の走行でも倍近い洗煉性の差を感じるが、価格差を考えると無理もないだろう。
結論としては、両者それぞれの価値を見出すことになった。同じ目的を持って生まれたクルマながら、その仕上がりはまったく異なっている。この比較で勝者を選ぶということは、アリエル・アトムとフェラーリ488とで、どちらが優れたスポーツカーかを決めるようなもの。
どちらも悪路の走破性能は充分に高く、わたし好みの、実直なクルマだということだけは間違いない。
番外編:英国編集部、マット・プライヤーのジムニー
新しいジムニーのデザインがカッコいいと話題になっている。しかし、ジムニーは以前からずっとカッコ良いクルマだったと思う。この写真に写っているのが、わたしのジムニー。SJ410型と呼ばれるクルマで、新型ジムニーのおじいさんに当たる。製造はスペインのサンタナ工場で行われていた。このジムニーがわたしの中ではベスト。
初代のLJ10型が登場した1970年以降、サムライ(ジムニーの輸出名)時代の1980年代も含めて、スズキは軽量なオフローダーをずっと作り続けてきた。小さなボディサイズに自然吸気エンジンを搭載し、独立したラダーフレームを採用し、ローギアを積んたトランスミッションを組み合わせて。
先代のジムニーでは、アフリカ・マラウイの山岳を運転したし、英国ミッドランドの採石場も走り回った。わたしの1989年型SJ410なら、殆どのクルマが家から出発できないような大雪の日でも、平気な顔で真っ白な大地を駆け回れるだろう。
それがジムニーが長年愛され、カッコいい理由。他にはまねをすることができない、移動手段なのだ。あらゆる場所を目指せる、価格のヒエラルキーとは無縁のクルマ。裕福な西側諸国のひとでなくても、手が届くクルマ。それがジムニーのカッコよさなのだと思う。
2台のスペック
スズキ・ジムニー・シエラのスペック
■価格 1万7000ポンド(251万円・予想)
■全長×全幅×全高 3550×1645×1730mm
■最高速度 144km/h
■0-100km/h加速 12.0秒(予想)
■燃費 12.6km/ℓ
■CO2排出量 178g/km (WLTP)
■乾燥重量 1090kg
■パワートレイン 直列4気筒1,462cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 102ps/6000rpm
■最大トルク 13.1kg-m/4000rpm
■ギアボックス 5速マニュアル
トヨタ・ランドクルーザーのスペック
■価格 3万3955ポンド(502万円)
■全長×全幅×全高 4840×1885×1845mm
■最高速度 173km/h
■0-100km/h加速 12.1秒
■燃費 13.3km/ℓ
■CO2排出量 199g/km(NEDC)
■乾燥重量 2055kg
■パワートレイン 直列4気筒2755ccターボ
■使用燃料 経由
■最高出力 176ps/3400rpm
■最大トルク 42.7kg-m/1400-2600rpm
■ギアボックス 6速マニュアル
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