現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > その走行距離125万km超! 1台のポルシェ 911ターボを愛し続けた男

ここから本文です

その走行距離125万km超! 1台のポルシェ 911ターボを愛し続けた男

掲載 更新 5
その走行距離125万km超! 1台のポルシェ 911ターボを愛し続けた男

Porsche 911 Turbo

ポルシェ 911ターボ

ポルシェ スポーツの真髄に迫る。GENROQ 4月号、発売中!

ビル・マッキーンカーンが恋に落ちた911ターボ

ビル・マッキーンカーン(Bill MacEachern)は、彼のポルシェ 911ターボと非常に長い“恋愛関係”にある。彼の911の走行距離は120万kmを超えており、これは月まで3往復できる距離だ。

100万kmオーバーというインパクトのある数字だけでは、マッキーンカーンを言い表すことはできない。彼は44年前に初めてターボチャージャーを搭載した911(Gモデル)を購入した。その後、楽しい時も傷心の時も、すべての年月を愛車と過ごし続けてきた。

「私自身はアメリカ製のマッスルカーで育ってきたんです」と、トロントに住むカナダ系スコットランド人のマッキーンカーンは語る。

「若い頃はオールズモビル4-4-2に乗っていました。ドライブインに行ったりドラッグレースを楽しむのにはピッタリでしたが、まるでミルク運搬車のようだったんですよ(笑)」とマッキーンカーンは笑顔で振り返った。

マッスルカーからドイツ製スポーツカーへ

彼は1970年に初めてポルシェ 911を試乗し、まさに衝撃的な経験をする。それは真っ赤な911 Tだった。

「とにかく機敏で、良くできていて、信じられないようなクルマでした。コンパクトなサイズと印象的なパフォーマンスにもかかわらず快適だったのです」

このテストドライブはマッキーンカーンの人生の分岐点になった。彼は自身が立ち上げ、ぐんぐん成長中だったカーペットクリーニング会社のカンパニーカーとしてシルバーの911を購入する。そして間も無く彼は次なる“啓示”を受けることになる。

「1972年、カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ(Can-Am)のレースで、917/10を初めて見ました。当時、ターボチャージャーは最新技術でした。まるでロケットのようでしたよ」

その数年後、ポルシェは911にターボチャージャーを搭載した「930ターボ」をカナダで販売する。マッキーンカーンはすぐに「手に入れねば!」と考えたが、当初ディーラーは彼に思いとどまらせようとした。ポルシェ初の市販ターボモデルは扱いにくく相当にパワフルだったのだ。ディーラーの担当者は、他の“マイルド”なモデルを勧めたという。

「君の人生ではない、私の人生だ」

そう、マッキーンカーンは恋に落ちてしまったのだ。

1973年 0km:オイルショック

1973年に世界的な石油危機、オイルショックが発生する。あらゆるガソリンスタンドに行列ができ、燃料を湯水のごとく消費するアメリカ車のオーナーたちは、コンパクトカーへの買い替えを検討していた。

だが、マッキーンカーンの決意は揺るがない。彼は1975年の秋、911ターボを注文する。ディープミッドナイトブルーのボディカラーにコークレザーのインテリア、スポーツドライバーズシート、そしてオプションのLSDが装着されていた。彼は今後、真の超高性能スポーツカーを購入できるチャンスは、もう来ないだろうと考えていたのだ。

1976年 23km:初ドライブの衝撃

彼の911ターボは1976年5月にドイツからカナダへと納車された。そのシリアル番号から、350番目に製造された個体であることが分かる。マッキーンカーンは空港のフェンス越しに初めて自分の愛車となるクルマを見たが、彼の心は沈んでいた。

「あの時は『間違った色が運ばれてきてしまった』と思いましたよ」。しかし注文に間違いはなかった。

「クルマはただ埃に覆われていたんです(笑)」

長い旅の証が洗い流されると彼はすぐにステアリングを握った。以来ずっと、今日も同じように。

1976年 4312km:結婚

マッキーンカーンは最愛の人、リーズと結婚した。

1976年 6245km:レースへの熱狂

「最初のロングドライブは、オンタリオ州とケベック州を横断しました。トロワリヴィエールで行われたトランザムレースを観戦しに行ったのです」と、マッキーンカーンは懐かしそうに振り返った。

このレースではポルシェが大活躍する。ジョージ・フォルマーがドライブするポルシェ 934が優勝し、同じマシンで参戦したアル・ホルバートが2位で続いた。マッキーンカーンはレースの虜になった。

このロングドライブの後も、彼は北米のサーキットへ幾度となく愛車の911ターボで巡った。フロリダ州セブリングとウェストパームビーチ、ジョージア州ロード・アトランタ、ニューイングランド州ライムロックパークとワトキンスグレンなど、数えきれないほどの旅を繰り返し数十万kmを刻み続ける。

