■スタイリッシュな5ドアハッチバックセダンを振り返る
4ドアセダンをベースにした5ドアハッチバック車は、かつて日本では売れないというジンクスがありました。今ではそんなジンクスは過去のものとなっていますが、実際に1990年代まではヒットに恵まれたケースはほとんどありません。
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5ドアハッチバックセダンはステーションワゴン並みの使い勝手の良さと、セダンと変わらないドライブフィーリングを併せ持ち、欧州では古くから人気のボディタイプとして展開されてきました。
日本車でも欧州で販売されたセダンに5ドアハッチバックをラインナップするのが一般的で、国内市場でも販売したものの、その多くは不遇な運面をたどることになったのです。
しかし、振り返ってみると、かつての5ドアハッチバックセダンはスタイリッシュなモデルも多く散見されます。
そこで、ヒットに恵まれなかったもののイケてる5ドアハッチバックセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「コンチェルト 5ドアセダン」
ホンダは1980年代に、イギリスのローバーグループと業務提携の契約を結び、日本と欧州で販売する両メーカーのモデルの共同開発をおこなっていました。
そうした背景から1988年に誕生したモデルが、ホンダ「コンチェルト」です。
コンチェルトは4代目「シビック」をベースに開発され、ボディタイプは4ドアセダンと5ドアハッチバックをラインナップ。コンセプトは「ミニレジェンド」というべき、小さな高級車です。
外観はシビックよりもエッジの効いたプレスラインによる直線基調のフォルムで、4ドア/5ドアとも6ライトウインドウを採用したヨーロピアンスタイルのボディに、高品位な塗装が施されました。また、フロントフェイスはまさに初代レジェンドをイメージさせるデザインを取り入れていました。
内装では本革シートが選べ、上位グレードにはクラス初のパワーシートを装備し、フルオートエアコンも設定されるなどクラスを超えた豪華な装いです。
さらに、高剛性化したシャシと外装のフラッシュサーフェス化により、走行時におけるロードノイズや風切り音を抑制して、走行フィーリングの向上が図られました。
コンチェルトは欧州テイストの内外装とホンダの技術力が融合し、プレミアムコンパクトカーの先駆け的存在でした。
しかし、販売的には成功したとはいえず、1992年に生産を終了して実質的な後継車である「ドマーニ」にバトンタッチ。同時にローバーグループとの提携も解消されました。
●三菱「エテルナ」
かつて三菱のラインナップで、ミドルクラスセダンの中核を担っていたのが「ギャラン」です。
初代は1969年に誕生し、シリーズを通じてコンセプトを大きく転換したのが1987年に登場した6代目で、世界ラリー選手権(WRC)に参戦する目的から高性能な4WDモデル「ギャラン VR-4」が登場。実際にWRCを始めとするモータースポーツで活躍して、ギャランのイメージが大きく変わりました。
そして、この6代目ギャランの派生車として1988年にデビューしたのが、4代目「エテルナ」です。
エテルナはギャランの販売チャネル違いの姉妹車で、1979年に「ギャランΣエテルナ(後にΣエテルナ)」の車名で誕生し、ボディはギャランΣと同一でした。
一方、4代目エテルナのボディは、4ドアセダンのギャランをベースに5ドアハッチバックのヨーロピアンなフォルムへと変貌。
フロントまわりとキャビンはギャランに準じたデザインとなっていますが、後部がハッチバックに作り替えられ、伸びやかなクーペスタイルとなっています。
また、リアハッチに変更されたのに伴い、テールランプまわりも専用のデザインが採用されました。
トップグレードはギャラン VR-4と同じパワートレインを搭載した「エテルナ ZR-4」で、最高出力205馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHCターボのフルタイム4WD車です。
高性能でスタイリッシュなエテルナでしたが、やはりジンクスを覆すことはできず、販売的には成功しませんでした。そのため、1989年には4ドアセダンでギャランから若干のデザイン変更したモデル「エテルナSAVA」を発売。
その後、1992年に5代目にモデルチェンジすると、エテルナは4ドアセダンのみで展開されました。
●日産「プリメーラ 2.0eGT」
日産は1990年に、欧州市場をメインターゲットとしたFFセダン、初代「プリメーラ」を発売しました。
新開発のマルチリンクサスペンションを採用したフロントサスペンションによる優れたハンドリングと、広い室内に大容量のトランクなどセダンとしての基本性能の高さ、そして飽きのこないベーシックなフォルムが評価され、日欧でヒットを記録。
そして、発売当初から欧州向けにはイギリス工場で生産された5ドアハッチバックをラインナップし、1991年には日本でも「プリメーラ 2.0eGT」として輸入・発売されました。
外観はセダンのイメージを残しつつも、リアハッチを寝かしたスタイリッシュなクーペフォルムを採用。内装は4ドアセダンに準じた意匠です。
エンジンはセダンと同様の最高出力150馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHC「SR20DE型」を搭載し、トランスミッションは4速ATのみとされました。
2.0eGTはセダン譲りの優れたハンドリングと高い動力性能に、ステーションワゴン並の使い勝手の良さを併せ持つ優等生といえるモデルでしたが、日本ではセダンの人気が圧倒的に高い状況でした。
1995年に登場した2代目にも「プリメーラUK」として5ドアハッチバックがラインナップされましたが、同時にステーションワゴンもラインナップされており、ワゴンほど人気とならずにわずか1年ほどで販売を終了。
3代目は欧州で5ドアハッチバックが販売されましたが、国内市場ではセダンとワゴンを展開し、5ドアハッチバックは設定されませんでした。
※ ※ ※
2003年に登場したトヨタ2代目「プリウス」によって、5ドアハッチバックセダンが売れないというジンクスが覆されました。
また、現行モデルのホンダ「シビック」は国内で5ドアハッチバックのみが展開され、欧州車でも5ドアハッチバックが数多くラインナップされているなど、もはや売れない要素は見当たりません。
むしろ、4ドアセダンのデザインが5ドアハッチバックのようなクーペフォルムを積極的に採用するなど、日本でも完全に市民権が得られたといえるでしょう。
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