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EV時代は変速機が不要になるからトランスミッションメーカーが危ない……は間違い! EV時代に重要になる「精密な歯車」の技術

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EV時代は変速機が不要になるからトランスミッションメーカーが危ない……は間違い! EV時代に重要になる「精密な歯車」の技術

モーターは瞬時に最大トルクを発揮できる

電気自動車(EV)に、変速機(トランスミッション)は基本的に必要ない。その理由は、モーターのトルク特性にある。

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EVに限らず、家庭電化製品などで使われるのを含め、モーターには電気を入れた瞬間から最大トルクを出せる能力がある。ただし、電気の流れを少なくすれば、わずかなトルクを出すだけなので、その電流量を調整すれば、EVの場合、発進から加速へかけて滑らかな動き出しと速度の増加がかなう。

モーターのトルク特性は一般にいわれるフラットトルクで、回りだしたところから高いトルクを出し続けることができる。

ではエンジンは、なぜ変速機が必要なのか?

ガソリンでもディーゼルでも、内燃機関(エンジン)は、回転のし始めのトルクがきわめて小さい。その力だけでは、とてもクルマを動かすことができないのだ。

ちなみに、手動変速機(マニュアルトランスミッション)のクルマで、上の段のギヤで発進させようとすればエンスト(エンジン停止)してしまうだろう。それほどエンジンの回転しはじめの力は弱いのだ。それを補うため、変速機が不可欠になる。

小さな歯車と大きな歯車を組み合わせると、その歯車の直径の差だけ、エンジンの力を増大させることができる。つまり、エンジン車は、エンジンの力と歯車の直径の比率のふたつを足し合わせてはじめて発進できるのだ。

それだけでなく、じつはもうひとつ、力を増大させる機構がある。それがデファレンシャルに組み込まれた減速機だ。

エンジンの力を変速機で増大させたあと、駆動輪の手前にあるデファレンシャルでもう1回減速している。これを、諸元表などでは最終減速比と記している。

つまり、エンジン車は、変速機と、デファレンシャルに一体となった最終減速比の二段階の減速を経て、ようやく駆動輪をまわし、発進できる回転力を得ているのである。

減速機構はEVにも必要

この、最終減速比はEVでも必要だ。変速機は不要でも、デファレンシャルは各車輪にモーターをもつインホイールモーターなどでなければ必要になり、そこに最終減速比に相当する減速機構が装備されている。

直径の異なる歯車をいくつも使って変速することは不要でも、歯車の直径比を使った減速という技術は、EVでも使われているのだ。

ところで、変速機が不要なのはEVだけかというと、ハイブリッド車(HV)でもすでに変速機は使われていない事例がある。

世界初の量産市販HVであるトヨタ・プリウスにも、歯車を使う変速機は装備されていない。代わりに、動力分割機構として遊星歯車を使う機構にモーター/発電機をふたつ設置し、そのひとつを変速機代わりとしている。このため、変速機の扱いについては電気式無段変速機といういい方をする。

日産が採用するシリーズ式ハイブリッドのe-POWERも、いわゆる機械式の変速機はもたない。一方で、ホンダの初代インサイトなど、ひとつのモーターでハイブリッド化した車種では変速機を備えている。

そして、EVでも最高速が時速200kmを超えるような高性能車では、2段変速の歯車が用いられている。たとえば、ポルシェ・タイカンがそれだ。

以上のように、EVやハイブリッド車になると、変速機がまったく不要になるわけではないが、一般的なEVにとっては必要のない部品になる。

とはいえ、変速機を製造する企業がもつ歯車の技術は、減速機としてEVでも必要であり、なくなることはないだろう。

さらに、モーター駆動を主力としたEVやHVは、モーターを加速だけでなく回生を利用した減速にも利用し、加減速はエンジンを主動力としたHVやエンジン車に比べ、はるかに頻繁に行われる。つねに加速と減速という逆の回転力が、歯車を組み合わせた減速機に伝えられることになる。

一般に、歯車の組み合わせは組み付けの都合や耐久性確保などにより若干の隙間があり、それがゆえに、加速から減速、また減速から加速へ切り替わる際、バックラッシュと呼ばれる衝撃が出やすい。

しかし、より頻繁に、ほぼ常時といえるほど加減速を繰り返すEVやモーター駆動を主力とするHVでは、そのバックラッシュが振動や騒音のもとになって快適性を損なうことになる。そのことから、変速をより滑らかに行えるよう進化してきた変速機製造会社の精緻な歯車の組み付けという技量が、EVの時代においても重要な匠の技となるのではないか。

静粛性と滑らかさがより重要性を帯びるEVで、見逃すことのできない部品メーカーの力といえるだろう。

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みんなのコメント

20件
  • gri********
    そりゃそうだけど今まで散々多段化してきたのが思いっきりシンプルになるわけだから全体の仕事量は減らざるを得ないよね。クラッチ類もほぼ無くなるからその絡みのサプライヤーさんも大変。
    高精度の歯車が必要なのは確かだけど。エンジン音で誤魔化せないから。
  • ニーナ
    エンジンのエネルギー効率効率
    35%程度に対し、モーターは95%.。そしてエンジンはその35%を出せる回転数の領域は狭く変速機で調整しています。対するモーター0から高速回転まで95%と変わらないので、変速機が必要無い。高速でEVの電費が落ちるのは、空気抵抗か速度の2乗に比例するので、120kmを超えると悪化します。但しエンジンも同様で80km超えると燃費は悪くなり120km以上ではかなりの影響を受けます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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