マッキーンカーンは、カリフォルニアで行われた伝説的な「モントレー・ヒストリック・オートモビルレース(Monterey Historic Automobile Races)」にも5回参加しており、そのたびに911ターボで大陸横断ドライブを行なっている。

1978年 1万3800km:息子世代もまた・・・

ビル・マッキーンカーンの息子クレイグが、ファミリービジネスであるカーペットクリーニング会社に入社。現在、彼は会社のジュニアCEOを務めている。

同年、ビルの次男ブライアンは、カナダ人レーサーのルードヴィヒ・ ハイムラスがポルシェ 935で参戦するメキシコシティでのレースを観戦。ハイムラスが優勝したこのレースで、ブライアンもまたレースの魅力にとりつかれてしまう。この時、父の情熱が次の世代に引き継がれた。

1981年 8万8713km:家族に受け継がれしもの

「息子のブライアンは1981年に初レースを経験しています。彼は前だけを見ているんですよ(笑)」と、父であるビル・マッキーンカーンは誇らしげに明かす。最愛の911ターボは、彼が亡くなったあとも家族のもとにとどまり続けるはずだ。

2006年 64万1312km:時には即興での修理も必要

すべてがスムーズに進んだわけではなかった。ある時、モントレーへのロングドライブ時にオレゴンを南下していると、911ターボのファンプーリーが壊れてしまった。

「交換パーツをすぐに見つけることができなかったのです。でも、私は損傷箇所を溶接できる店を見つけることができました」

その数時間後、彼は予定通りにレースに参加している。

2009年 85万km:SUVとのアクシデント

33年の幸せなパートナーシップは、危機に耐えることができなければ続けられなかった。2009年、1台のSUVがセンターラインを越えてマッキーンカーンの911ターボに衝突。この衝撃でフェンダーがへこみ、足まわりにダメージを受けてしまう。

しかし幸運な偶然が解決策をもたらしてくれた。マッキーンカーンと赤ら顔のSUVドライバーがダメージを負ったビンテージカーを調べていると、フォルクスワーゲンのロゴが付いたトレーラーがクラクションを鳴らした。

「あれは誰ですか?」とマッキーンカーンが尋ねると、SUVのドライバーは「あぁ、あれは友達のエリックです。彼はこの街でフォルクスワーゲン・ショップをやっているんですよ」と、答えたのだ。

911ターボはすぐにエリックの店へと運ばれて、30時間にも及ぶ修理が施された。結果、当初の予定通りにマッキーンカーンはモントレーに到着することができた。

2012年 100万km:シャンパンでのお祝い

「このクルマは、ペンシルベニア州ハーシーで開催されたスワップミーティングに向かう途中で100万kmを超えました。そして、トロントに戻ってからシャンパンで乾杯しました」

2020年 125万3584km:これからも伸び続ける走行距離

911ターボの走行距離計は、現在約77万9000マイル(125万3584km)を示している。 そして、その数字は今後も増え続けるだろう。マッキーンカーンは現在も毎日ドライブを続けており、現代的なスーパースポーツに買い換えることも考えていない。

「911ターボはまさに最高の“マシン”です。ポルシェ初のターボモデルは、レーシングカーの世界と市販モデルの世界に新たなスタンダードを打ち立てました。そして、このクルマを今でも所有しドライブするのは、ここにしかないドキドキをもたらしてくれるからなのです」

