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次期戦闘機に「烈風」、名づける意味あるのか? 突如よみがえった“80年前の戦闘機”の名

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次期戦闘機に「烈風」、名づける意味あるのか? 突如よみがえった“80年前の戦闘機”の名

軍事ファンが沸いた? 新戦闘機は「烈風」報道

 2025年4月27日付の共同通信は、防衛省が「GCAP」で開発される有人戦闘機に「烈風」というニックネームを付けることを検討していると報じました。GCAPは日本とイギリス、イタリアの3か国が、航空自衛隊のF-2戦闘機と、イギリス、イタリア両空軍のユーロファイターを後継する新有人戦闘機を協働開発するプロジェクトです。

【今はF-35の愛称】これが初代「ライトニング」戦闘機です(写真)

 烈風というニックネームは、第二次世界大戦末期に旧日本海軍が就役させた戦闘機にも使われており、共同通信の報道の通りに進めば、GCAPで開発される戦闘機は、二代目の「烈風」ということになります。

 プロジェクトに参加しているイギリスは、第二次世界大戦中に「ハリケーン」「タイフーン」「テンペスト」というニックネームの戦闘機を開発しています。また戦後に他のヨーロッパ諸国と共同開発した戦闘機にも「トーネード」「タイフーン」というニックネームを与えており、自国の空軍で運用する戦闘機に、強風や嵐に由来するニックネームを付けることを好んでいます。

 イギリスはGCAPへの参加を決定する前の2018年に、諸外国の協力を得て、同国主導で有人戦闘機を開発する計画を発表しており、同年に開催されたファンボロー・エアショーで、「テンペスト」というニックネームが与えられた新有人戦闘機のコンセプトを発表していました。

 そのイギリスがGCAPで開発された有人戦闘機にテンペストというニックネームを付けるのか否かは明らかにされていませんが、海外メディアにはGCAPで開発される戦闘機に、イギリスが「テンペスト」、イタリアが「テンペスタ」というニックネームを付けるのではないかという報道もなされています。

 テンペストには「激しい嵐」という意味がありますので、過去に日本が開発した戦闘機のニックネームで最も近い意味を持つのが「烈風」であることから、イギリス、イタリアと歩調を合わせる狙いから、防衛省が「烈風」というニックネームを検討しているのかもしれません。

「この名前でどう?」「絶対に嫌!」国際共通ニックネームの難しさ

 ただ、国際共同開発をする兵器のニックネームを共通化するのは、容易なことではないようです。

 ユーロファイターの開発が行われていた1980年代から90年代にかけて、開発に参加したイギリス、ドイツ、イタリア、スペインは自国が導入するユーロファイターに、共通の公式ニックネームを付けることを検討していました。

 これは真偽のほどは定かではないのですが、現在イギリス空軍がユーロファイターの公式ニックネームとして採用している「タイフーン」は、第二次世界大戦時にドイツ軍やイタリア軍に大きな損害を与えたホーカー「タイフーン」戦闘機を連想してしまうおそれがありました。

 そこでイギリスが独伊両国に配慮して、低気圧を意味する「サイクロン(Cyclon)はどう?」と提案。

 すると、ナチス時代のドイツがホロコースト(大量虐殺)に使用した毒ガス「ツィクロンb(Cyclon b)と関連付けられるおそれがあるとして「絶対に嫌だ」とドイツが強攻に反対。結局、ユーロファイターに4か国共通のニックネームを付ける構想は沙汰やみになったという、笑うに笑えない話があります。

 航空自衛隊も、1955(昭和30)年から1980(昭和55)年まで運用していたF-86F「セイバー」戦闘機に「旭光」、1958(昭和33)年から1968(昭和43)年まで運用していたF-86D「セイバードッグ」戦闘機に「月光」、1963(昭和43)年から1986(昭和61)年まで運用したF-104J/DJ「スターファイター」戦闘機に「栄光」という、日本独自の漢字ニックネームを付けました。

 しかしお世辞にも定着したとは言いがたく、その後に導入されたF-1、F-2、F-15J/DJ、F-35A戦闘機には漢字のニックネームは付けられていません。

ゲン担ぎよりも必要なこと

 前に述べたホーカー「タイフーン」や、F-35のニックネーム「ライトニングII」のように、実戦で有用性を証明して見せた戦闘機のニックネームを継承することは、縁起をかつぐ上で理解できるところです。

 しかし、「烈風」はエンジンの不具合などで開発が遅れた結果、8機(10機説もあり)が生産されただけで、実戦に投入されることなく終わっています。縁起をかつぐという意味においては、GCAPで開発される新戦闘機がニックネームを継承するほどの戦闘機ではないと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 新戦闘機のニックネームを共通化することで、イギリス、イタリアの両国と一体感を醸しだそうとする気持ちはわからないでもないのですが、定着しない可能性が高い漢字ニックネームを考えるより、公開できる情報をできるだけ公開して、おそらく「F-3」と呼ばれるであろう新戦闘機に対して、国民から信頼感や親しみを持ってもらう方法を考えていくべきではないでしょうか。

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みんなのコメント

217件
  • tak********
    烈風いいんじゃないですか。
    昔から隼とか疾風とかあったんだから。
  • ken********
    烈風に戦闘機としての実績が無い、という趣意なら、疾風で良いじゃんと思う。
    疾風なら、大東亜決戦機とされた、四式戦という偉大な初代が存在するし、意味も似たようなもの
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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