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15年間SFを支えたTRD永井氏が勇退会見「日本のモータースポーツは今こそ正面から立ち向かう時」最後にサプライズも

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15年間SFを支えたTRD永井氏が勇退会見「日本のモータースポーツは今こそ正面から立ち向かう時」最後にサプライズも

 これまで15年に渡ってスーパーフォーミュラを支えてきたTRDの名称でお馴染みの、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントテクノクラフト本部で執行役員を務める永井洋治氏が6月で定年を迎え、今回のSUGO戦で一旦、レース現場から勇退することになった。JRP(日本レースプロモーション)が行う第4戦SUGOのサタデーミーティングではその永井氏がこれまでの思い出と、今後の日本のモータースポーツについて私見を述べた。

 永井氏はTRDでエンジンやマシン開発に携わり、スーパーフォーミュラではSF09、SF14、そしてSF19のシャシー、そしてNRE(ニッポン・レーシング・エンジン)の導入について中心的な役割を果たしてきた。

EV化が進むなかTRD永井氏が持論を展開。スーパーフォーミュラとレシプロエンジンの未来

「トップフォーミュラに関わって15年、このような場を作って頂きましてありがとうございます。自分は39年の会社生活のなかで30年以上、モータースポーツに関わってきました。そしてスーパーフォーミュラにはちょうど15年、携わってきました。スーパーフォーミュラは乗っても楽しい、見ても楽しい、ドライバーはイコールコンディションで誰にでも勝てるチャンスがある、世界に誇れる日本のこのようなフォーミュラレースに携わることがでいて、本当に嬉しいです。本当にこれまでありがとうございました」と、関係者に感謝を述べる永井氏。

 一番の思い出は、SF14のシャシー導入時の苦労だという。

「SF14というのは自分の中でも大きな思い出になっています。その前のSF09の時に忘れられなかったのが、ある若いドライバーが『SF09はあまり積極的に乗りたいと思わない』と発言しているのを聞いて、自分は愕然としました。SF09に自分が携わってきたなかで、自分たちは何を間違ったのだろうと。その根本はやはりドライバーがレースでバトルができない、乗っていて楽しいかと聞くと『そういう感じがしない』と言われました。その時に、頭をガーンと殴られたような感じがしました。そこから、本来あるべきフォーミュラとはどのようなものなのか、関係者とみんなでとことん話し合って進めてきたのが、SF14でした。そして、そのSF14のデビュー戦ですごくバトルも多くて、ドライバーも生き生きして乗れていたので、そのSF14が自分のなかの一番の思い出となっています」

 2014年から現在も使用されている、直列4気筒の2リッター直噴ターボエンジンのNREエンジンの導入の道筋を作ったひとりが永井氏だった。

「2011年に震災があったときに、レースなんかをしていていいのかという気持ちが正直あって、ちょうど次世代のエンジンについての話をしていた段階で、ホンダの坂井(典次/当時のホンダSFプロジェクトリーダー)さんを始めいろいろな方と話をして、我々は何で社会の役に立てるのかと。その中でまずは環境だよねと。そこでNREは我々の技術で環境の役に立ちたい。本当に役に立つというのはどのようなことなのか。これもとことん話し合ってできたのがNREでした」

 15年にわたってトップフォーミュラを支えてきたTRDの永井氏。今後のスーパーフォーミュラ、そして国内モータースポーツにどのような期待をしているのか。

「あくまで私見ということですが、現在、ヨーロッパが量産車を含めて急速にEVに流れて行っていて、自分としてはカーボンニュートラルの答えはひとつではないと思っています。EVがあって、FCVがあり、ハイブリッドがあり、いろいろな手段でとにかくCO2を削減する。その目的の達成手段としては自分はひとつでは達成できないと思っています」

「じゃあ、それをどう成り立たせるのかというところで、やはり今、トヨタ自動車は水素に目を向けていますけど、e-fuelというのは大きなポイントになるのかなと思っています。そのe-fuelをモータースポーツがやはり先陣を切ってやっていくというのは、水素でやってくれましたけど、やはりモータースポーツに導入すると開発のスピードが速いんですよね。うまくモータースポーツがそのような場になっていけば、我々のカーボンニュートラルに対する貢献もできる。もうひとつ、レースで大事な軽量化という大きな目的も、本当に量産に役に立つ技術を我々がこのサーキットで技術開発をしながら争うというのが、カーボンニュートラルを加速させるのではないかと思っています」

「モータースポーツは厳しい状況ですけど、逆に今は正面から立ち向かう時じゃないかなと思っています。ややもすると、『モータースポーツは悪だ』と縮こまってしまいますが、そうではない。モータースポーツがカーボンニュートラルにどのように貢献するのか、本当にどうやってCO2を減らしていくのかというのを、我々が正面から解を探っていくのがここ数年の大事な時期なんじゃないかなと自分は思っています」

 モータースポーツの今後にアツイ想いを語った後、最後にはサプライズで長年、ライバルとして戦ってきたホンダの国内モータースポーツのプロジェクトリーダー、佐伯昌浩氏がサプライズで登場。永井氏も「なにか予感はしていたんだよ!」と大きな声で驚いた。

 その佐伯氏が、永井氏に言葉とプレゼントを贈った。

「永井さんとはおそらくCART時代、90年代後半からライバルメーカーの技術者として戦ってきました。私がフォーミュラでホンダの前に立つ立場となって、永井さんは一番嫌な相手だなと思っていました(苦笑)。ですけど、一緒にやっていく中でこのカテゴリーはやはりスポーツだと。とにかく速いドライバー、速いチームが勝てるカテゴリーにしていかないといけないんだと。そういった考え方は同じで、そこに向かって永井さんはすごくご尽力されました。今月いっぱいでご卒業ということで、来月からはホンダのことも少しは好きになってもらいたいということで(笑)、(ホンダの4輪開発研究所がある)栃木県さくら市の名酒とホンダのマスクを贈呈させて頂きます。永井さん、長い間お疲れさまでした」

 永井氏は今後の予定は決まっていないというが、国内モータースポーツへ貢献するような役割での復帰を示唆していたことから、また別の立場で日本のモータースポーツを支えることになるのかもしれない。


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  • ヤリスにしろ、カローラにしろ、婆さんを病院に迎えに行く事とか、雨で小学生の娘を迎えに行く事を軽んじてる。潰れてよいよ、国民を幸せにする事を忘れた会社は。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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