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

新潟~青森直結 壮大な「日本海東北道」全通まであと少し!? 約320kmの「すごい高速」最後の未開通部どこまで工事進んだ?
新潟~青森直結 壮大な「日本海東北道」全通まであと少し!? 約320kmの「すごい高速」最後の未開通部どこまで工事進んだ?
くるまのニュース
F1ラスベガスGP予選速報|ラッセルPP獲得! ガスリーが驚きの3番手。角田裕毅も7番手と好結果
F1ラスベガスGP予選速報|ラッセルPP獲得! ガスリーが驚きの3番手。角田裕毅も7番手と好結果
motorsport.com 日本版
ヒョンデ、旗艦EVの『アイオニック5』を刷新。次世代800V電源システムで航続距離は703kmに延伸
ヒョンデ、旗艦EVの『アイオニック5』を刷新。次世代800V電源システムで航続距離は703kmに延伸
AUTOSPORT web
名神ICに直結! 「彦根お城トンネル」が12月開通 高速道路から市中心部へ一気にワープ
名神ICに直結! 「彦根お城トンネル」が12月開通 高速道路から市中心部へ一気にワープ
乗りものニュース
ホンダ斬新「オデッセイSUV!?」に大反響! 「V6ワゴン」から進化の“最上級クーペSUV”に「カッコイイ」「モダンな見た目」の声も! 13年ぶりの「アヴァンシア」がスゴイ!
ホンダ斬新「オデッセイSUV!?」に大反響! 「V6ワゴン」から進化の“最上級クーペSUV”に「カッコイイ」「モダンな見た目」の声も! 13年ぶりの「アヴァンシア」がスゴイ!
くるまのニュース
ロバート・クビサ、2025年も3台目のフェラーリ499Pをドライブへ。AFコルセ残留が決定
ロバート・クビサ、2025年も3台目のフェラーリ499Pをドライブへ。AFコルセ残留が決定
AUTOSPORT web
アルファ・ロメオ・トナーレでジュリエッタ乗りに出会う【新米編集長コラム#9】
アルファ・ロメオ・トナーレでジュリエッタ乗りに出会う【新米編集長コラム#9】
AUTOCAR JAPAN
ル・マン優勝のポルシェ「917K」がなんと550万円!? ホンダエンジンを搭載した子供向けジュニアカーの大きさは実車の7割…おもちゃにしては高すぎる!?
ル・マン優勝のポルシェ「917K」がなんと550万円!? ホンダエンジンを搭載した子供向けジュニアカーの大きさは実車の7割…おもちゃにしては高すぎる!?
Auto Messe Web
ライバルかつ僚友のトヨタWRC育成ふたりがラリージャパン初参戦。お互い「負けたくない」と意識
ライバルかつ僚友のトヨタWRC育成ふたりがラリージャパン初参戦。お互い「負けたくない」と意識
AUTOSPORT web
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
レスポンス
【特許画像リーク!】来年デビュー予定の新型「BMW iX3」のリーク画像を入手!コンセプトモデルのほぼそのまま量産される
【特許画像リーク!】来年デビュー予定の新型「BMW iX3」のリーク画像を入手!コンセプトモデルのほぼそのまま量産される
AutoBild Japan
【中国メーカー初受賞】BYDシール 「Euro Car Body 2024」車体構造デザイン部門で第3位
【中国メーカー初受賞】BYDシール 「Euro Car Body 2024」車体構造デザイン部門で第3位
AUTOCAR JAPAN
アルファロメオ『33ストラダーレ』新型、「ベスト・イン・クラシック2024」の最高賞を受賞
アルファロメオ『33ストラダーレ』新型、「ベスト・イン・クラシック2024」の最高賞を受賞
レスポンス
新車77万円! ホンダ革新的「コンパクトカー」に「安くて広くて最高!」の高評価! 全長3.7mで「フィット」より小さい“街乗り最強”モデルとは! デザイン&乗り心地も大満足
新車77万円! ホンダ革新的「コンパクトカー」に「安くて広くて最高!」の高評価! 全長3.7mで「フィット」より小さい“街乗り最強”モデルとは! デザイン&乗り心地も大満足
くるまのニュース
トヨタ新型「最小級SUV」登場か!? 「ヤリスクロス」より小さい“静音モデル”に「カッコいい!」と反響アリ! 「bZ1X」かもしれない新型車に期待大!
トヨタ新型「最小級SUV」登場か!? 「ヤリスクロス」より小さい“静音モデル”に「カッコいい!」と反響アリ! 「bZ1X」かもしれない新型車に期待大!
くるまのニュース
エバンスが0.7秒リードの接戦。トヨタ2台がパンク、ヌービルに“ノーパワー”トラブル/ラリージャパン デイ2午前
エバンスが0.7秒リードの接戦。トヨタ2台がパンク、ヌービルに“ノーパワー”トラブル/ラリージャパン デイ2午前
AUTOSPORT web
ええええぇついに最後か!? 鮮明なボディカラーに思わず見とれる!!!!!!!!! 爆速2Lターボのホットハッチ[AMG A45 S]の魅力度がマシマシ
ええええぇついに最後か!? 鮮明なボディカラーに思わず見とれる!!!!!!!!! 爆速2Lターボのホットハッチ[AMG A45 S]の魅力度がマシマシ
ベストカーWeb
なんちゃってセレブ、ヒョンデ新型「アイオニック5N」の「ファーストエディション」を激オススメ! 限定50台のうち22台が「マガリガワ クラブ」に集合!
なんちゃってセレブ、ヒョンデ新型「アイオニック5N」の「ファーストエディション」を激オススメ! 限定50台のうち22台が「マガリガワ クラブ」に集合!
Auto Messe Web

みんなのコメント

5件
  • 感動の一言。

    並の維持管理では到底成し遂げられない距離でしょう。ましてやクラシックカーなど。
    目が眩むほどの丁寧なメンテナンス、車を気遣うドライビング、綺麗な整備路を巡行する事で、、と言ってもまだ信じられないくらい。

    想像を絶する愛情と、それに応える911の頑強さが生み出した奇跡の数字だと思います。

    素晴らしい。
  • 911もこんなに長く愛し続けてくれるオーナーに乗ってもらって嬉しいでしょうね。
    私もEV時代になる前に一生物の愛車に出会って、ずっと愛し続けたいものです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村