EVシフトの地殻変動と日系各社の選択
マツダは今夏、中国で生産する新型電気自動車(EV)「CX-6e」を欧州市場へ投入する。中国工場で生産したEVを世界へ輸出する動きは、すでにテスラや欧州メーカーが進めてきたが、日本メーカーでも同様の取り組みが本格化し始めた。
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背景には、中国が世界最大級のEV生産拠点へ成長し、電池や部品の供給網、開発機能まで集まることで、生産拠点の選択が競争力を左右するようになったことがある。中国市場で価格競争が激しくなるなか、中国は巨大な販売市場であるだけでなく、
「世界向けの輸出基地」
としての役割を強めている。これまで日本メーカーは、中国を主に現地販売向けの生産拠点として位置付けてきた。一方で、マツダの欧州向け輸出や、日産・ホンダによる中国生産車の海外展開は、中国拠点の役割が変わり始めていることを示す動きでもある。
本稿では、マツダの新型EV投入を起点に、中国が世界のEV生産基地へ変化した背景を整理するとともに、自動車メーカーがどこで売るかだけでなく、
「どこで作ることが最も競争力につながるのか」
という視点から、生産戦略を見直し始めている現状を考える。
世界のEV生産基地へと変貌する中国
中国の役割は、巨大な消費地だけでなく、世界向けEVの生産拠点へと変化している。世界のEV生産量の約7割を占める中国では、国内での競争が年々激しくなっている。
背景には、安価なリン酸鉄系リチウムイオン電池(LFP)の普及による大幅なコスト低下や、豊富な人材を活用した素早い開発、工場のDX化、手厚い政府支援など、中国現地メーカーが幅広い分野で高めてきた競争力がある。電池や部品メーカーの集積は、生産コストの低減や開発期間の短縮を支え、比亜迪(BYD)に代表される垂直統合型の事業モデルを成り立たせる基盤となった。
その結果、生産量は大きく伸びた一方で、過剰な生産能力とも表裏一体の関係にある。中国国内では近年、
・構造的な生産過剰
・激しい価格競争
が生じている。例えば、米テスラの上海工場では、中国国内での販売が前年同月比9.7%減と低迷する一方、海外輸出は同80%増と大きく伸びている。国内で余ったEVが海外へ流れ、輸出拡大につながっている。
ただし、今回のマツダによる新型EVの投入は、中国国内で余ったEVを海外へ出す動きとは異なる。つまり、中国が世界のEV生産基地として果たす役割は、新たな段階に入りつつあるといえる。
中国で生産し世界へ売るマツダの戦略
マツダが欧州市場などへ投入する新型EV「CX-6e」は、重慶長安汽車との協業によるEVラインアップの第2弾である。第1弾となる「MAZDA6e」は、2026年「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、2025年9月に欧州市場へ投入されて以降、累計7000台以上を販売している。
「CX-6e」は、マツダの中国生産EVとして報じられているが、外観や内装はマツダの欧州デザインセンターが手がけたものだ。これにより、マツダの個性である「魂動デザイン」を受け継ぎながら、ほかのアジア自動車ブランドとは異なる印象を打ち出している。
もちろん、中国でのEV開発や生産は以前から進められてきた。例えばテスラは、2019年から上海ギガファクトリーで生産したEVを欧州や豪州などへ輸出している。2026年4月の実績では、卸売り台数約8万台のうち5.3万台が輸出されており、中国工場は海外向けの生産拠点としての役割を強めている。
日本の自動車メーカーでは、日産が2026年4月の北京モーターショーで、現地主導で開発・生産したセダンEV「N7」やSUV「NX8」などの新エネルギー車を発表した。これらの車両は、輸出台数を年間10万台から段階的に増やし、将来的には30万台まで広げる計画である(東南アジアや中南米に加え、日本への輸入も検討対象)。
ホンダは、中国の合弁会社で生産・開発したe:NシリーズをもとにしたEVを、かつてのブランド名である「インサイト」として2026年春にも日本市場へ投入する。航続距離約500kmの普通車EVを増やすとともに、中国拠点の稼働率向上も目指す考えだ。日本車メーカーが中国生産EVを国内へ輸入するのは初の試みとなる。
マツダの「中国で作って世界へ売る」という方針は、特別な動きではない。世界の自動車メーカーが進める生産戦略のひとつとして位置付けられる。
どこで売るかから作るかへの視点転換
EV時代では、生産拠点の選び方そのものが競争力を左右するようになりつつある。
エンジン車の時代は、国内で生産して海外へ輸出する形が基本だったが、貿易摩擦を背景に現地生産が広がった。現地生産の拡大に伴い、部品調達の仕組みづくりも進んだが、コロナ禍や地政学的なリスクの高まりによって状況は変化した。そうしたなか、世界的にEVへの移行が進み、開発や生産の体制も大きく変わり始めている。
EVでは、電池やモーターなどの部品をどこから調達するかに加え、技術の進歩が速いことから、開発の速さや市場投入までの期間など、幅広い力が求められる。現時点で
「どこで作るのが最適か」
という問いに対しては、中国が適した地域のひとつといえる。
マツダは2027年から山口県にある防府工場でEVを生産する計画だ。それに向けた電動化の基盤づくりとして、リチウムイオン電池のモジュール・パック工場を岩国市に建設するなど、国内の生産体制を整えている段階にある。パナソニックエナジーからセルを調達し、最大年間10GWhの生産能力を持つマツダ岩国工場は、2025年11月に着工しており、2027年度中の稼働を目指している。
EVの開発や市場投入の速さを考えると、重慶長安汽車との協業によって、先行してマツダブランドのEVを世界へ展開する意義は大きい。今後、自動車メーカーはEVをどこで売るかだけでなく、どこで作るかという視点から、世界各地の生産拠点を見直していくことになるだろう。
今後さらに加速する生産拠点の最適配置
今回のマツダの取り組みは、今後のEV生産戦略を考える上で、ひとつの方向性を示している。中国は、技術開発の速さや生産体制の面で優位性を持つ一方、関税や地政学的なリスクなど不確実な要素も残っている。
中国国内における構造的な生産過剰と激しい価格競争は、安価なEVの海外流出につながり、
「市場をゆがめている」
と欧米を中心に批判されてきた。その結果、欧州連合(EU)やカナダ、米国、インド、トルコでは、中国から輸入するEVへの関税率が引き上げられている。
また、地政学的なリスクを抑えるため、技術開発だけでなく、資源の調達先を分散させる動きも進んでいる。今後、製造環境や競争のあり方が大きく変わる可能性がある。
中国は今後も世界のEV生産拠点として重要な役割を担い続ける一方、各国の通商政策や地政学的なリスクを踏まえ、生産拠点の配置を見直す動きはさらに広がるとみられる。
これからは、中国に集中するか国内生産へ戻すかという二つの選択肢ではなく、マツダがデザインを欧州、開発・生産を中国と組み合わせたように、市場や製品に応じて適した生産拠点を組み合わせる考え方が重要になる。自動車メーカーの競争は、世界規模で生産網をどのように整えるかという新たな段階に入っている。(阿伏兎崎ひびき(自動車ジャーナリスト))
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みんなのコメント
日本もいずれそうなるかも
ドアの中からカタカタ音がすると言われてバラすとドアの中から空き缶が出てきたり、内張りをはがすとガムが付いてたり、とにかく日本製では考えられない事が当たり前だったそうです。
やっぱり何処で生産されたかは気になります。